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第100話
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「この状況で、まだ融資が受けられると思っているのか! さっき言っただろう! 『よほどの悪人でない限り、俺は領民が苦しむのは望まない』と! お前たちは人の心をなくした悪だ! 再起を助けてやる値打ちも、善良な領民として保護する価値もない! 近衛兵に切り捨てられたくなければ、十秒以内に俺の視界から消えろ!」
その言葉を受け、これまで彫像のように動かず、部屋の隅で控えていた二人の近衛兵が一歩前に出る。図太いラルフとグロリアもこれには恐怖を感じたのか、短く「ひぇっ」と叫んで執務室を飛び出していった。……白い壁を眺め続けているブレアナを置いて。
「なんて奴らだ。娘を置いて逃げたぞ。……シンシア。お前はあんな親の元で育ったのか。きっと、俺には想像もつかないほど苦しい思いをしたことだろう」
私は静かに、首を左右に振る。
「いえ。以前から問題のある人たちではありましたが、それでもあそこまで下劣な人間ではありませんでした。困窮した暮らしが、あの人たちの精神をさらに捻じ曲げてしまったのでしょう」
「あの二人の言動を聞いて、ふと不安になったのだが、お前の祖父母に対する仕送りはちゃんと実行されていたのだろうか? 三ヶ月前に事業に失敗したと言っていたから、たぶん、その時に仕送りをやめていたんじゃないか? あれだけ自分本位な連中が、お前と約束したからといって、律儀にそれを守り続けたとは思えない」
「あるいはそうかもしれません。でも、三ヶ月くらいなら仕送りが止まっても大丈夫だったと思います。お爺ちゃんとお婆ちゃんはとても堅実で、無駄遣いをしない人たちですから、それまでの仕送りの余剰分を貯蓄していたはず。仕送りが来なくなってからは、その貯蓄を切り崩して対応したのでしょう」
「なるほどな。さすがはお前の祖父母だ。今現在はお前から仕送りを受け、特に困っているという連絡もないのだから、仕送りが止まった期間も問題なく乗り越えたのだろうな。……さて、話を戻すが、一人残されたこのブレアナをどうする? 使用人に頼んで、家に送っていくか?」
私はもう一度、首を左右に振った。
「それはやめた方がいいでしょう。どこからもお金を引っ張って来る手段のなくなったラルフとグロリアには、わずかな余裕もありません。ですから、もうためらうことなくブレアナを売りに出します。とても口に出せないようなところに……」
「そうか。うん……。まあ、そうだろうな……」
「ブレアナの精神は相当に傷ついていますし、心のお医者様がいる病院に預けるのが一番だと思います。幸いなことに、いくつか心当たりがありますから、入院の手配をすることをお許しください。治療費は私が払いますので」
その言葉に、フレッド様は目を丸くした。
「それは構わないが……。いや、しかし……」
その言葉を受け、これまで彫像のように動かず、部屋の隅で控えていた二人の近衛兵が一歩前に出る。図太いラルフとグロリアもこれには恐怖を感じたのか、短く「ひぇっ」と叫んで執務室を飛び出していった。……白い壁を眺め続けているブレアナを置いて。
「なんて奴らだ。娘を置いて逃げたぞ。……シンシア。お前はあんな親の元で育ったのか。きっと、俺には想像もつかないほど苦しい思いをしたことだろう」
私は静かに、首を左右に振る。
「いえ。以前から問題のある人たちではありましたが、それでもあそこまで下劣な人間ではありませんでした。困窮した暮らしが、あの人たちの精神をさらに捻じ曲げてしまったのでしょう」
「あの二人の言動を聞いて、ふと不安になったのだが、お前の祖父母に対する仕送りはちゃんと実行されていたのだろうか? 三ヶ月前に事業に失敗したと言っていたから、たぶん、その時に仕送りをやめていたんじゃないか? あれだけ自分本位な連中が、お前と約束したからといって、律儀にそれを守り続けたとは思えない」
「あるいはそうかもしれません。でも、三ヶ月くらいなら仕送りが止まっても大丈夫だったと思います。お爺ちゃんとお婆ちゃんはとても堅実で、無駄遣いをしない人たちですから、それまでの仕送りの余剰分を貯蓄していたはず。仕送りが来なくなってからは、その貯蓄を切り崩して対応したのでしょう」
「なるほどな。さすがはお前の祖父母だ。今現在はお前から仕送りを受け、特に困っているという連絡もないのだから、仕送りが止まった期間も問題なく乗り越えたのだろうな。……さて、話を戻すが、一人残されたこのブレアナをどうする? 使用人に頼んで、家に送っていくか?」
私はもう一度、首を左右に振った。
「それはやめた方がいいでしょう。どこからもお金を引っ張って来る手段のなくなったラルフとグロリアには、わずかな余裕もありません。ですから、もうためらうことなくブレアナを売りに出します。とても口に出せないようなところに……」
「そうか。うん……。まあ、そうだろうな……」
「ブレアナの精神は相当に傷ついていますし、心のお医者様がいる病院に預けるのが一番だと思います。幸いなことに、いくつか心当たりがありますから、入院の手配をすることをお許しください。治療費は私が払いますので」
その言葉に、フレッド様は目を丸くした。
「それは構わないが……。いや、しかし……」
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