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第1話
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もう、三ヶ月くらい前だったかな。
貴族様御用達のラウンジでさ、俺、バイトしてたんだよ。
えっ?
俺みたいな口の軽い男が、貴族の集まるラウンジで働けるのかって?
あんた、嫌なこと言うねえ。
まあ、普通は駄目だわな。
でも、最近はどこも人手不足でさ。
俺みたいのでも、雇わなきゃ店が回んないのよ。わかる?
さあ、話を戻すぞ。
三ヶ月前の……えっと、午後二時くらい……だったかな?
いつも、比較的すいてる時間だからさ。
その日も、客は、『あの三人』だけだった。
いかにも貴族って感じの、金髪のお嬢様。
そして、これまたいかにも貴族って感じの、金髪のお坊ちゃま。
あと一人は、美人だけど、ちょっと重たい雰囲気の、黒髪のお嬢様だった。
俺、パッと見て、『変な三人組だな』って思ったよ。
だって、そうだろう?
昼下がりのラウンジに来る客なんて、ほとんどが女同士のおしゃべり仲間か、さもなきゃ、男と女、一対一の逢引だ。女二人に男一人なんて、俺が記憶してる限りじゃ、その三人組くらいだったよ。
んで、もっと変なのがさ、楽しそうに話してるのは、金髪のお嬢様とお坊ちゃまだけで、重たい雰囲気の、黒髪のお嬢様だけは、全然喋んないのよ。しかも時々、ちょっと怖い顔で、金髪のお嬢様とお坊ちゃまを睨んだりするんだよ。
なんか、不気味って言うか……怖くってさ、俺、その三人組のテーブルに、注文を取りに行くの、嫌だったんだけど、まあ、そこは仕事だからさ、行ったんだよ。
そしたらさ、お坊ちゃまが、金髪のお嬢様に聞くんだ。「ジェリーナ、注文、何にする?」って。で、金髪のお嬢様――ジェリーナは、こう言った。「デイモンド、あなたと同じものがいいわ。だって、あなたの頼むものって、飲み物も、お菓子も、どれも、センスが良くて、美味しいもの」って。
けっ。あほくさ。そりゃ、デイモンド坊ちゃまのセンスが良いからじゃなくて、うちが提供してるメニューの質がいいからだよ。
俺はそう思ったが、もちろん、口には出さなかった。営業スマイルを浮かべ、デイモンドとジェリーナの注文を受けると、最後に、ずっと黙ってる黒髪のお嬢様に、聞いたんだ。「そちら様は、いかがいたしましょう」ってさ。
そしたら、黒髪のお嬢様、何を注文したと思う?
貴族様御用達のラウンジでさ、俺、バイトしてたんだよ。
えっ?
俺みたいな口の軽い男が、貴族の集まるラウンジで働けるのかって?
あんた、嫌なこと言うねえ。
まあ、普通は駄目だわな。
でも、最近はどこも人手不足でさ。
俺みたいのでも、雇わなきゃ店が回んないのよ。わかる?
さあ、話を戻すぞ。
三ヶ月前の……えっと、午後二時くらい……だったかな?
いつも、比較的すいてる時間だからさ。
その日も、客は、『あの三人』だけだった。
いかにも貴族って感じの、金髪のお嬢様。
そして、これまたいかにも貴族って感じの、金髪のお坊ちゃま。
あと一人は、美人だけど、ちょっと重たい雰囲気の、黒髪のお嬢様だった。
俺、パッと見て、『変な三人組だな』って思ったよ。
だって、そうだろう?
昼下がりのラウンジに来る客なんて、ほとんどが女同士のおしゃべり仲間か、さもなきゃ、男と女、一対一の逢引だ。女二人に男一人なんて、俺が記憶してる限りじゃ、その三人組くらいだったよ。
んで、もっと変なのがさ、楽しそうに話してるのは、金髪のお嬢様とお坊ちゃまだけで、重たい雰囲気の、黒髪のお嬢様だけは、全然喋んないのよ。しかも時々、ちょっと怖い顔で、金髪のお嬢様とお坊ちゃまを睨んだりするんだよ。
なんか、不気味って言うか……怖くってさ、俺、その三人組のテーブルに、注文を取りに行くの、嫌だったんだけど、まあ、そこは仕事だからさ、行ったんだよ。
そしたらさ、お坊ちゃまが、金髪のお嬢様に聞くんだ。「ジェリーナ、注文、何にする?」って。で、金髪のお嬢様――ジェリーナは、こう言った。「デイモンド、あなたと同じものがいいわ。だって、あなたの頼むものって、飲み物も、お菓子も、どれも、センスが良くて、美味しいもの」って。
けっ。あほくさ。そりゃ、デイモンド坊ちゃまのセンスが良いからじゃなくて、うちが提供してるメニューの質がいいからだよ。
俺はそう思ったが、もちろん、口には出さなかった。営業スマイルを浮かべ、デイモンドとジェリーナの注文を受けると、最後に、ずっと黙ってる黒髪のお嬢様に、聞いたんだ。「そちら様は、いかがいたしましょう」ってさ。
そしたら、黒髪のお嬢様、何を注文したと思う?
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