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第1話
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「エルディット、お前はもう不要だ。午前中のうちに荷造りをして、国を出て行け」
いつも通りの朝。聖女として、神殿で祈りを捧げていた私の元に、この国の若き国王――ジェイリアムが現れ、そう告げた。突然のことに、意味が分からず、私は聞き返す。
「不要って……どういう意味ですか?」
ジェイリアムは、面倒くさそうな顔で、語り始めた。
「エルディット、お前、散々言っていただろう。『聖なる祈りによって、魔物たちから国を守る聖女の仕事の重要性は分かっているが、休みが全くないのがつらい。だから、数日でいいから休暇をくれ』とな」
「ええ、まあ……」
「その『休暇』を、今やると言っているんだ。しかも、数日ではなく、ずっとだ。お前はもう、聖女じゃなくなるんだよ」
「お言葉ですが陛下、私が祈りをやめてしまったら、このアデライド王国は、あっという間に魔物に攻め滅ぼされてしまうのと思うのですが……」
「案ずるな、長い研究の果てに、今日やっと、お前の『代わり』ができたのだ。『休みをよこせ』などと、鬱陶しい文句を言うことのない、完璧な『代用品』がな」
そこで、ジェイリアムは喋るのをやめた。すると、静かになった神殿に、ガシャン、ガシャンと、重たい金属がこすれ合うような音が響いてくる。
私は、音の方向を見た。
そして、思わず「えぇっ」と声を上げてしまう。
私の視界の先には、私によく似た、機械仕掛けの人形がいたからだ。
その人形は、張り付いたような微笑を浮かべ、ガシャン、ガシャンと、こちらに歩いて来る。そして、ジェイリアムの隣まで来ると、恭しく首を垂れ、私に挨拶をした。
「初めまして、聖女エルディット様。私は、エルディット・マーク2と申します。この度、あなた様に代わり、聖女の役目を果たすために、私は作られました。エルディット様におきましては、どうぞ、安心してお役目を降りられますよう、お願い申し上げます」
いかにも機械的な見た目からは想像もできないほど流暢な語り口だったが、丁寧すぎる文言が、少々不自然というか、不気味だった。
唖然とする私に、ジェイリアムは嬉しそうに言う。
「このエルディット・マーク2は、我がアデライド王国の、魔法科学の結晶だ。人間を超える知能・魔力を持ち、半永久的に聖女の力を発揮することができる。つまりは、お前の完全なる上位互換ということだ」
いつも通りの朝。聖女として、神殿で祈りを捧げていた私の元に、この国の若き国王――ジェイリアムが現れ、そう告げた。突然のことに、意味が分からず、私は聞き返す。
「不要って……どういう意味ですか?」
ジェイリアムは、面倒くさそうな顔で、語り始めた。
「エルディット、お前、散々言っていただろう。『聖なる祈りによって、魔物たちから国を守る聖女の仕事の重要性は分かっているが、休みが全くないのがつらい。だから、数日でいいから休暇をくれ』とな」
「ええ、まあ……」
「その『休暇』を、今やると言っているんだ。しかも、数日ではなく、ずっとだ。お前はもう、聖女じゃなくなるんだよ」
「お言葉ですが陛下、私が祈りをやめてしまったら、このアデライド王国は、あっという間に魔物に攻め滅ぼされてしまうのと思うのですが……」
「案ずるな、長い研究の果てに、今日やっと、お前の『代わり』ができたのだ。『休みをよこせ』などと、鬱陶しい文句を言うことのない、完璧な『代用品』がな」
そこで、ジェイリアムは喋るのをやめた。すると、静かになった神殿に、ガシャン、ガシャンと、重たい金属がこすれ合うような音が響いてくる。
私は、音の方向を見た。
そして、思わず「えぇっ」と声を上げてしまう。
私の視界の先には、私によく似た、機械仕掛けの人形がいたからだ。
その人形は、張り付いたような微笑を浮かべ、ガシャン、ガシャンと、こちらに歩いて来る。そして、ジェイリアムの隣まで来ると、恭しく首を垂れ、私に挨拶をした。
「初めまして、聖女エルディット様。私は、エルディット・マーク2と申します。この度、あなた様に代わり、聖女の役目を果たすために、私は作られました。エルディット様におきましては、どうぞ、安心してお役目を降りられますよう、お願い申し上げます」
いかにも機械的な見た目からは想像もできないほど流暢な語り口だったが、丁寧すぎる文言が、少々不自然というか、不気味だった。
唖然とする私に、ジェイリアムは嬉しそうに言う。
「このエルディット・マーク2は、我がアデライド王国の、魔法科学の結晶だ。人間を超える知能・魔力を持ち、半永久的に聖女の力を発揮することができる。つまりは、お前の完全なる上位互換ということだ」
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