義妹の身代わりに売られた私は大公家で幸せを掴む【完結】

小平ニコ

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第59話

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「わ、わかったわかった。ちょっと落ち着けよ」

 興奮気味の私をなだめるように両手を出しながら、フレッド様は苦笑する。そんなフレッド様のそばに、私兵の一人がやって来て何やら耳打ちし、またすぐに行ってしまった。

 その耳打ちで、フレッド様の表情が少し厳しくなったことから察するに、あまり良い報告ではなかったのだろう。フレッド様はちらりと私の方を見て、小さくため息を漏らし、残念そうに言う。

「ついさっきまで、父上の近衛がエリナの部屋を調査していてな。棚から、父上が飲まされたのと同じ毒薬が出てきたそうだ」

 私はぎょっとして、先程よりもさらに大きな声を出す。

「ちょ、ちょっと待ってください! そんな馬鹿なことってないですよ! だって、証拠の毒をこれ見よがしに棚に残しておくなんて……」

「ああ。どんな楽天家でも、使い終わった毒を後生大事に棚にしまっておくうっかりさんはいないだろう。……誰がやってるのか知らないが、謀略の加減ってものを知らない奴だな。エリナに罪を押し付けるためのお膳立てがあまりにも整いすぎて、逆にあやしくなってるのに気づかないもんかね」

「これなら、皆おかしいって思って、エリナさんの濡れ衣が晴れないでしょうか?」

「どうかな……。どちらかと言えばエリナに好意的な俺でも、父上に毒を盛る動機はあると思ってたし、たった今、お前から熱弁を振るわれなければ、第三者がエリナを陥れようとしていることに、それほど疑いは持たなかったかもしれない。エリナに悪感情を持っている者たちなら、なおさらだろう」

「じゃ、じゃあ……」

「ああ。案外、ハッキリした証拠が出たと太鼓判を押して、エリナを投獄しちまうかもな。ただ、近衛の中にはさすがに謀略を疑う者も出るだろうし、何より、父上が内心ではエリナのことを信じたがってるようだからな。もう少し調査はするだろう」

「近衛の方が、真犯人を見つけてくれるといいんですけど……」

「それは難しいだろうな。近衛は探偵じゃないし。俺が思うに、この真犯人は浅はかだけど、ある意味優秀でもあるんだよな。料理に厳しく気を配っているエリナの目を盗んで毒を盛ったり、屋敷内がゴタゴタしてる隙に、エリナの部屋に侵入して偽証拠の毒を置いてきたり、行動力と度胸がある。簡単には尻尾を掴ませないだろう」

「もうっ。エリナさんを陥れた悪人を褒めないでください。……あの、フレッド様は誰が真犯人だと思います?」

「そりゃ、エリナに恨みがある奴だろうな。そして、エリナがいなくなることで得をする奴でもあるだろう。こういうのは、罪を着せられた人間と利害が対立してる奴が真犯人だと相場が決まってるんだ。普通に考えるならな」
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