上 下
48 / 144

第48話(デルロック視点)

しおりを挟む
「さっき、『平和を保とうとする土地神と、破滅を望む土着の悪魔は、常に対立している』って言ったよな? 対立って聞くと、互いに憎み合ってるみたいに感じるだろうけど、俺たち、別にそんなんじゃないんだよ。俺、土地神のオッサンのこと好きだし、オッサンも俺のこと、たぶん、好きだと思う、えへへ」

 悪魔は、自分の発言に照れたように頭をかき、それから、『余計なことを言ってしまった』という感じで咳払いすると、話を元に戻す。

「つまりな、『土地神』と『土着の悪魔』は、一定の『ルール』に基づいて、ゲームをしているのさ。土地の平和を保ち続ければ『土地神』の勝ち。反対に、土地に破壊と混乱をもたらせば、『土着の悪魔』の勝ちって感じでね」

「ゲ、ゲームだと? ふざけるな! 貴様ら悪魔はともかく、この土地を守護する立場である神が、そんな、人間の命を弄ぶようなことをしているというのか!? それではまるで邪神ではないか!」

「別に、命を弄んだりなんてしてねぇよ。土地神のオッサンは、けっこう必死こいて、毎度毎度、どっかから聖女を連れてきてるしな。それって、かなり大変なことなんだぜ。お前ら人間のことを大事に思ってなきゃ、あんなことしねぇよ。てめぇ、ふざけたこと抜かしてるとぶっ殺すぞ」

 土地神を邪神呼ばわりされたことでムッとしたのか、悪魔は整った眉間にしわを寄せ、私を威嚇した。こいつが土地神に好意を持っていると言うのは、どうやら本当らしい。

 こ、こんな馬鹿なことがあるのか……? 神と悪魔が、土地を遊戯盤のように扱い、ルールを守ってゲームをしているなんて。この土地が遊戯盤なら、その上で右往左往する私たちは、まるでゲームの駒ではないか……

 愕然とする私のことなど気にも留めずに、悪魔は語り続ける。先ほどから思っていたが、こいつ、かなりのおしゃべり好きのようだ。

「このゲームにはな、細かい『ルール』が色々あるんだ。中でも、お前ら王族に関しては、様々なポイントが設定されている。……お前ら、一年に一度、この地下納骨堂で『鎮魂の儀式』をやってるだろ? あれがけっこう高ポイントでな。『鎮魂の儀式』が安定して継続すれば、土地神に100ポイント。何かの理由で実施できなければ、俺に100ポイント入る」

 私はもう、悪魔の話を適当に聞いていた。

 神と悪魔の遊戯盤の上で、自分のことを『選ばれしもの』だといきり立ち、弟から王位を奪うために必死に奔走していたことが、酷く虚しく、馬鹿馬鹿しいことに思えて、仕方がなかった。

「お前の親父、アホで不真面目だったけど、『鎮魂の儀式』だけは、絶対にやめなかった。口ではあれこれ言っていたが、一応は、国の礎になった祖先に対する敬意があったんだよ、あいつ。おかげで、ここ数十年は、土地神にポイントを取られっぱなしで、俺はひじょ~に悔しい思いをしていた」
しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?

宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。 それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。 そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。 アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。 その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。 ※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

処理中です...