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第4話
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具体的に言うと、時折デリカシーのないことというか、配慮に欠けたことをポロッと言うことがあるのだ。それでも基本的にはとても優しいし、私のことを愛してくれているのはよく分かっていたので、『これくらい大したことじゃないか』と思ってきた。……というより、見て見ぬふりをしてきたと言うべきか。
私とエリックの婚約は、単なる恋愛感情の発展から結ばれたものではなく、両家の関係を強固にするために結ばれた政治的側面がある。だからよっぽどのことがない限り婚約を解消することなど許されない。何があろうとエリックと結婚するのが私の運命だから、その運命の相手の嫌な部分から目をそらしていた。
だが、どうやらこれ以上目をそらし続けるわけにはいかないらしい。キャロルからは私に対するほぼ明確な悪意を感じるし、エリックはエリックでデリカシーがなさすぎる。こんな人たちの家と結婚で深く結びつき、それで『これが私の運命だから仕方ないわ』と一生我慢して過ごすことができるだろうか?
答えはノーだ。
私はそこまで大人しい女じゃない。
すべてを飲み込んで結婚したとしても、そう遠くない未来にエリックとの結婚生活は破綻するだろう。そうなれば両家の関係も間違いなく悪化する。『こんなことなら問題に気付いた時点で婚約を解消しておくべきだった』と思うくらいに。どんなことでも、関係が深まれば深まるほど、こじれた時のダメージは大きくなるものだから。
私は姿勢を正し、先程の数倍の覚悟でエリックに向き直った。
「エリック。もう一度言います。あなたの口から、キャロルの振る舞いについてきちんと言い聞かせてください。他者に対する配慮と礼儀を、兄のあなたが妹のキャロルに教えるべきです」
言い終えてから、自分の口調が柔らかいものではなく、教師が生徒を諭すようなものになっていることに気がついた。
……これはエリックに対する、私の最後の審判だった。私の真剣な様子を悟り、エリックがしっかりとキャロルを諭してくれるのであれば、彼の人格に多少の問題があったとしても、私は彼と結婚し、夫婦生活を営むことができると思う。そもそも、完全無欠の人格者など存在しないのだから。
しかし、私の真剣さに向き合う意思が根本的にないのだとしたら、そんな人とは結婚できない。何より、これ以上一緒にはいられない。私は固唾を飲み、エリックの反応を伺った。
しばらくの沈黙。いつになく硬い私の態度に、エリックは戸惑っているようだった。少なくとも、こっちの真剣さを感じ取るくらいの神経はあるらしい。
いつもうるさいキャロルも珍しく黙っている。といっても、重苦しい雰囲気に緊張しているというより、エリックが何を言うか興味津々で見守っているという感じだ。
私とエリックの婚約は、単なる恋愛感情の発展から結ばれたものではなく、両家の関係を強固にするために結ばれた政治的側面がある。だからよっぽどのことがない限り婚約を解消することなど許されない。何があろうとエリックと結婚するのが私の運命だから、その運命の相手の嫌な部分から目をそらしていた。
だが、どうやらこれ以上目をそらし続けるわけにはいかないらしい。キャロルからは私に対するほぼ明確な悪意を感じるし、エリックはエリックでデリカシーがなさすぎる。こんな人たちの家と結婚で深く結びつき、それで『これが私の運命だから仕方ないわ』と一生我慢して過ごすことができるだろうか?
答えはノーだ。
私はそこまで大人しい女じゃない。
すべてを飲み込んで結婚したとしても、そう遠くない未来にエリックとの結婚生活は破綻するだろう。そうなれば両家の関係も間違いなく悪化する。『こんなことなら問題に気付いた時点で婚約を解消しておくべきだった』と思うくらいに。どんなことでも、関係が深まれば深まるほど、こじれた時のダメージは大きくなるものだから。
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「エリック。もう一度言います。あなたの口から、キャロルの振る舞いについてきちんと言い聞かせてください。他者に対する配慮と礼儀を、兄のあなたが妹のキャロルに教えるべきです」
言い終えてから、自分の口調が柔らかいものではなく、教師が生徒を諭すようなものになっていることに気がついた。
……これはエリックに対する、私の最後の審判だった。私の真剣な様子を悟り、エリックがしっかりとキャロルを諭してくれるのであれば、彼の人格に多少の問題があったとしても、私は彼と結婚し、夫婦生活を営むことができると思う。そもそも、完全無欠の人格者など存在しないのだから。
しかし、私の真剣さに向き合う意思が根本的にないのだとしたら、そんな人とは結婚できない。何より、これ以上一緒にはいられない。私は固唾を飲み、エリックの反応を伺った。
しばらくの沈黙。いつになく硬い私の態度に、エリックは戸惑っているようだった。少なくとも、こっちの真剣さを感じ取るくらいの神経はあるらしい。
いつもうるさいキャロルも珍しく黙っている。といっても、重苦しい雰囲気に緊張しているというより、エリックが何を言うか興味津々で見守っているという感じだ。
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