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第14話(ジェイリアム視点)
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エルディット・マーク2の言っていることは、正論だった。
当然だ、機械の頭脳が導き出した、完璧な答え。
その答えの中に、間違いなどあるはずがない。
……残念だが、パウレンスの処刑は、おこなわなければならないだろう。
エルディット・マーク2の言う通り、相手によって罰の程度を変えていては、法治国家は成り立たない。俺は『完璧なる国』の王として、国法を曲げるわけにはいかない。
しかし……
「い、一族皆殺しは、いくらなんでも、やりすぎではないか……? パウレンスは少し前に、子供が生まれたばかりだ。俺も抱かせてもらったことがある。とても無垢で、愛らしい赤ん坊だ……。一族皆殺しとなれば、その赤ん坊も殺さなくてはならない。それは、あまりにも……」
エルディット・マーク2は、いつも通りの微笑を浮かべ、理路整然と言葉を述べていく。
「陛下。『赤子がいたので一族は処刑を免れた』という前例を作れば、これから先、悪知恵の回る者は皆、横領をする前に子を成しておくことでしょう。罪人を裁く際、特例があってはなりません。いかなる理由があろうとも罪は罪。いかなる立場であろうとも、罰は罰です。どうか、ご決断を」
「う……うぅ……」
……俺は結局、エルディット・マーク2の言う通りにした。
彼女の言っていることは厳しいが、明らかに、正しい理屈だったからだ。
・
・
・
最近、夢見が悪い。
しばしば、パウレンスの夢を見る。
俺が処刑を決断したときの、絶望した彼の顔を。
夢の中で、赤ん坊の泣き声が聞こえる。
パウレンスの一族が、俺を責めているのか。
それとも、俺の罪悪感が見せている、ただの悪夢に過ぎないのか。
……だが、すべては、仕方なかったことだ。厳しい決断だったが、正しい決断だったと、俺は信じている。パウレンスのことが見せしめとなり、これからは、公金横領のような大罪を犯す者もいなくなるだろう。
・
・
・
しかし、特権階級による不正は、無くならなかった。
頻度こそ少なくなったものの、どうしても、ゼロにはならない。
何故だ。
皆、パウレンスの一族に起きた悲劇を知っているはずなのに。
不正がバレたら、自分たちの一族が地獄を見ると知っていて、何故悪事を犯す?
当然だ、機械の頭脳が導き出した、完璧な答え。
その答えの中に、間違いなどあるはずがない。
……残念だが、パウレンスの処刑は、おこなわなければならないだろう。
エルディット・マーク2の言う通り、相手によって罰の程度を変えていては、法治国家は成り立たない。俺は『完璧なる国』の王として、国法を曲げるわけにはいかない。
しかし……
「い、一族皆殺しは、いくらなんでも、やりすぎではないか……? パウレンスは少し前に、子供が生まれたばかりだ。俺も抱かせてもらったことがある。とても無垢で、愛らしい赤ん坊だ……。一族皆殺しとなれば、その赤ん坊も殺さなくてはならない。それは、あまりにも……」
エルディット・マーク2は、いつも通りの微笑を浮かべ、理路整然と言葉を述べていく。
「陛下。『赤子がいたので一族は処刑を免れた』という前例を作れば、これから先、悪知恵の回る者は皆、横領をする前に子を成しておくことでしょう。罪人を裁く際、特例があってはなりません。いかなる理由があろうとも罪は罪。いかなる立場であろうとも、罰は罰です。どうか、ご決断を」
「う……うぅ……」
……俺は結局、エルディット・マーク2の言う通りにした。
彼女の言っていることは厳しいが、明らかに、正しい理屈だったからだ。
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最近、夢見が悪い。
しばしば、パウレンスの夢を見る。
俺が処刑を決断したときの、絶望した彼の顔を。
夢の中で、赤ん坊の泣き声が聞こえる。
パウレンスの一族が、俺を責めているのか。
それとも、俺の罪悪感が見せている、ただの悪夢に過ぎないのか。
……だが、すべては、仕方なかったことだ。厳しい決断だったが、正しい決断だったと、俺は信じている。パウレンスのことが見せしめとなり、これからは、公金横領のような大罪を犯す者もいなくなるだろう。
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しかし、特権階級による不正は、無くならなかった。
頻度こそ少なくなったものの、どうしても、ゼロにはならない。
何故だ。
皆、パウレンスの一族に起きた悲劇を知っているはずなのに。
不正がバレたら、自分たちの一族が地獄を見ると知っていて、何故悪事を犯す?
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