義妹の身代わりに売られた私は大公家で幸せを掴む【完結】

小平ニコ

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第95話

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「そうか。一年間は、人が成長するには十分な期間だ。シンシア、お前も随分変わったよ。ここに来たばかりの頃は、気の強さが先行して、やや喧嘩腰のところもあったが、今はすっかり落ち着いて、大公専属のメイドとして恥ずかしくないふるまいができている」

「も、もともと私はこういう性格ですよ。あの頃は、家族から受けた扱いのせいで、ちょっと……いえ、かなりやさぐれてましたから」

「ふふ、ではそういうことにしておくか」

 その時、執務室に使いの人が来た。いつも来客のお知らせを持ってくる人だ。今日、誰かと会う約束はないはずなので、フレッド様は不思議そうに首をかしげて言う。

「どうした?」

「いえ、それが、その……」

 使いの人は、ちらりと私を見て言葉を濁した。しかし、いつまでも口ごもっているわけにもいかず、意を決したように説明を始める。

「そちらのシンシアさんのご家族が、大公様に面会を求めているんです。……シンシアさんって、家族と折り合いが悪いんですよね? 追い返しましょうか?」

 驚いた。

 あの人たちが、今さら私に何の用だろう。

 私は大公フレッド様の専属メイドになった際、これまでの契約が正式に破棄(私とした賭けの約束を果たすためか、ジェームス様が失踪前にすべての手続きを終えてくれていた)され、立場的には上級メイドに近い地位となった。給金もグンと上がったのだが、当然そのお金は、家族の元には送られていない。

 そう。私は今、自分の貰ったお給料で、祖父母を養っている。だから、実家には『もう祖父母に仕送りはしなくていい』と伝え、完全に縁を切った。

 このお屋敷に連れてこられた時から、長々と抱いていた家族への復讐心は、もうなかった。と言うより、毎日が充実し、幸せなので、あの人たちに対する関心が無くなっていたというのが正直なところかもしれない。

 そして、あの人たちだって、大公様に身代わりを差し出す意味もない今となっては、私に関心などないだろうと思っていたので、こうして揃って訪ねてきたというのは、かなり意外だった。

 フレッド様が、私の顔を見て言う。

「どうする?」

 私は、少しも思案せず、大公様専属のメイドとして常識的な返答をした。

「フレッド様がお会いになる必要はないと判断されたのなら、追い返せばいいと思います。会ってみたいとお思いになられたのなら、会えばよろしいかと」

「ふーむ。実は、ちょっとだけ会ってみたいんだよな」

「何故です?」

「シンシア。お前を身代わりに差し出したブレアナというのは、お前にそっくりだというじゃないか。どれくらい似ているのか、少し興味がある。……あとは、説教だな」

「説教?」
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