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第39話(デルロック視点)

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 やれやれ、やっとお説教が終わったか。
 先人たちの魂の前で、『国を捨て、責任を放棄する』と宣言しろだって?

 お安い御用だ。

 私は片膝を立て、高らかに言う。

「承知いたしました。私、デルロック・サイラッドは、国を捨て、すべての責任を放棄することを、今ここに宣言します」

 どうだ。
 女神よ、これで満足か。

 さあ、早く私を、どこかに逃がしてくれ。
 もうこんな国に未練はない。

 貧しい土地に、馬鹿な国民、そして、不気味な霧による災害。
 こんなところ、そもそも人が住むべき場所ではなかったのだ。

 ただの一日とはいえ、王の座に上り詰めたことだし、とりあえずは満足した。あとは避難先の国で、屋敷の一つでも貰い、のんびりと暮らすさ。まあ、そのうち霧が収まったら、またここに戻って来て、王になってやってもいいけどね。

 そんなことを思いながら、私は女神の言葉を待った。

 ……女神は、たおやかな微笑を浮かべたまま、一言もしゃべらない。

 なんだ?
 なぜ、何も言わないんだ?

 そう訝しんでいると、女神はやっと、口を開いた。

「ふ……ふふっ……ふっ……」

 美しい唇が、ひきつけでも起こしたかのように、ピクピクと動いている。

 どうやら女神は笑っているらしい。
 神というものは、奇妙な笑い方をするものなのだな。

 いったい何がそんなにおかしくて笑っているのか、人間の私にはさっぱりわからなかったが、女神のご機嫌を取るため、私も彼女に同調し、ニコリと愛想笑いを浮かべた。

「ふ……ふひっ……ふはっ……ひっ……ひひっ……ぁひっ、ひはぁっ……!」

 女神の笑い声は、どんどん大きくなっていく。最初は小さく、上品だった声が、少しずつ大きくなり、徐々に下品なものになっていくのが、なんだか不気味だった。

 そして女神は、地下納骨堂が崩れそうなほどの大声で、爆笑をした。

「ひゃはっ! ひゃはぁっ!! ひゃっはあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!! やったあああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!! 2000ポイントゲットォォォォォー!!!!! これで俺の完全勝利だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 私は、唖然とした。

 な、なんだ?
 女神はいったい、どうしてしまったのだ?

 ただならぬ事態に動揺しながらも、私は女神に声をかける。

「あ、あの、女神様。どうかなさったのですか……?」

 女神は、私の問いに答えなかった。

 彼女はただひたすら、嬉しくて嬉しくてしょうがないと言った感じで、ときに飛び跳ね、ときに地面を転げまわり、まるで小さな子供のように、全身で喜びを表現している。

 私はその様子を、一人茫然として、眺めていることしかできなかった。
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