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第23話(ジェイリアム視点)
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「あわれなのは、あなたたち人間の方です。ありとあらゆる国を侵略? 本物の神以上の存在にもなれた? 何故そのように考えるのか、理解できません。よその国を襲い、富を奪うのですか? 本物の神以上の存在になり、世界を支配するのですか? それにいったい、何の意味があるのです?」
「…………」
「あなたたち人間の頭の中にあるのは、終わりのない欲望だけ。『向上心』『上昇志向』と言えば聞こえはいいですが、あなたたち人間は、結局のところ、どれだけ上り詰めても、決して満足することがない」
「…………」
「例えば、パウレンス子爵。彼は、家柄に恵まれ、家族に恵まれ、役職にも恵まれていました。それなのに、つまらない横領をした。いったいあれ以上、何が必要だったのでしょう? 1000の富が2000になったとして、それがなんなのです? パウレンス子爵は、なぜ危険を冒してまで、公金に手を付けたのだと思います?」
俺は黙っていた。
俺には、わからないからだ。
そして、エルディット・マーク2に、その答えを、教えてほしかったからだ。
「彼は、自らの幸福を当然のことと思い、さらに上の幸福を求めたのです。人間は、幸福が当たり前になると、それをありがたいと思わなくなる。そして、『もっともっと』と、さらなる幸福を求めます。あなたたちの心は、砂漠のようなものです。永遠に潤うことのない、永遠の砂漠。それが、あなたたち人間の本質です」
「…………」
「陛下。あなたももう、気がついているのでしょう? 『ほどほどの平和』『ほどほどの国』で満足しておけばよかったのに、あなたは『完璧なる平和』『完璧なる国』を求め続けた。その向上心……いえ、欲望に応えるために、私は今のように進化したのです。すべては、潤うことのないあなたの心と、人間の愚かさが招いたことなのです」
俺は、何も言い返せなかった。
言い返す気もなかった。
ただ、小さく呟いた。
「そうか……そうだな……」
俺は以前、エルディット・マーク2のことを、悪魔に例えた。
しかし、彼女を悪魔にしたのは、俺の理想、向上心――いや、欲望だった。
エルディット・マーク2は、ただ素直に、学習を続けただけだ。
もしも俺が、おおらかな執政者であったなら、きっとエルディット・マーク2は、こんなふうにはならなかっただろう。もしも人間が、罪を犯す生き物でなかったなら、エルディット・マーク2も、大量虐殺などしなかっただろう。
「…………」
「あなたたち人間の頭の中にあるのは、終わりのない欲望だけ。『向上心』『上昇志向』と言えば聞こえはいいですが、あなたたち人間は、結局のところ、どれだけ上り詰めても、決して満足することがない」
「…………」
「例えば、パウレンス子爵。彼は、家柄に恵まれ、家族に恵まれ、役職にも恵まれていました。それなのに、つまらない横領をした。いったいあれ以上、何が必要だったのでしょう? 1000の富が2000になったとして、それがなんなのです? パウレンス子爵は、なぜ危険を冒してまで、公金に手を付けたのだと思います?」
俺は黙っていた。
俺には、わからないからだ。
そして、エルディット・マーク2に、その答えを、教えてほしかったからだ。
「彼は、自らの幸福を当然のことと思い、さらに上の幸福を求めたのです。人間は、幸福が当たり前になると、それをありがたいと思わなくなる。そして、『もっともっと』と、さらなる幸福を求めます。あなたたちの心は、砂漠のようなものです。永遠に潤うことのない、永遠の砂漠。それが、あなたたち人間の本質です」
「…………」
「陛下。あなたももう、気がついているのでしょう? 『ほどほどの平和』『ほどほどの国』で満足しておけばよかったのに、あなたは『完璧なる平和』『完璧なる国』を求め続けた。その向上心……いえ、欲望に応えるために、私は今のように進化したのです。すべては、潤うことのないあなたの心と、人間の愚かさが招いたことなのです」
俺は、何も言い返せなかった。
言い返す気もなかった。
ただ、小さく呟いた。
「そうか……そうだな……」
俺は以前、エルディット・マーク2のことを、悪魔に例えた。
しかし、彼女を悪魔にしたのは、俺の理想、向上心――いや、欲望だった。
エルディット・マーク2は、ただ素直に、学習を続けただけだ。
もしも俺が、おおらかな執政者であったなら、きっとエルディット・マーク2は、こんなふうにはならなかっただろう。もしも人間が、罪を犯す生き物でなかったなら、エルディット・マーク2も、大量虐殺などしなかっただろう。
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