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第3話
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ビックリしたのは、二人だけじゃない。
もちろん、俺もさ。
前に、無茶な飲み方して、ぶっ倒れちまった客もいるからさ。俺、とにかく慌てちゃってさ。上ずった声で聞いたんだよ。「お客様、大丈夫ですか!?」って。
そしたら、黒髪のお嬢様、ふらつきながら、なんて言ったと思う?
「今度は、ボトルごと持ってきて」
そう言ったんだよ。
その声がさ。
また、ドスがきいてて怖いんだ。
俺、思わず反射的に、「はい、ただいま!」って返事しちゃってさ。
カウンターに戻ろうとしたんだよ。
そんな俺を、デイモンドがピシャリと止めた。
「いや、持ってこなくていい。代わりに水を頼む」
そう言ってさ。
俺、困っちゃったよ。
どっちかの言うことを聞いたら、どっちかの言うことは、無視しなきゃならなくなるからね。んで、ちょっと迷った結果、酒をボトルごと持って行ったんだ。
どうしてかって?
怖かったからだよ。
黒髪のお嬢様の方が。
俺、直感的に思ったんだ。
デイモンドを無視しても、せいぜい怒鳴られるか、店長に告げ口されるくらいで済むけどさ、黒髪のお嬢様の言うことに逆らったら、指の一本か二本、切り落とされるかもしれないって、あの時、マジでそう思ったんだよ。
だから、酒のボトルを持って行った。
予想通り、デイモンドは怒鳴った。
「持ってくるなと言っただろう!」
そう言って、かなり怒っていたが、大して迫力は感じなかったね。
デイモンドは、運ばれてきたボトルを、ひったくるように奪ったよ。
そして、黒髪のお嬢様を、叱りつけたんだ。
「エレーン! いい加減にしろ! せっかくのデートで、昼間から酒なんて、見苦しい! きみに悪い噂がたったら、婚約者の僕まで恥をかくんだぞ!」
俺さぁ、その言葉を聞いた時、ぽかーんってなっちゃったよ。
デート?
婚約者?
これ、いったいどういうことよって、何度も首をひねったよ。
んで今度は、それまで黙ってたジェリーナが、黒髪のお嬢様――エレーンを非難し始めたんだ。
「デイモンドの言う通りよ、エレーン。女の人が、こんな下品なお酒を飲むだけでもみっともないのに、明るいうちから……恥ずかしいと思わないの? だいたい今は、久しぶりの、デイモンドとのデート中でしょ? 信じられないわ」
いやいやいやいや。
こいつも、なに言ってんの?
今までの、本当に、エレーンとデイモンドのデートだったのか? 二人とも、雰囲気が悪いどころか、会話すらしてないじゃないのよ。ジェリーナとデイモンドは、それはもう、仲睦まじい感じだったけどさ。
もちろん、俺もさ。
前に、無茶な飲み方して、ぶっ倒れちまった客もいるからさ。俺、とにかく慌てちゃってさ。上ずった声で聞いたんだよ。「お客様、大丈夫ですか!?」って。
そしたら、黒髪のお嬢様、ふらつきながら、なんて言ったと思う?
「今度は、ボトルごと持ってきて」
そう言ったんだよ。
その声がさ。
また、ドスがきいてて怖いんだ。
俺、思わず反射的に、「はい、ただいま!」って返事しちゃってさ。
カウンターに戻ろうとしたんだよ。
そんな俺を、デイモンドがピシャリと止めた。
「いや、持ってこなくていい。代わりに水を頼む」
そう言ってさ。
俺、困っちゃったよ。
どっちかの言うことを聞いたら、どっちかの言うことは、無視しなきゃならなくなるからね。んで、ちょっと迷った結果、酒をボトルごと持って行ったんだ。
どうしてかって?
怖かったからだよ。
黒髪のお嬢様の方が。
俺、直感的に思ったんだ。
デイモンドを無視しても、せいぜい怒鳴られるか、店長に告げ口されるくらいで済むけどさ、黒髪のお嬢様の言うことに逆らったら、指の一本か二本、切り落とされるかもしれないって、あの時、マジでそう思ったんだよ。
だから、酒のボトルを持って行った。
予想通り、デイモンドは怒鳴った。
「持ってくるなと言っただろう!」
そう言って、かなり怒っていたが、大して迫力は感じなかったね。
デイモンドは、運ばれてきたボトルを、ひったくるように奪ったよ。
そして、黒髪のお嬢様を、叱りつけたんだ。
「エレーン! いい加減にしろ! せっかくのデートで、昼間から酒なんて、見苦しい! きみに悪い噂がたったら、婚約者の僕まで恥をかくんだぞ!」
俺さぁ、その言葉を聞いた時、ぽかーんってなっちゃったよ。
デート?
婚約者?
これ、いったいどういうことよって、何度も首をひねったよ。
んで今度は、それまで黙ってたジェリーナが、黒髪のお嬢様――エレーンを非難し始めたんだ。
「デイモンドの言う通りよ、エレーン。女の人が、こんな下品なお酒を飲むだけでもみっともないのに、明るいうちから……恥ずかしいと思わないの? だいたい今は、久しぶりの、デイモンドとのデート中でしょ? 信じられないわ」
いやいやいやいや。
こいつも、なに言ってんの?
今までの、本当に、エレーンとデイモンドのデートだったのか? 二人とも、雰囲気が悪いどころか、会話すらしてないじゃないのよ。ジェリーナとデイモンドは、それはもう、仲睦まじい感じだったけどさ。
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