10 / 11
第10話
しおりを挟む
デイモンドは、その質問に答えなかった。そりゃ、答えられないわな。『どうしようもない、特別な理由』なんて、ない。ただひたすらに、エレーンのことを軽く見て、舐めくさってただけなんだから。
このままじゃ、ジャスティンにボコボコにされると思い、デイモンドはビビったんだろうな。奴は、庭にあった鉢植えをいきなり掴んで、ジャスティンの頭に叩きつけた。先制攻撃をして、ぶっ倒しちまうつもりだったに違いない。
しかし、デイモンドの細腕じゃ、そこまでやっても、ジャスティンに大怪我をさせることはできなかった。ジャスティンは、額からうっすらと血を流し、仁王立ちのまま、「それがお前の答えか」と、ため息をつき、それから、拳を構えた。
あとはもう、勝負になんか、ならなかったよ。
ジャスティンは岩のような大きな拳で、デイモンドのほっそりとした顔を、二発、殴った。それで、デイモンドの上の前歯と、下の前歯が、四本、折れてしまった。まさに、怒りの鉄拳だ。あれなら、エレーンに酒瓶で殴られた方が、よっぽどマシだったろうな。
いくら美男子のデイモンドでも、歯抜けの情けない顔じゃ、もう女の子をひっかけることはできないだろう。まっ、因果応報ってやつだな。あと、言うまでもないことかもしれないが、エレーンとデイモンドの婚約は、当然、白紙になったよ。
そうそう、因果応報と言えば、ジェリーナも、エレーンに殴られたショックでな、すっかり人が変わっちまったんだよ。これまで、散々人を舐めた真似をしても、一度も報いを受けることはなかったから、普段はおとなしいエレーンがキレたことで、心底ビビったんだろうな。
ジェリーナは今じゃ、部屋に閉じこもって、ほとんど外に出ることもなくなったらしいぜ。まあ、まだ若いんだ。しばらく引きこもって、自分のしたことを見つめなおし、反省して、それから、新しい人生を生きていくといいさ。
えっ?
暴力を振るったエレーンとジャスティンは、罪に問われなかったのかって?
はぁ~……
そりゃ、問われたさ。
どんな理由があろうと、暴力は、暴力だからね。
でもさ、あの時のエレーンは、ほとんど心神喪失状態だったし、ジャスティンに対しても、情状酌量の余地ありって感じで、そこまで重たい罪にはならなかったんだ。
デイモンドの方から、ジャスティンの頭を凶器――鉢植えでぶん殴ったことも、考慮された。男同士の喧嘩の場合、負傷の程度も大事だけど、『凶器は使われたのか』『どっちが先に手を出したか』ってのが、かなり重要な要素になってくるんだとさ。
このままじゃ、ジャスティンにボコボコにされると思い、デイモンドはビビったんだろうな。奴は、庭にあった鉢植えをいきなり掴んで、ジャスティンの頭に叩きつけた。先制攻撃をして、ぶっ倒しちまうつもりだったに違いない。
しかし、デイモンドの細腕じゃ、そこまでやっても、ジャスティンに大怪我をさせることはできなかった。ジャスティンは、額からうっすらと血を流し、仁王立ちのまま、「それがお前の答えか」と、ため息をつき、それから、拳を構えた。
あとはもう、勝負になんか、ならなかったよ。
ジャスティンは岩のような大きな拳で、デイモンドのほっそりとした顔を、二発、殴った。それで、デイモンドの上の前歯と、下の前歯が、四本、折れてしまった。まさに、怒りの鉄拳だ。あれなら、エレーンに酒瓶で殴られた方が、よっぽどマシだったろうな。
いくら美男子のデイモンドでも、歯抜けの情けない顔じゃ、もう女の子をひっかけることはできないだろう。まっ、因果応報ってやつだな。あと、言うまでもないことかもしれないが、エレーンとデイモンドの婚約は、当然、白紙になったよ。
そうそう、因果応報と言えば、ジェリーナも、エレーンに殴られたショックでな、すっかり人が変わっちまったんだよ。これまで、散々人を舐めた真似をしても、一度も報いを受けることはなかったから、普段はおとなしいエレーンがキレたことで、心底ビビったんだろうな。
ジェリーナは今じゃ、部屋に閉じこもって、ほとんど外に出ることもなくなったらしいぜ。まあ、まだ若いんだ。しばらく引きこもって、自分のしたことを見つめなおし、反省して、それから、新しい人生を生きていくといいさ。
えっ?
暴力を振るったエレーンとジャスティンは、罪に問われなかったのかって?
はぁ~……
そりゃ、問われたさ。
どんな理由があろうと、暴力は、暴力だからね。
でもさ、あの時のエレーンは、ほとんど心神喪失状態だったし、ジャスティンに対しても、情状酌量の余地ありって感じで、そこまで重たい罪にはならなかったんだ。
デイモンドの方から、ジャスティンの頭を凶器――鉢植えでぶん殴ったことも、考慮された。男同士の喧嘩の場合、負傷の程度も大事だけど、『凶器は使われたのか』『どっちが先に手を出したか』ってのが、かなり重要な要素になってくるんだとさ。
15
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ
神々廻
恋愛
「天使様...?」
初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった
「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」
そうですか、なら婚約破棄しましょう。
婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました
花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。
クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。
そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。
いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。
数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。
✴︎感想誠にありがとうございます❗️
✴︎(承認不要の方)ご指摘ありがとうございます。第一王子のミスでした💦
✴︎ヒロインの実家は侯爵家です。誤字失礼しました😵
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
愛しておりますわ、“婚約者”様[完]
ラララキヲ
恋愛
「リゼオン様、愛しておりますわ」
それはマリーナの口癖だった。
伯爵令嬢マリーナは婚約者である侯爵令息のリゼオンにいつも愛の言葉を伝える。
しかしリゼオンは伯爵家へと婿入りする事に最初から不満だった。だからマリーナなんかを愛していない。
リゼオンは学園で出会ったカレナ男爵令嬢と恋仲になり、自分に心酔しているマリーナを婚約破棄で脅してカレナを第2夫人として認めさせようと考えつく。
しかしその企みは婚約破棄をあっさりと受け入れたマリーナによって失敗に終わった。
焦ったリゼオンはマリーナに「俺を愛していると言っていただろう!?」と詰め寄るが……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。
聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。
平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。
聖人な婚約者は、困っている女性達を側室にするようです。人助けは結構ですが、私は嫌なので婚約破棄してください
香木あかり
恋愛
私の婚約者であるフィリップ・シルゲンは、聖人と称されるほど優しく親切で慈悲深いお方です。
ある日、フィリップは五人の女性を引き連れてこう言いました。
「彼女達は、様々な理由で自分の家で暮らせなくなった娘達でね。落ち着くまで僕の家で居候しているんだ」
「でも、もうすぐ僕は君と結婚するだろう?だから、彼女達を正式に側室として迎え入れようと思うんだ。君にも伝えておこうと思ってね」
いくら聖人のように優しいからって、困っている女性を側室に置きまくるのは……どう考えてもおかしいでしょう?
え?おかしいって思っているのは、私だけなのですか?
周囲の人が彼の行動を絶賛しても、私には受け入れられません。
何としても逃げ出さなくては。
入籍まであと一ヶ月。それまでに婚約破棄してみせましょう!
※ゆる設定、コメディ色強めです
※複数サイトで掲載中
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる