義妹の身代わりに売られた私は大公家で幸せを掴む【完結】

小平ニコ

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第79話

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「アマンダのこともそう。短絡的で攻撃的だけど、あなたにくっついて離れなかったり、好きになった相手を無邪気に慕う素直さもあった。だから、もっと私が辛抱強く接してあげれば、こんな馬鹿なことはしなかったかもしれない。いろんな可能性を思えば思うほど、自分の未熟さがわかって、とにかく恥じ入るばかりよ」

 そこで、ずっと黙っていたミシェルさんが苦笑した。

「……何よ。そんなに喋れるなら、普段からもっと喋りなさいよね」

「ごめんなさい……」

「謝らないでよ。ますます自分がみじめになる。はぁー……。こんな聖女みたいな考え方の人間と張り合おうとしてたとは。とんだ身の程知らずだったわね。でも、エリナが悪いのよ。そういう器の大きいところは、もっと積極的にアピールしてくれなきゃ。最初からわかってたら、私たぶん、あなたと競い合おうとは思わなかったわ」

 そう言って明るく笑う姿は、謀略にまみれたミシェルさんではなく、私の知る、優しく親しみやすいミシェルさんそのものだった。……きっと、この朗らかさも、ミシェルさんの持つ本質のひとつなのだろう。

 ミシェルさんの中で、何かに納得がいったのか、たとえエリナさんの慈悲のかかった処罰を下されようとも、もう何も言う気はないようである。アマンダは、とにかく後は命さえ助かればいいという感じで、余計な口出しをしなかった。

 その結果、大公様が二人に下した罰は、等しく十年の禁錮刑であった。使ったのは軽微な毒で、殺意自体はなかったとはいえ、自らが仕える主――何より、高貴なる大公様に毒を盛った報いとしては、とてつもなく軽い刑である。恐らく、普通なら死罪。あるいは拷問の末の永久投獄が妥当なところだろうか。

 これはエリナさんが、大公様に刑の軽減を何度も嘆願したからである。大公様は最初、エリナさんの意思をくんでも懲役二十年という罰を科そうとしたが、エリナさんがあまりにも悲しそうな顔をするので、大まけにまけて半分の十年になった。

 それだけ大公様は、エリナさんのことを大切に思い、一時でも彼女を疑ったことを後悔しているのだろう。……今回の結果は、私の心にも大きな影響を与えた。自分を陥れようとした者たちに復讐を望まなかったエリナさんの高潔さを思うと、なんだか恥ずかしくなってくる。

 私はかつて、自分の身代わりに私を大公家に送った義妹のブレアナと、私を『卑しい血』と蔑む継母のグロリアを憎み、彼女たちへの復讐を誓った。二人の言いなりである実の父ラルフも、場合によっては不幸にしてやりたいと思っていた。

 でも、エリナさんが言っていたように、苦しめられたら復讐して、傷つけられたら傷つけ返して、それで楽しいのだろうか? それで本当に、幸せになれるのだろうか?
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