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第55話
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「ええ。だから私たち『至高なる魔女の会』は、世界中のすべての人間を、魔法使いに『改造』します。私たちは、過去によく見られた、差別待遇や虐殺をおこなうような野蛮な優生思想団体とは全く違う。誰一人として、置いてけぼりにはしません。皆を魔法使いにし、皆で幸せになるのです」
「はぁ?」
いきなりぶっ飛んだ話になったので、私は思わず呆けた声を上げてしまった。
世界中のすべての人間を、魔法使いに『改造』するですって?
それは、言うまでもなく狂気の沙汰だ。
普通の人を魔法使いにする手術には大変な危険が伴う。そりゃ、中にはリスクを冒してでも魔法使いになりたがる者もいるでしょうけど、基本的には、そんなことを望まない人間の方が多いだろう。魔法は便利だが、魔法なんて使えなくても、幸せで充実した人生を送っている人は、いっぱいいるんだから。
私は、今思った通りのことを、要約して言う。
「あなたの言う通りに、世界中のすべての人間が『魔法使いになる手術』を受けることに同意してくれるとは、私にはとても思えないんだけど」
リリエンヌは、限りなく優しい笑みを浮かべ、滔々と言葉を紡いでいく。
「別に、同意は必要ありません。今はまだ『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』に興味を持った人間だけを対象にして手術をおこなっていますが、私たちの組織がより大きくなり、世界的な影響力を発揮できるようになった暁には、全世界の人間に『魔法使いになる手術』を受ける義務を課します」
「なんとまあ、強権的ね。……『魔法使いになる手術』には、大変な危険が伴うわ。全世界の人にそんな手術をしたら、少なくない数の人が、死ぬか、重大な障害を負うことになってしまう。それについては、どう考えてるわけ?」
「非常に痛ましいことだとは思いますが、仕方ありません。進歩には犠牲がつきものですから。ですが、犠牲者の存在は無駄ではありません。犠牲になった人々を想うことで、私たちの一体感はより高まるのです」
「どうしても手術を受けたくない人たちの、自由意思を尊重する気はないの?」
「ありません。なぜなら、手術を受け、魔法使いになることでしか、人は本当の意味では幸せになれないからです。しかし、世の中の大多数の人は、それがわかっていない。だから、強引にでも、彼らを正しい道に導いてあげる必要があるんです。彼らも魔法使いになれば、私たちの思想と行動の意味が、理解できることでしょう」
「ふうん。でも、そんなの、ハッキリ言って、余計なお世話なんじゃないの?」
「その『余計なお世話』こそが、幸せな世界を作るためには大切なんですよ。ラディアさん、この町には、信じられないくらい沢山の人間が暮らしていますが、皆、自分の生活こそがすべてで、あまりにも他者に無関心です。その無関心が、孤独と不幸を生み出すのです。だから、余計なお世話を焼くというのは、素晴らしいことなのです」
駄目だこりゃ。
ああ言えばこう言う。
この子、たぶん、あらゆる種類の質問や反論に対して、キッチリ理論武装してるわね。さすがは『至高なる魔女の会』のナンバー2といったところかしら。ペラペラペラペラと、まあ、弁がお立ちになりますこと。この様子では、こちらが何を言ったところで、自分たちの異常性を認めることはないだろう。
「はぁ?」
いきなりぶっ飛んだ話になったので、私は思わず呆けた声を上げてしまった。
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「別に、同意は必要ありません。今はまだ『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』に興味を持った人間だけを対象にして手術をおこなっていますが、私たちの組織がより大きくなり、世界的な影響力を発揮できるようになった暁には、全世界の人間に『魔法使いになる手術』を受ける義務を課します」
「なんとまあ、強権的ね。……『魔法使いになる手術』には、大変な危険が伴うわ。全世界の人にそんな手術をしたら、少なくない数の人が、死ぬか、重大な障害を負うことになってしまう。それについては、どう考えてるわけ?」
「非常に痛ましいことだとは思いますが、仕方ありません。進歩には犠牲がつきものですから。ですが、犠牲者の存在は無駄ではありません。犠牲になった人々を想うことで、私たちの一体感はより高まるのです」
「どうしても手術を受けたくない人たちの、自由意思を尊重する気はないの?」
「ありません。なぜなら、手術を受け、魔法使いになることでしか、人は本当の意味では幸せになれないからです。しかし、世の中の大多数の人は、それがわかっていない。だから、強引にでも、彼らを正しい道に導いてあげる必要があるんです。彼らも魔法使いになれば、私たちの思想と行動の意味が、理解できることでしょう」
「ふうん。でも、そんなの、ハッキリ言って、余計なお世話なんじゃないの?」
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駄目だこりゃ。
ああ言えばこう言う。
この子、たぶん、あらゆる種類の質問や反論に対して、キッチリ理論武装してるわね。さすがは『至高なる魔女の会』のナンバー2といったところかしら。ペラペラペラペラと、まあ、弁がお立ちになりますこと。この様子では、こちらが何を言ったところで、自分たちの異常性を認めることはないだろう。
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