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第74話

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「そして、あなたたちがこうして証拠を見つけてきたので、これから消え去るのはミシェルです。おめでとう、努力が報われましたね。後は私に任せてください。さあブレアナ、これから父上のお部屋に向かいますよ。フレッド。あなたはここまでです。父上はまだ、あなたと面会する気はありませんからね」





 なんだか呆気にとられたまま、私はジェームス様と共に大公様の寝室に向かった。最近の大公様は、執務室に入ることも少なくなり、一日のほとんどをこの寝室で横になって過ごしているという。実際、久しぶりに見た大公様のお顔は、以前お会いした時より、ずっとやつれて見えた。

 そんなやつれた大公様に、ジェームス様はアマンダの策略について説明し、例の『毒の購入記録』を見せ、エリナさんは陥れられただけだと言った。

 すると大公様は「やはりそうか! エリナがワシを裏切るはずなどない!」と叫び、生気のなかったお顔に、見る見るうちに赤みがさしていく。それは、喜びの赤のようでいて、怒りの赤にも見えた。事実、大公様はエリナさんの罪が誤解であったことを喜びながら、アマンダのしでかしたことに怒っているのだろう。

 さらにジェームス様は、次のように付け加える。

「父上。謀略の実行犯はアマンダですが、彼女をたきつけたのは現執事長代理のミシェルです。アマンダとミシェル。どちらも厳罰に処するべきでしょう」

「よしわかった! 今すぐ二人をここに呼べ!」

「それから、自らの立場が不利になることもいとわず、懸命にエリナの濡れ衣を晴らそうとしたこのブレアナに、何か褒美を与えてあげてください」

「わかっておる! でかしたぞ、ブレアナ!」

「ど、どうも……」

 恐縮しながらも、私は困惑していた。『毒の購入記録』を手に入れたことで、アマンダを罰することはできても、ミシェルさんまで厳罰に処すことは不可能じゃないだろうか? だって、ミシェルさんが本当にアマンダをたきつけたかどうかなんて、誰にもわからず、決定的な証拠もないんだから。

 だが、実際に連れてこられたミシェルさんとアマンダに対する、大公様の激しい怒りを見て、私は考えを改めた。……そうか。『決定的な証拠』なんて必要ないんだ。本物の権力者――大公様が絶対に許さないと心に決めたら、法的な手続きを踏まずに処罰を下すことが可能なんだから。

 基本的には温厚な大公様がここまで強権を発動すると思っていなかったのか、さすがのミシェルさんも、大いに狼狽していた。そして、もはやどんな言い訳をしても処罰は免れないと知り、もう何も言わなかった。その代わり、アマンダが顔を赤くして最後の抵抗をする。
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