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第46話(デルロック視点)
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ああ……そう言えば、ずっと昔。
弟のマールセンが、そんなことを言っていたような気がするな。
「そして、大地にいるのは、ありがたい『土地神』だけじゃない。この世のコトワリは、すべて表裏一体。光があれば、闇もあるのが道理。平和を司る『土地神』とは正反対の、『土着の悪魔』ってやつも存在していてな。平和を保とうとする『土地神』と、破滅を望む『土着の悪魔』は、常に対立しているんだよ」
私が女神だと思っていた女は、大きく口を開け、ニタリと笑った。
美しい唇の、その下で、長く鋭い牙が禍々しく光る。
それはまさしく、悪魔の微笑みだった。
私は青ざめ、震える唇で、なんとか言葉を紡いでいく。
「も、もしかして……あなた……いや、お前が……その『土着の悪魔』なのか……?」
「この間抜けが。やっと理解したか。もっとも、お前が間抜けなおかげで、この国を破滅させることができて、俺は満足だ。くくく、何か褒美をやろうか? 口づけくらいならしてやってもいいぞ。おっと、舌を入れるのはナシだからな」
私は悪魔の戯言には耳を貸さず、問いかける。
「教えてくれ、あの紫の霧はいったい何なのだ? お前が発生させているのか?」
「違うよ。残念だが『土着の悪魔』には、それほどの力はない。……お前、さっき言ってたよな? 『この辺りは、そもそも大した土地ではない』って。その通りさ。この辺りは、呪いの毒霧が発生しやすい環境でな、元々は人が住めるような土地じゃないんだ。それが、『土地神』の加護で、ギリギリ人が住める状態になってたんだよ」
「では、紫の霧は、元々あったものだと言うのか?」
「ああ。昔はもっとひどかったぜ。もう百年以上、毒霧は出ていないから、お前らは知らねーだろうけどな」
「わからん……百年も出ていなかったものが、何故今になって、一斉に出現したのだ? 大地の平和を司る『土地神』とやらは、いったい何をやっているのだ?」
「おいおいおいおいおいおいおいおい! お前がそれを言うのかよ! 何故も何も、全部、お前のせいなんだよ。バーカ」
「な、なんだと……?」
「今さっき言ったばかりだが、『土着の悪魔』には、大した力がない。俺たちは『土地神』よりも、ずっとか弱い存在なんだ。できることは、そう多くない。善悪の判断を迷う人間の心に、『悪いことをしろ』と囁きかけるか、時々夢に出て、適当なことをくっちゃべるくらいだ。なので、人間たちが皆、正しい心の持ち主なら、何の影響も与えられない」
「…………」
「だからな、お前のように、社会的に高い地位にありながら、矮小で、俗な心根の人間が出てきたときは、最大のチャンスなんだ。そういう俗物は、悪魔のささやきに簡単に耳を貸し、くだらない夢を、神託だなんだと言って、勝手に真に受ける。そして、自らの地位を利用して、とんでもない悪行を平然とやっちまうんだから、笑いが止まらねーぜ」
「とんでもない悪行だと? 私は、悪行などしていない! 確かに、夢に現れたお前の言葉にたぶらかされはしたが、私は、邪悪な魔女を追放しただけだ!」
「くく……『邪悪な魔女』ねぇ……彼女は本当に、邪悪な存在だったのかねぇ……? 一人で森に籠って、静かに暮らしてただけだろ? それが、馬鹿な王様に魔女認定されて、その馬鹿息子に軍隊をけしかけられ、国を追放されるなんて、かわいそうにねぇ……」
弟のマールセンが、そんなことを言っていたような気がするな。
「そして、大地にいるのは、ありがたい『土地神』だけじゃない。この世のコトワリは、すべて表裏一体。光があれば、闇もあるのが道理。平和を司る『土地神』とは正反対の、『土着の悪魔』ってやつも存在していてな。平和を保とうとする『土地神』と、破滅を望む『土着の悪魔』は、常に対立しているんだよ」
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私は悪魔の戯言には耳を貸さず、問いかける。
「教えてくれ、あの紫の霧はいったい何なのだ? お前が発生させているのか?」
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「おいおいおいおいおいおいおいおい! お前がそれを言うのかよ! 何故も何も、全部、お前のせいなんだよ。バーカ」
「な、なんだと……?」
「今さっき言ったばかりだが、『土着の悪魔』には、大した力がない。俺たちは『土地神』よりも、ずっとか弱い存在なんだ。できることは、そう多くない。善悪の判断を迷う人間の心に、『悪いことをしろ』と囁きかけるか、時々夢に出て、適当なことをくっちゃべるくらいだ。なので、人間たちが皆、正しい心の持ち主なら、何の影響も与えられない」
「…………」
「だからな、お前のように、社会的に高い地位にありながら、矮小で、俗な心根の人間が出てきたときは、最大のチャンスなんだ。そういう俗物は、悪魔のささやきに簡単に耳を貸し、くだらない夢を、神託だなんだと言って、勝手に真に受ける。そして、自らの地位を利用して、とんでもない悪行を平然とやっちまうんだから、笑いが止まらねーぜ」
「とんでもない悪行だと? 私は、悪行などしていない! 確かに、夢に現れたお前の言葉にたぶらかされはしたが、私は、邪悪な魔女を追放しただけだ!」
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