聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです【完結】

小平ニコ

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第13話(ジェイリアム視点)

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 アデライド王国の『完璧なる平和』は、とこしえに続くと思われた。
 俺も、重臣も、国民も、皆、そう思っていた。

 どんな素晴らしい国も、偉大な執政者の死と共に、乱れるもの。
 だが、機械であるエルディット・マーク2の寿命は無限だ。
 だから、アデライド王国の平和も、無限なのだ。

 いつか俺が死んでも、エルディット・マーク2が、俺の息子を補佐し、導いてくれる。ああ、安心だ。未来永劫の平和と繁栄が約束されている。これ以上の安心は、この世に存在しないだろう。

 だが、そんなある日のこと。
 想像もしていなかった大事件が起こった。

 重臣の一人、パウレンス子爵が、公金の一部を横領していたことが分かったのである。……俺の祖父の代から王家に仕えている名家の末裔でありながら、なんという馬鹿なことを。国民が一人も罪を犯さぬ『完璧なる国』で、特権階級が罪を犯すなど、あってはならないことだ。

 しかし俺は、パウレンスを罰することを、躊躇した。

 パウレンスとは、子供の頃から家族同様の付き合いであり、俺は彼のことを、兄のように慕っていたからだ。パウレンスは温厚な男で、気性の激しい俺の言動にもいちいち目くじらを立てることはなく、いつも穏やかに接してくれた。だから俺は、パウレンスのことが好きだった。

 ……公金横領は、大罪だ。
 国法に照らすのであれば、死罪である。

 パウレンスは泣いて土下座し、俺に許しを乞うた。
『出来心だった』『もう二度としない』『どうか、命だけは』
 正視に堪えないほど、哀れな姿だった。

 俺も、パウレンスを殺したくなかった。
 もちろん、犯した罪を考えれば、さすがに無罪放免というわけにはいかない。
 だが、なんとかして、命だけは助けてやりたかった。

 そんな俺に、エルディット・マーク2は、抑揚のない声で言った。

「陛下。公金横領は大罪です。パウレンス子爵を、即刻処刑しましょう」

 何の慈悲もない言葉だった。
 パウレンスは土下座の姿勢のまま、震えあがった。

 俺は慌てて、言う。

「ま、待ってくれ、エルディット・マーク2。俺とパウレンスは、幼いころから家族同然の……」

「陛下。相手によって罰の程度を変えていては、法というものは成り立ちません。しかも、パウレンス子爵の犯した罪は、単に公金横領だけではありません。彼のしたことは、長きにわたって犯罪件数皆無を成し遂げていたアデライド王国の平和を侮辱したのと同じです。見せしめとして、彼の一族も、皆殺しにすべきです」
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