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第63話

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 私は、決意と覚悟を込めて言う。

「フレッド様。証拠を手に入れるのが難しいことはよくわかりました。でも、このまま何もせずにいるなんてできません。エリナさんの濡れ衣を晴らすチャンスが少しでもあるとしたら、それに賭けてみたいんです。今日から、他の仕事を放り出してでも、すべての時間を薬材商人の調査にあてようと思います」

 現在、執事長のエリナさんが監禁されているので、執事長補佐のミシェルさんが代理として全使用人を監督している。不幸中の幸いと言うべきか、ミシェルさんによる使用人たちの管理は、エリナさんに比べてはるかに甘いので、あまり良いことではないが、仕事を抜け出して外に出ることはそれほど難しくない。

 私の覚悟を聞いたフレッド様は、もう厳しい顔をしていなかった。その代わりに、力強い微笑で頷く。

「……そうだな。俺は、お前ほどエリナと親しいわけじゃないが、あいつは真面目で誠実なメイドだと思ってる。その真面目なメイドが、悪辣な策略で処刑されるなんて、あっちゃいけないことだ。大公家の名誉にかけて、なんとかしなきゃな。薬材商人の調査、俺も全面的に手伝うよ」

「気持ちは凄く嬉しいですけど、正門の警備はいいんですか?」

「部下に理由を話して、門番を変わってもらうよ。しばらくの間は、昼間から町に繰り出していた馬鹿な放蕩息子の時代に戻るさ」

「馬鹿な放蕩息子は、他人のために薬材商人を調査したりしませんよ。……ありがとうございます、フレッド様。私一人じゃ、領内の薬材商人の居場所を把握するだけでも一苦労ですから、町に詳しいフレッド様がいてくれて、本当に頼もしいです」

「へえ。いつも生意気なお前に、これだけ素直に感謝してもらえるなら、無茶な取り組みに挑戦してみる価値もあるってもんだな」

「すぐ軽口を叩くんですから」

 しかしその軽口が、今日はとても頼もしかった。





 あらかじめ覚悟はしていたが、フレッド様の言った通り、薬材商人の調査は簡単ではなかった。その日は、めぼしい商人をリストアップするだけで日が暮れてしまい。このペースでは、あと数日のうちにアマンダが取引したであろう商人を特定するのはまず不可能であると思い知らされる。

 フレッド様と別れ、自室に帰る途中で、私は一人つぶやいた。

「とてもじゃないけど、全部の商人をしらみつぶしに調査してたんじゃ間に合わない……。せめて、調査対象を十分の一程度に絞り込めれば何とかなるんだけど……」

 そうこうしているうちに自室に戻ってきた。部屋の中では、相変わらず体調の悪そうなローラと、まったくいつも通りのアマンダがいた。ただ、いつもと違うのは、最近はずっと私のことを無視していたアマンダが、つかつかと近寄って来て、私を詰り始めたことだ。
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