24 / 30
第24話(パメラ視点)
しおりを挟む
私は、比較的綺麗な宿を、今夜の宿泊場所に定め、表の看板に書いてある宿泊料を見た。
「……なによ、あばら家みたいなショボい宿のくせに、けっこうお金を取るのね」
一人、そう愚痴をこぼし、財布の中身を確認する。
……げっ、嘘でしょ。
ちょっと足りないじゃない。
なんで?
今日は、ギャンブルで大勝ちしたっていうのに。
ああ、そうか。
勝ち分のほとんどを、指輪を買うのに使っちゃったから、現金はあんまり残ってないんだった。
はぁ……どうしよう。
こうなったら、野宿するしかないのかしら?
いやよ。
そんなのいやいや。
汚らしい浮浪者みたいに外で眠るなんて、絶対にいや。
じゃあ、この指輪を売って、現金に換える?
いやよ。
そんなのいやいや。
こっちの足元を見て、安く買いたたかれるに決まってるし、何より、今日手に入れたばかりの、お気に入りの指輪なんだから、売るなんて絶対にいや。
そこで私は、閃いた。
そうよ。
この指輪を手に入れた時みたいに、ギャンブルでお金を増やせばいいんだわ。
私ってば、あったまいい~。
もう深夜だけど、あの闇カジノなら、こんな時間でもやってるだろうし、善は急げだわ。すぐに手持ちのお金を十倍にして、良い宿に泊まりましょう。
・
・
・
負けた。
一番自信のあった、賭けボクシング。
私が勝つと予想したボクサーは、たったの1ラウンドでノックアウトされ、あっけなく試合は終わった。
ちょっと。
ふざけんじゃないわよ。
なに勝手に負けてんのよ
なに寝てんのよ。
立ちなさいよ。
あんたみたいな、体力くらいしか取り柄のないクズ、私のために戦わなきゃ、生きてる価値なんてないのよ。
ほら、立ちなさいよ。
立てよ!
クズ男! 立って、死ぬまで戦いなさいよ! 私のために!
……そんな私の願いも虚しく、気を失っているボクサーは担架で運ばれていき、新しい賭博対象である、次の試合が粛々と始まった。
ああっ。
くそっ。
これで、完全に一文無しだわっ!
どうするのよ、これからっ!
怒り、地団太を踏む私の後ろに、いつの間にか、男がいた。
大きい。
190cmを軽く超えている。
並外れた巨体というやつは、自然と人を委縮させる効果がある。
私は、少し身を竦ませ、男に問いかけた。
「な、なんですか? 私に、何か用?」
男は、ニコリと微笑んだ。
意外にも、柔和な表情だった。
男は、静かに言う。
「お嬢さん、あなた、今の試合に賭け、そして、負けてしまったようですが、ちゃんと、『負け分』を払えますか?」
「……なによ、あばら家みたいなショボい宿のくせに、けっこうお金を取るのね」
一人、そう愚痴をこぼし、財布の中身を確認する。
……げっ、嘘でしょ。
ちょっと足りないじゃない。
なんで?
今日は、ギャンブルで大勝ちしたっていうのに。
ああ、そうか。
勝ち分のほとんどを、指輪を買うのに使っちゃったから、現金はあんまり残ってないんだった。
はぁ……どうしよう。
こうなったら、野宿するしかないのかしら?
いやよ。
そんなのいやいや。
汚らしい浮浪者みたいに外で眠るなんて、絶対にいや。
じゃあ、この指輪を売って、現金に換える?
いやよ。
そんなのいやいや。
こっちの足元を見て、安く買いたたかれるに決まってるし、何より、今日手に入れたばかりの、お気に入りの指輪なんだから、売るなんて絶対にいや。
そこで私は、閃いた。
そうよ。
この指輪を手に入れた時みたいに、ギャンブルでお金を増やせばいいんだわ。
私ってば、あったまいい~。
もう深夜だけど、あの闇カジノなら、こんな時間でもやってるだろうし、善は急げだわ。すぐに手持ちのお金を十倍にして、良い宿に泊まりましょう。
・
・
・
負けた。
一番自信のあった、賭けボクシング。
私が勝つと予想したボクサーは、たったの1ラウンドでノックアウトされ、あっけなく試合は終わった。
ちょっと。
ふざけんじゃないわよ。
なに勝手に負けてんのよ
なに寝てんのよ。
立ちなさいよ。
あんたみたいな、体力くらいしか取り柄のないクズ、私のために戦わなきゃ、生きてる価値なんてないのよ。
ほら、立ちなさいよ。
立てよ!
クズ男! 立って、死ぬまで戦いなさいよ! 私のために!
……そんな私の願いも虚しく、気を失っているボクサーは担架で運ばれていき、新しい賭博対象である、次の試合が粛々と始まった。
ああっ。
くそっ。
これで、完全に一文無しだわっ!
どうするのよ、これからっ!
怒り、地団太を踏む私の後ろに、いつの間にか、男がいた。
大きい。
190cmを軽く超えている。
並外れた巨体というやつは、自然と人を委縮させる効果がある。
私は、少し身を竦ませ、男に問いかけた。
「な、なんですか? 私に、何か用?」
男は、ニコリと微笑んだ。
意外にも、柔和な表情だった。
男は、静かに言う。
「お嬢さん、あなた、今の試合に賭け、そして、負けてしまったようですが、ちゃんと、『負け分』を払えますか?」
110
お気に入りに追加
4,534
あなたにおすすめの小説
(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。
事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。
しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。
だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。
しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。
呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。
婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。
その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。
故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。
ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。
程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。
典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。
ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。
彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる