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第14話(ブライアン視点)

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 ふと、ローラリアが言っていたことを、思い出す。

『ねえ、ブライアン、『本当の愛』って、どんなものだと思う?』

 彼女は真剣な瞳で、俺にそう問いかけたのだ。
 ローラリアもきっと、俺と同じく、『本当の愛』を探し続けているのだろう。

 そして、そのローラリアが、結婚する。
 ……と、言うことは、彼女は『本当の愛』を見つけたのか?

 そうなんだな。
 そうでなければ、結婚などするはずがない。

 ああ。
 羨ましい。

『本当の愛』とは、どんなものなのだろう?

 ローラリアに会って、是非聞いてみたい。

 しかし、それはできない。

 俺はもう、二度とローラリアに会わないと、心に決めていた。

 ……かつて、図々しくも婚約を結びなおそうとした俺に対し、ローラリアはこう言った。

『一度破棄した婚約を、自分の立場が悪くなったからまた結びなおしてくれっていうのは、いくらなんでも、私に対して失礼すぎると思わない? あなた、結局、自分のことしか考えてないのよ。ほんの少しでも私のことを尊重する気があったら、間違ってもこんな行動はしないはずだわ』

 おっしゃるとおりである。
 一言一句、反論のしようもない。

 俺はその言葉を聞いた時、初めて、自分自身の愚かさと無神経さ、そして身勝手さに気がつき、心から自分を恥じて、涙した。……だからもう二度と、ローラリアの意思を軽んじる、無礼な行動はとらないつもりである。

 ローラリアは、俺のことが好きではない。
 彼女曰く、嫌いでもないらしいが、好きでないことは間違いない。

 そんな、好きでもない俺に、いつまでも周囲をウロウロされては、鬱陶しくて仕方ないだろう。だから俺は、二度と彼女の前に姿を現さないと、心に決めている。……もうこれ以上、彼女に嫌な思いをさせたくはないから。

 だいたい、ローラリアが『本当の愛』を見つけ、これから愛しい人と新しい生活を始めようという時に、ノコノコ出て行って『本当の愛ってどんな感じだった?』なんて聞くのは、いくらなんでも無粋すぎる。……本音を言えば、とても気になるが、やはり、聞くことはできない。

 ただ、祝福の気持ちと感謝を込めて、花束くらいは送るべきだろう。

 俺は使いの者に頼み、最も高級な花束に、『本当の愛を見つけたんだね、おめでとう』というメッセージカードを添えて、結婚式場に届けさせた。そして、俺自身も、必ず『本当の愛』を見つけてみせると、決意を新たにしたのだった。





 それから、数週間後のこと。

 仕事も一段落し、事務所で一休みしていると、思いがけない来客――本当に、少しも、想像すらしていなかった来客が、やってきた。
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