幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ

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第5話

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 はぁ……まったく、かつての私は、こんな、無神経で愚鈍な男の、いったいどこを愛していたのだろう。今となっては思い出すことも難しい。結婚まで至らず、婚約の段階で、彼との関係を帳消しにすることができて、本当に良かった。

 さっきも思ったが、こんな男のために、一秒だって時間を使うのは惜しい。

 私は、一切の感情を込めず、他人行儀……いえ、見知らぬ他人に接するよりも、冷たく言う。

「ジョセフさん、先程、魔法の通信機で述べたことがすべてです。あなたとお話しすることは、もう何もありません。これ以上私につきまとうようでしたら、法的措置も検討いたしますので、そのおつもりで」

「えっ、ちょっ、そんな、待ってくれ、僕にはまだ、きみと話したいことが……」

「もう一度だけ言います。私には、あなたとお話しすることは、もう何もありません。では、さようなら」

「ぅ……あ……うぅ……」

 ジョセフは、かすかな呻き声を漏らした。

 面と向かって冷徹な態度を取られ、おめでたいジョセフも、さすがに私の気持ちを理解したのだろう。彼は愕然とした顔で、もう、何も言わず、立ち尽くすだけだった。

 基本的に、面倒なことは好まない男だ。これほど私に嫌われていると悟った以上、必死になって関係を戻そうとしてくることは、もうないだろう。私は最後にジョセフを一瞥し、馬車に乗り込む。パメラの顔は、見もしなかった。ジョセフが殴る価値もない男なら、パメラは、見る価値すらない女だからだ。

 私は席に着き、小さく息を吐いてから、御者に言う。

「お待たせしたわね。出してもらえるかしら」

 御者は微笑みながら、溌溂と返事をする。

「かしこまりました。……フェリシティアお嬢様の、ジョセフ様に対する、毅然たる物言い、ふふっ、わたくし、大変胸がスカッとしました」

 改めてそう言われると照れくさいが、彼の溜飲が少しでも下がったなら、喜ばしいことだ。

 そして、馬車は再び、走り出した。

 ところどころに小さな石が転がっている、舗装の甘い道なので、いつもなら、しばしば、突き上げるような衝撃がくるのだが、どうしたことか、今日はまったくそれがない。

 体に感じるのは、心地の良い、微弱な振動だけ。
 まるで、道の上を滑っているかのようだ。

 馬車は、ますますスピードを上げる。

 天へ向かって、羽ばたくように。

 その軽やかな加速に、私は今後の自分の人生を重ね、希望の未来を夢見るのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

次回は、冷たく突き放されて、ショックを受けるジョセフの視点で物語が進行します。
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