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第13話(ブライアン視点)

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 けがらわしい。

 有力商人たちは、最近勢いのある俺に、自分の娘を嫁がせて親戚関係となり、自分の事業をさらに拡大しようと思っているのだろう。

 けがらわしい。
 けがらわしい。

 そして、欲深い。

 こんな、欲にまみれた結婚で、幸せになれるはずがない。

『本当の愛』が、見つかるはずがない。

 ……俺がずっと探している、『本当の愛』

 それさえ見つかれば、きっと、この『人間不信の呪い』も解けるはずだ。だって『本当の愛』は、憂い、悩み、疑い、苦しみ、惑い――すべての心の闇を照らすほど、明るく、素晴らしいものに決まっているから。

 しかし、どれだけ探しても、『本当の愛』は見つからなかった。

 何人か、誠実そうな女性と付き合ってみたが、やはり、駄目だった。

 どうしても、こう思ってしまうのだ。

『彼女たちは、どうせ俺が事業で稼いだ金が目当てに違いない』と。

 そして、こうも思ってしまうのだ。

『今は商売がうまくいっているからいいが、失敗したら、きっと逃げていくぞ、あのケイティのように』と。

 ……俺は、どの女性とも、三ヶ月以上付き合うことができなかった。
 誰と付き合っても、大体三ヶ月で、俺の不信感は頂点に達してしまうのである。

 多額の手切れ金を渡し、『付き合いを解消したい』と言うと、ほとんどの女は、困惑しながらも、喜んで金を受け取って去っていく。……そのたびに、俺の心には、『それ見たことか。金目当ての卑しい女め。俺は騙されないぞ』という、暗い喜びとでも形容すべき、虚しい勝利の感情が揺らめいた。

 ただ、中には、目に涙を浮かべ『あなたのこと、本当に好きだったのに』と言い、銅貨一枚すらも受け取らずに去っていく女もいた。……もしかして、彼女となら、『本当の愛』を見つけることができたのだろうか?

 いや、違う。
 そんなはずはない。

『本当の愛』があったのなら、俺の元から去っていくはずなど、ないのだから。

 どんな理由があろうと、姿を消した人間との間に、『本当の愛』などあるはずがない。かつて、『本当の愛』を築けると信じたケイティも、結局はいなくなってしまった。みんなみんな、偽物だ。俺は、偽物の愛なんか、いらない。

 そんなある日のこと。
 あのローラリアが、結婚するという話を聞いた。

 相手は、従兄のアークハルト氏だそうだ。

 アークハルト氏は有能だけど、少々軽薄で女好きなのが玉にきずとのことだったが、ローラリアと交際を始めてからは、彼女一人を誠実に愛し、今こうして、結婚することになったという。

 久々に、良いニュースだった。

 俺は誰も信じないが、落ちぶれた俺を見かね、救おうとしてくれたローラリアに対しては、今でも感謝の念を持ち続けている。彼女が幸せになるのは、素晴らしいことだ。
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