聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです【完結】

小平ニコ

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第2話

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 そして、エルディット・マーク2は、先程まで私が祈りを捧げていた祭壇に行くと、両手を合わせ、静かに祈り始めた。すると、私が祈るのと遜色ない『聖女の力』が発動するのが、ハッキリ分かった。

 いつの間にこんなのものを――

 って言うか、ロボット聖女を作るにしたって、何も私そっくりにすることないじゃない。私は、驚きと呆れが混ざった顔で、絶句した。

 そんな私に、ジェイリアムは意気揚々を言葉を続けていく。

「さあ、これでお前がもう不要だということが分かっただろう。もう話すことはない、早く国を出て行け」

 確かに、疲労を感じずに、祈りを捧げ続けることのできるロボット聖女がいるなら、私は不要だろう。しかしまあ、殊更に自らの努力を主張するわけではないが、これまでたった一人で役目を果たしてきた私に対して、この態度。あんまりと言えばあんまりである。

 私は眉を顰め、憮然として言う。

「わかりました。陛下に『出て行け』と言われては、国に留まるわけにもいきませんものね。まあ、私としても、休みひとつない聖女の役目に、少々……いえ、かなり疲れていたところです。これからは、どこか別の国で、のんびりとした暮らしをさせてもらいます」

 そして私は、もうジェイリアムの顔を見ることもなく、神殿を後にしようとした。その背中に、ジェイリアムの声が響いてくる。

「別れの挨拶は、それだけか。まったく、可愛げのない女だ。お前は昔からそうだ。……だから私は、お前が嫌いなのだ」

 私は、振り返りもせず、言う。

「私もあなたのこと、嫌いです。気が合いますね」

「本当に可愛げのない女だ。ふん……女一人で、国を出て、これからどうする? 『出て行け』とは言ったが、お前が頭を下げて頼むなら、何か、別の役職につけてやってもいいんだぞ。これまでの功績を認めて、特別給金を支給してやることも……」

 そんなジェイリアムの言葉を、私は遮った。

「お構いなく。ちなみに、退職金もいりません。これまで、お役目を果たすのに忙しくて、お給金はほとんど貯金してますから、少なくとも数年間は働かなくても、お金に困ることはないんです」

「ぐっ、生意気な。ただ一度頭を下げれば、この私が、残りの人生の面倒を見てやるというのに……」

 ジェイリアムは、黙った。どうやら、『出て行け』とは言ったものの、内心では、私が泣きついてくると思っていたようだ。

 おあいにく様。私、馬鹿にされたようなことを言われて、卑屈な態度をしていられるほど、大人しい女じゃないの。それに、あなたに面倒を見てもらう必要なんてない。いい機会だし、これからは自由に、自分の人生を生きていくわ。
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