2 / 24
第2話
しおりを挟む
そして、エルディット・マーク2は、先程まで私が祈りを捧げていた祭壇に行くと、両手を合わせ、静かに祈り始めた。すると、私が祈るのと遜色ない『聖女の力』が発動するのが、ハッキリ分かった。
いつの間にこんなのものを――
って言うか、ロボット聖女を作るにしたって、何も私そっくりにすることないじゃない。私は、驚きと呆れが混ざった顔で、絶句した。
そんな私に、ジェイリアムは意気揚々を言葉を続けていく。
「さあ、これでお前がもう不要だということが分かっただろう。もう話すことはない、早く国を出て行け」
確かに、疲労を感じずに、祈りを捧げ続けることのできるロボット聖女がいるなら、私は不要だろう。しかしまあ、殊更に自らの努力を主張するわけではないが、これまでたった一人で役目を果たしてきた私に対して、この態度。あんまりと言えばあんまりである。
私は眉を顰め、憮然として言う。
「わかりました。陛下に『出て行け』と言われては、国に留まるわけにもいきませんものね。まあ、私としても、休みひとつない聖女の役目に、少々……いえ、かなり疲れていたところです。これからは、どこか別の国で、のんびりとした暮らしをさせてもらいます」
そして私は、もうジェイリアムの顔を見ることもなく、神殿を後にしようとした。その背中に、ジェイリアムの声が響いてくる。
「別れの挨拶は、それだけか。まったく、可愛げのない女だ。お前は昔からそうだ。……だから私は、お前が嫌いなのだ」
私は、振り返りもせず、言う。
「私もあなたのこと、嫌いです。気が合いますね」
「本当に可愛げのない女だ。ふん……女一人で、国を出て、これからどうする? 『出て行け』とは言ったが、お前が頭を下げて頼むなら、何か、別の役職につけてやってもいいんだぞ。これまでの功績を認めて、特別給金を支給してやることも……」
そんなジェイリアムの言葉を、私は遮った。
「お構いなく。ちなみに、退職金もいりません。これまで、お役目を果たすのに忙しくて、お給金はほとんど貯金してますから、少なくとも数年間は働かなくても、お金に困ることはないんです」
「ぐっ、生意気な。ただ一度頭を下げれば、この私が、残りの人生の面倒を見てやるというのに……」
ジェイリアムは、黙った。どうやら、『出て行け』とは言ったものの、内心では、私が泣きついてくると思っていたようだ。
おあいにく様。私、馬鹿にされたようなことを言われて、卑屈な態度をしていられるほど、大人しい女じゃないの。それに、あなたに面倒を見てもらう必要なんてない。いい機会だし、これからは自由に、自分の人生を生きていくわ。
いつの間にこんなのものを――
って言うか、ロボット聖女を作るにしたって、何も私そっくりにすることないじゃない。私は、驚きと呆れが混ざった顔で、絶句した。
そんな私に、ジェイリアムは意気揚々を言葉を続けていく。
「さあ、これでお前がもう不要だということが分かっただろう。もう話すことはない、早く国を出て行け」
確かに、疲労を感じずに、祈りを捧げ続けることのできるロボット聖女がいるなら、私は不要だろう。しかしまあ、殊更に自らの努力を主張するわけではないが、これまでたった一人で役目を果たしてきた私に対して、この態度。あんまりと言えばあんまりである。
私は眉を顰め、憮然として言う。
「わかりました。陛下に『出て行け』と言われては、国に留まるわけにもいきませんものね。まあ、私としても、休みひとつない聖女の役目に、少々……いえ、かなり疲れていたところです。これからは、どこか別の国で、のんびりとした暮らしをさせてもらいます」
そして私は、もうジェイリアムの顔を見ることもなく、神殿を後にしようとした。その背中に、ジェイリアムの声が響いてくる。
「別れの挨拶は、それだけか。まったく、可愛げのない女だ。お前は昔からそうだ。……だから私は、お前が嫌いなのだ」
私は、振り返りもせず、言う。
「私もあなたのこと、嫌いです。気が合いますね」
「本当に可愛げのない女だ。ふん……女一人で、国を出て、これからどうする? 『出て行け』とは言ったが、お前が頭を下げて頼むなら、何か、別の役職につけてやってもいいんだぞ。これまでの功績を認めて、特別給金を支給してやることも……」
そんなジェイリアムの言葉を、私は遮った。
「お構いなく。ちなみに、退職金もいりません。これまで、お役目を果たすのに忙しくて、お給金はほとんど貯金してますから、少なくとも数年間は働かなくても、お金に困ることはないんです」
「ぐっ、生意気な。ただ一度頭を下げれば、この私が、残りの人生の面倒を見てやるというのに……」
ジェイリアムは、黙った。どうやら、『出て行け』とは言ったものの、内心では、私が泣きついてくると思っていたようだ。
おあいにく様。私、馬鹿にされたようなことを言われて、卑屈な態度をしていられるほど、大人しい女じゃないの。それに、あなたに面倒を見てもらう必要なんてない。いい機会だし、これからは自由に、自分の人生を生きていくわ。
2
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~
日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。
田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。
成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。
「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」
彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で……
一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。
国王や王女は気づいていない。
自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。
小説家になろうでも短編として投稿してます。
国の王子から婚約破棄&国外追放。追放された国で聖女の力に目覚めた私は神様になる。
夜にすみたい
ファンタジー
いきなり婚約破棄&国外追放を言い渡された聖女の候補の妖夢。
追放先で聖女の力に目覚めた私は神様に拾われ「次の世代の神になれ」と言われた。
その国の王子とも気が合いそうでうれしかったけどいきなり故郷の王子がきた。
「聖女妖夢よ!今帰ってくれば私との婚約破棄を無かったことにしてやろう!」
「何言ってるんですか?無理ですよ。私、半分竜ですから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる