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第8話(ジェイリアム視点)

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 しかしエルディットは、にべもなく俺の誘いを断った。いや、『にべもなく』どころではない、奴の瞳には、俺に対する軽蔑すら浮かんでいた。

 エルディットは、こう言って俺を諭した。

『国王陛下。あなたは万民の上に立つお方なのですから、どうか、節度を持ってください。『英雄色を好む』と言いますが、それにしたって、陛下の振る舞いは少々行き過ぎです』

 不愉快だった。

 小娘が。
 何様のつもりだ。

 大国アデライドの王になるべくして生まれてきた俺は、男としての自負が芽生えてからは、欲しいと思った女は、皆、自分のものにしてきた。

 こう言うと、無理やり手籠めにしたように聞こえるが、そんなことは一度もない。女たちは皆、喜んで俺に抱かれるのだ。それこそ、一夜限りの関係だとしてもな。

 エルディットに拒絶されてから、俺は奴を冷遇するようになった。そうすれば、自分の身の程を知り、最終的には泣きついて来ると思ったからだ。

 だが、エルディットは決して屈しなかった。
 冷遇されたからといって、聖女の役目を放り出すようなこともなかった。

 その誇り高い行動が、ますます俺を苛立たせた。

 だから俺は、アデライド王国の持つ魔法科学の粋を集めて、機械仕掛けの聖女を作ることに決めたのだ。いくらエルディットでも、自分そっくりの代替品を持ってこられたら、その自尊心は砕け、俺にひれ伏すに違いない……そう、思ったのだ。

 しかしエルディットは、完成したエルディット・マーク2を目にし、驚いてはいたものの、俺に屈するようなことはなかった。国を追放される段階になれば、さすがに狼狽するだろうと思っていたのに、奴は平然と、国を出て行った。

 そこでやっと、俺は悟った。
 この女を屈服させることなど、できはしないのだということを。

 ……ならば、もういい。
 手に入らない宝になど、興味はない。

 どこへなりと行き、勝手に生きて、勝手に死ねばいい。

 エルディットとの間には、結局不愉快な思い出しかないが、ある意味奴のおかげで、究極の守護者とも呼べる機械仕掛けの聖女、エルディット・マーク2が完成したのだ。我がアデライド王国は、これからさらに発展していくことだろう。

 俺は、エルディット・マーク2と共に、理想国家を作るのだ。先王も、先々王も、いや、世界中のどんな英雄でも作れなかった、『完璧なる平和』の、『完璧なる国』を……

 そんなある日のこと。

 エルディット・マーク2が、突然、奇妙なことを言い始めた。
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