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第5話
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私もまた、ルーカード神父を真似るように頷き、言う。
「そうなんです。神父様、どうか、このことは、他のシスターや教会に来る人たちには、言わないでほしいのですが……」
「わかりました。決して、他言は致しません。誰にでも、知られたくないことというものは、あるものですからね」
ルーカード神父はそう言い切ると、表情を変えず、もう一度頷いた。
まるで、お面のような無表情であり、私には、彼がどんな思いで私の話を聞いていたのか、想像がつかなかった。ルーカード神父は誠実で、美しい顔をした青年だが、どんなときも、ほとんど表情が変わらず、見方によっては不愛想ととられかねないのが、少々玉に瑕だった。
しかし、とにもかくにも、私の秘密は守られるようだ。ルーカード神父なら、間違っても面白半分で人の過去を言いふらしたりすることはない。私はホッとして、胸をなでおろす。
そんな私に、ルーカード神父は、何かを思い出したように言う。
「それにしても、あなたがアデライド王国のご出身だったとは、驚きです。実は私も、かつて、あの国で働いていたことがあるんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「ええ。働いていただけではなく、生まれも育ちも、アデライド王国です。事情があって国を出ましたが、それでも、生まれ故郷ですからね。新聞にアデライド王国の記事が載るたび、ちゃんと目を通しています」
ルーカード神父は、そこで一度言葉を切り、小さなため息を漏らしてから、語り続ける。
「だから、長年アデライド王国を守護してくれていた聖女様を追い出して、機械仕掛けの聖女に役目を引き継がせたと知ったときは、心の底から呆れてしまいました。今のところは、問題なく国の平和が保たれているようですが、私は、なんだか嫌な予感がしてなりません」
「嫌な予感って……どういう意味ですか?」
「シスター・エルディット……いえ、聖女エルディット様。聖女の役目とは、機械に模倣できるほど、簡単なものなのでしょうか? 私には、とてもそうは思えません。今は良くても、そう遠くないうちに、何か問題が起こると思います。聖女の代わりが務まる機械なんて、存在するはずがないからです」
それは、不穏な言葉ではあったが、ルーカード神父が、私の果たしてきた役目を『簡単なものではない』『聖女の代わりが務まる機械なんて、存在するはずがない』と思ってくれていたことが、なんとなく嬉しかった。
しかし、私の見た限り、あの機械仕掛けの聖女の能力は見事だった。自分で言うのも癪だが、少なくとも『国の平和を守る』という点においては、人間の私よりも、完璧に役目を果たすことができるだろう。機械は、疲れることを知らないのだから。
もちろん、私の聖女としての働きを認めてくれたルーカード神父に、わざわざそんなことを言う必要はない。私は「そうかもしれませんね」と言い、小さく頷いた。
「そうなんです。神父様、どうか、このことは、他のシスターや教会に来る人たちには、言わないでほしいのですが……」
「わかりました。決して、他言は致しません。誰にでも、知られたくないことというものは、あるものですからね」
ルーカード神父はそう言い切ると、表情を変えず、もう一度頷いた。
まるで、お面のような無表情であり、私には、彼がどんな思いで私の話を聞いていたのか、想像がつかなかった。ルーカード神父は誠実で、美しい顔をした青年だが、どんなときも、ほとんど表情が変わらず、見方によっては不愛想ととられかねないのが、少々玉に瑕だった。
しかし、とにもかくにも、私の秘密は守られるようだ。ルーカード神父なら、間違っても面白半分で人の過去を言いふらしたりすることはない。私はホッとして、胸をなでおろす。
そんな私に、ルーカード神父は、何かを思い出したように言う。
「それにしても、あなたがアデライド王国のご出身だったとは、驚きです。実は私も、かつて、あの国で働いていたことがあるんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「ええ。働いていただけではなく、生まれも育ちも、アデライド王国です。事情があって国を出ましたが、それでも、生まれ故郷ですからね。新聞にアデライド王国の記事が載るたび、ちゃんと目を通しています」
ルーカード神父は、そこで一度言葉を切り、小さなため息を漏らしてから、語り続ける。
「だから、長年アデライド王国を守護してくれていた聖女様を追い出して、機械仕掛けの聖女に役目を引き継がせたと知ったときは、心の底から呆れてしまいました。今のところは、問題なく国の平和が保たれているようですが、私は、なんだか嫌な予感がしてなりません」
「嫌な予感って……どういう意味ですか?」
「シスター・エルディット……いえ、聖女エルディット様。聖女の役目とは、機械に模倣できるほど、簡単なものなのでしょうか? 私には、とてもそうは思えません。今は良くても、そう遠くないうちに、何か問題が起こると思います。聖女の代わりが務まる機械なんて、存在するはずがないからです」
それは、不穏な言葉ではあったが、ルーカード神父が、私の果たしてきた役目を『簡単なものではない』『聖女の代わりが務まる機械なんて、存在するはずがない』と思ってくれていたことが、なんとなく嬉しかった。
しかし、私の見た限り、あの機械仕掛けの聖女の能力は見事だった。自分で言うのも癪だが、少なくとも『国の平和を守る』という点においては、人間の私よりも、完璧に役目を果たすことができるだろう。機械は、疲れることを知らないのだから。
もちろん、私の聖女としての働きを認めてくれたルーカード神父に、わざわざそんなことを言う必要はない。私は「そうかもしれませんね」と言い、小さく頷いた。
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