幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ

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第20話(ジョセフ視点)

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 どんな理屈だ。
 わがままな子供だって、もう少し慎み深い。

 しかし、『あんたにくっついてる私』か。

 ふふ。

 こいつ、一応、自分が僕に『寄生』してるって自覚はあるんだな。

 なんだかおかしくて、ちょっと笑う。

 そんな僕の笑いが不愉快だったのか、パメラはムッとした様子で語り続ける。

「……なに笑ってんのよ。馬鹿にされてるみたいで、イラつくわね。ちっ、だいたい、もとはと言えば、あんたの父親が、うちのパパにふざけた投資話を持ってきたせいで、うちは駄目になっちゃったんだからね。そこんとこ、ちゃんと分かってる? 責任、感じてる? あんたには一生、私の面倒を見てもらわなきゃ困るのよ」

 あああああ。

 また始まった。

 言われなくても、分かってるよ。

 責任も、感じてるよ。

 お前が、こんなおぞましい『寄生虫』になってしまったのは、僕の家と、お前を甘やかし続けてきた僕自身にも、大きな責任がある。……だって、小さなころのお前は、今よりずっと素直で、優しかったからね。

「ねえジョセフ、聞いてる? 聞いてるの? ほら、耳塞ぐんじゃないわよ。ちゃんと聞きなさいよ。ねえ、ねえ、ねえってば。ほら、聞こえないふりしてんじゃないわよ!」

 もう勘弁してくれ。
 もう勘弁してくれ。
 もう勘弁してくれ。

 頭を抱え、僕はテーブルに顔を伏せる。

 その時だった。
 今までずっと黙っていた母上が、突然叫び出した。

「こんの寄生虫がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 調子に乗ってんじゃねえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 それはまさに、家屋全体を揺らすような、魂の叫びだった。

 普段物静かな母上の絶叫に、僕は驚いたが、パメラはもっと驚いたらしい。彼女は床に尻もちをつき、目は見開かれたままで、口は開いたり閉じたり、まるで、金魚のようである。

 母上は、鬼のごとき――いや、鬼以上の凄まじい形相でパメラを睨みつけ、怒鳴り続ける。

「いつまでも過ぎたことをぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちと!!!! なんなんだよてめぇはよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 何度も謝ってるだろうがあああああぁぁぁぁ!!!! だいたい、投資は自己責任でしょおおおぉぉ!?!? なんでもかんでも人のせいにしてんじゃねえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 凄い。
 本当に凄い。

 比喩ではなく、実際に家が揺れている。

 普段大人しい人ほど、キレた時は恐ろしい。テーブルナイフを握り締め、ゆらりと立ち上がった今の母上を見たら、伝説の勇者でも逃げ出すだろう。
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