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第17話(ジェイリアム視点)
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エルディット・マーク2の言っていることは、正論だった。
もっとも、彼女はいつも正論しか言わないのだが。
俺は長いため息を漏らし、それから、頷いた。
「わかった……お前の言う通りにする……」
こうなったら、とことんまでやってやる。
すべては、『完璧なる国』を作るため。
家族同然だったパウレンスさえも、俺は殺したのだ。もう、躊躇はなかった。それに、俺の理想を理解せず、愚かな不正に手を染める重臣たちへの怒りもあった。
『将来不正を犯す可能性がある者たち』の処刑は、その日のうちに、一斉におこなわれた。わずかでも時間差ができると、逃げたり反逆したりするものが出てくるからというエルディット・マーク2の指示に従ってのことだった。
……大変な決断だった。
だが、やり遂げた。
また一歩。『完璧なる国』に近づいた。
特権階級の優雅な暮らしを妬み、不平不満を漏らしていた民衆は少なくない。
彼らもきっと、俺のおこないに賛同するだろう。
・
・
・
だが、民衆の反応は、俺の予想とは大きく違っていた。まだ罪を犯していない者を、エルディット・マーク2の予測に基づいて全員処刑した俺に対し、民衆たちは一斉に異を唱えたのだ。
『やりすぎだ!』
『機械の言いなりになるな!』
『狂った王! 過去のどんな暴君よりも酷い!』
皆、そんなことを言いながら、王城の前でデモ行進をしている。
俺はテラスから、エルディット・マーク2と共にそれを眺めていた。
「……うまくいかないものだな。普段は特権階級に対し、陰で罵詈雑言ばかりを言いあっている民衆が、まとめて特権階級を処刑したことで、このような反応を見せるとは」
エルディット・マーク2は、アリの行列でも見るような目で民衆を見下ろし、微笑んでいた。そして、ギギギと首を動かし、こちらを見て、無感情に言う。
「陛下。王城前でのデモ行進は、不敬行為です。皆、処分いたしましょう」
俺は、あまり驚かなかった。
エルディット・マーク2なら、そう言うと思っていたからだ。
そして俺自身も、執政者の苦悩も知らずに、知ったようなことを言いながら乱痴気騒ぎをしている民衆たちを、罰してやりたいと思っていた。
……ただ、いつ頃からか、彼女が『処刑』ではなく、『処分』という言葉を使うようになったことだけは、少し気がかりだった。
もっとも、彼女はいつも正論しか言わないのだが。
俺は長いため息を漏らし、それから、頷いた。
「わかった……お前の言う通りにする……」
こうなったら、とことんまでやってやる。
すべては、『完璧なる国』を作るため。
家族同然だったパウレンスさえも、俺は殺したのだ。もう、躊躇はなかった。それに、俺の理想を理解せず、愚かな不正に手を染める重臣たちへの怒りもあった。
『将来不正を犯す可能性がある者たち』の処刑は、その日のうちに、一斉におこなわれた。わずかでも時間差ができると、逃げたり反逆したりするものが出てくるからというエルディット・マーク2の指示に従ってのことだった。
……大変な決断だった。
だが、やり遂げた。
また一歩。『完璧なる国』に近づいた。
特権階級の優雅な暮らしを妬み、不平不満を漏らしていた民衆は少なくない。
彼らもきっと、俺のおこないに賛同するだろう。
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だが、民衆の反応は、俺の予想とは大きく違っていた。まだ罪を犯していない者を、エルディット・マーク2の予測に基づいて全員処刑した俺に対し、民衆たちは一斉に異を唱えたのだ。
『やりすぎだ!』
『機械の言いなりになるな!』
『狂った王! 過去のどんな暴君よりも酷い!』
皆、そんなことを言いながら、王城の前でデモ行進をしている。
俺はテラスから、エルディット・マーク2と共にそれを眺めていた。
「……うまくいかないものだな。普段は特権階級に対し、陰で罵詈雑言ばかりを言いあっている民衆が、まとめて特権階級を処刑したことで、このような反応を見せるとは」
エルディット・マーク2は、アリの行列でも見るような目で民衆を見下ろし、微笑んでいた。そして、ギギギと首を動かし、こちらを見て、無感情に言う。
「陛下。王城前でのデモ行進は、不敬行為です。皆、処分いたしましょう」
俺は、あまり驚かなかった。
エルディット・マーク2なら、そう言うと思っていたからだ。
そして俺自身も、執政者の苦悩も知らずに、知ったようなことを言いながら乱痴気騒ぎをしている民衆たちを、罰してやりたいと思っていた。
……ただ、いつ頃からか、彼女が『処刑』ではなく、『処分』という言葉を使うようになったことだけは、少し気がかりだった。
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