66 / 99
第65話
しおりを挟む
その理屈でいくと、繁華街や表通りの大きな商店も駄目だ。そういうところは一日中人の出入りがあるから、いつ、誰が見ているとも限らない。アマンダは面倒くさがりだが、警戒心がないわけじゃないので、目立つところで毒を買ったりはしないはず。
そして、よくよく考えてみると、恐らく行商人から毒を買うこともないんじゃないかと思う。他の地方から流れてきた行商人は、特定の場所で商売をすることはなく、居場所が日によって違う。だから案外、狙って行商人を探し出すのは面倒なのだ。
しかも、話しかけてみるまでは取り扱っている商品の内容が分からないので、何人もの行商人に『毒はないか』と声をかけることになるから、面倒なだけではなく目立ってしまう。アマンダがそんなことをするとは思えない。もっとも、偶然行商人を発見し、その商人が、これまた偶然に毒を売っている可能性もゼロではないが……。
まあとりあえず、そんな偶然はそうそう起こらないと仮定し、アマンダは行商人を使っていないと考える(使ってたら、もうどうしようもないし……)。さて、普段から付き合いのある商人は駄目、目立つ場所の商人も駄目、行商人も駄目となると、面倒くさがりのアマンダは、どこで毒を買うだろうか。
完全な推論だが、町の中心部からはある程度距離のある、なるべく人気のない店を選ぶ気がする。そこなら目立たないし、アマンダのことを知る者もいないと思うので、噂も立ちにくい。
だいたい、郊外の一歩手前あたりにある店がこれに該当するだろうか。そういう店ならば、お屋敷からそんなに遠出しなくてもいいので、自由な外出が許されていない私たちでもお使いのついでに立ち寄ることができる。
そう。そもそも私たちは、たとえ休日でもフラフラと出歩くことを許可されていないので、遠くに行くことなどできないのだ。だから、お使いのついでに寄ることのできる中~近距離以外の商人は、調査対象から除外される。
ただ、今まで述べてきた理屈にはけっこう穴があり、アマンダがお使いに出た時、知り合いに頼んで毒を調達してもらうなどの策を取っていた場合、すべて破綻してしまう。
でも正直、その可能性は限りなく低いと思う。こう言ってはなんだが、攻撃性の塊であるアマンダに、下手をすれば命にかかわる謀略の共犯になってくれる友人知人がいるとはちょっと考えにくいし、何より、アマンダは基本的に他人を全て見下し、信用していない。唯一の例外はミシェルさんだけだ。
……そう思うと、アマンダはアマンダなりに、敬愛する人のために必死なんだろうか。私がエリナさんのために、必死に無実を証明しようとしているように。
そして、よくよく考えてみると、恐らく行商人から毒を買うこともないんじゃないかと思う。他の地方から流れてきた行商人は、特定の場所で商売をすることはなく、居場所が日によって違う。だから案外、狙って行商人を探し出すのは面倒なのだ。
しかも、話しかけてみるまでは取り扱っている商品の内容が分からないので、何人もの行商人に『毒はないか』と声をかけることになるから、面倒なだけではなく目立ってしまう。アマンダがそんなことをするとは思えない。もっとも、偶然行商人を発見し、その商人が、これまた偶然に毒を売っている可能性もゼロではないが……。
まあとりあえず、そんな偶然はそうそう起こらないと仮定し、アマンダは行商人を使っていないと考える(使ってたら、もうどうしようもないし……)。さて、普段から付き合いのある商人は駄目、目立つ場所の商人も駄目、行商人も駄目となると、面倒くさがりのアマンダは、どこで毒を買うだろうか。
完全な推論だが、町の中心部からはある程度距離のある、なるべく人気のない店を選ぶ気がする。そこなら目立たないし、アマンダのことを知る者もいないと思うので、噂も立ちにくい。
だいたい、郊外の一歩手前あたりにある店がこれに該当するだろうか。そういう店ならば、お屋敷からそんなに遠出しなくてもいいので、自由な外出が許されていない私たちでもお使いのついでに立ち寄ることができる。
そう。そもそも私たちは、たとえ休日でもフラフラと出歩くことを許可されていないので、遠くに行くことなどできないのだ。だから、お使いのついでに寄ることのできる中~近距離以外の商人は、調査対象から除外される。
ただ、今まで述べてきた理屈にはけっこう穴があり、アマンダがお使いに出た時、知り合いに頼んで毒を調達してもらうなどの策を取っていた場合、すべて破綻してしまう。
でも正直、その可能性は限りなく低いと思う。こう言ってはなんだが、攻撃性の塊であるアマンダに、下手をすれば命にかかわる謀略の共犯になってくれる友人知人がいるとはちょっと考えにくいし、何より、アマンダは基本的に他人を全て見下し、信用していない。唯一の例外はミシェルさんだけだ。
……そう思うと、アマンダはアマンダなりに、敬愛する人のために必死なんだろうか。私がエリナさんのために、必死に無実を証明しようとしているように。
160
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
強欲な妹が姉の全てを奪おうと思ったら全てを失った話
桃瀬さら
恋愛
幼い頃、母が言った。
「よく見ていなさい。将来、全て貴方の物になるのよ」
母の言葉は本当だった。姉の周りから人はいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。
何不自由ない生活、宝石、ドレスを手に入れた。惨めな姉に残ったのは婚約者だけ。
私は姉の全てを奪いたかった。
それなのに、どうして私はこんな目にあっているの?
姉の全てを奪うつもりが全てを失った妹の話。
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。
子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。
ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。
それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
婚約破棄は十年前になされたでしょう?
こうやさい
恋愛
王太子殿下は最愛の婚約者に向かい、求婚をした。
婚約者の返事は……。
「殿下ざまぁを書きたかったのにだんだんとかわいそうになってくる現象に名前をつけたい」「同情」「(ぽん)」的な話です(謎)。
ツンデレって冷静に考えるとうっとうしいだけって話かつまり。
本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる