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第16話(ジェイリアム視点)

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「いえ。私の予測に間違いはありません。リストアップされた人間の内、40パーセントは一年以内に罪を犯し、残りの60パーセントも、三年以内に罪を犯すことでしょう」

「…………」

「陛下、実は私は、以前処刑されたパウレンス子爵が罪を犯すことも、あらかじめ予測していました。そしてパウレンス子爵は、私の予測通りに、罪を犯しました」

「なんだと? 待て、エルディット・マーク2。パウレンスが罪を犯す可能性があることを知っていたのなら、何故それを俺に言わなかった」

 俺は、かすかな怒気を込めて言った。
 エルディット・マーク2は、少しも怯まず、機械的に答えた。

「パウレンス子爵は、陛下の信任が厚いお方。そのパウレンス子爵のことを『将来必ず罪を犯す人間です』などと言えば、陛下は私の機械頭脳に疑問と不信を持ち、私を遠ざけられたでしょう。『しょせんは機械。機械の戯言など信頼できぬ』と」

 俺は、黙った。

 エルディット・マーク2の言う通りだったからだ。パウレンスが実際に罪を犯した後でなければ、俺はエルディット・マーク2の言うことを、決して信じなかったに違いない。

 そして、しばらく黙ったまま、考える。
 エルディット・マーク2も、黙っている。

 沈黙を打ち破ったのは、俺の方だった。

「……わかった。『将来不正を犯す可能性がある者たち』に対し、何らかの対処をすることには、同意しよう。だが、処刑はやりすぎではないか? 彼らはまだ、何の罪も犯していない。国外に追放すれば十分だろう」

「いいえ。追放では不十分です。というより、彼らを追放することそのものが、新たなる騒乱の火種となる可能性があります。陛下、考えてもみてください。現在罪を犯していないのに国を追放された者は、陛下に対し、いかなる感情を抱くでしょうか?」

「……まず間違いなく、俺のことを、恨むだろうな」

 エルディット・マーク2は、俺の答えに、満足げに頷いた。

「彼らは、特権階級ですから、独自の私兵団や、他国との外交的なつながりを持っています。そんな彼らが、陛下への恨みを糧にして、他国を扇動し、このアデライド王国に復讐を考えることは、至極当然。彼らは、決して生かして国の外に出してはならないのです。だから皆、警戒されぬうちに、処分しなければなりません」
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