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第34話

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 アマンダの性格を考えると、私にどんな慰めの言葉をかけられても、怒り、傷つき、プライドを損なうだけだろう。こういう時には何もしないのが、むしろ思いやりがある行動だと思う。私とローラは互いに無言で頷き、その日はそのまま静かに眠りについた。





 次の日から、アマンダの口数が減った。ちょっとやりとりしただけでは、今までとそれほど違いがないように感じるが、以前は色々と不満を言いながらも、自分の輝かしい未来を疑っておらず、陽気なところがあった。だが今のアマンダからは、そういうポジティブなエネルギーを少しも感じないのだ。

 その代わりに増したのがネガティブなエネルギーである。もともと攻撃的で、先輩に対しても喧嘩腰ではあったが、一応前は言うことを聞いていただけ良かった。今のアマンダは先輩の指示を無視することなど当たり前で、咎められても「だから何?」という態度である。

 なんというか、もう何もかもどうでも良くなってやさぐれている――そんな感じだった。自信家の野心家が、一度の挫折でこうも腐ってしまうとは。表面上強気な人ほど、内面は案外脆いのかもしれない。

 攻撃的な要素を残したまま、陰気かつ制御不能になったアマンダを、先輩たちは相手にしなくなった。私も、ローラも、正直言って今のアマンダとは関わりたくなかった。いや、前から仲は悪かったのだが、それでも同じ境遇故に、一応仲間意識的なものはあった。だが、その仲間意識も、今はもう無に等しい。

 そんなアマンダに一人だけ手を差し伸べたのが、上級メイドのミシェルさんである。誰彼構わず愚痴を吐き出し、皆から忌避されていたアマンダに寄り添い、「つらかったね」「それは悲しいね」と親身になって話を聞いてあげたのだ。

 もともとミシェルさんだけには懐いていたアマンダだが、精神的に参っているところに優しい言葉をかけてもらえたのがよほど嬉しかったのか、それ以降はもうミシェルさんにべったりになった。

 そして、ミシェルさんの指示ならばサボらず真面目に仕事をこなすようになったので、触れるものすべて傷つける人間凶器のようになっていたアマンダを見事に更生させたミシェルさんを、皆が褒め称えたのだった。





「へえ。それで、あの金髪の娘。一応は真面目に働くようになったわけだ」

 もう一人の上級メイド――エリナさんの指示で、正門にお弁当を配達しにきた私は、門番のフレッド様と雑談になり、ミシェルさんがアマンダを更生させた話をした。フレッド様は右手でサンドイッチをつまみ、左手で紅茶を飲みながら、それほど興味もなさそうに頷く。

 この前は、もっと意欲的に私の話を聞いてくれていたように感じたので、なんとなく、つまらない話をしてしまったのかなという気持ちになり、私は尋ねた。

「あまり面白くない話でしたか?」
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