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第23話

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「俺は、今でこそまともな振る舞いができているが、何年か前は、自分の立場も考えず遊び惚けていてね。本当に、酷いもんだったよ。聞いたことないか? 大公家の放蕩息子の噂を」

 私は、首を左右に振った。ちょうどその頃、本当のお母様が無くなり、家に継母のグロリアとブレアナがやって来て、激変する家庭環境に余裕をなくしていたから、いくら大公家とはいえ、よそ様のおうちの噂話に関心を持つ暇などまったくなかったのだ。

 フレッド様は、ホッとしたように微笑して話を続ける。

「お前が知らなくて良かったよ。本当に恥ずかしい話ばかりだからな。……それで、俺の放蕩三昧に激怒した父上は、大公家の長男として、いずれは家を継ぐ資格をいったん凍結し、俺を半分勘当することにしたんだ。だから今の俺は、半分貴族で半分平民。で、半分大公家の長男で、半分私兵の長という感じになってるわけだ」

「つまり分かりやすく言うと、やりたい放題をしていた罰として、私兵の長をさせられてるってことですか?」

「そう。うちでは私兵の長が門番も兼任するから、普段はずっと門の前で待機だ。じっとしてるのが苦手で、いつもフラフラと遊び歩いてた俺にとっては最高の罰だよ。もっとも、おかげで少しはまともになれたけどね。で、領民から要請があった際は、こうして魔物退治にも赴くってわけさ」

「なるほど、納得がいきました。でも、門番はともかく、魔物退治は危なくないですか? 実際に負傷者も出ていますし、フレッド様の身に何かあったら、大公様だって……」

 フレッド様は少し影の差した顔で、どこか遠くを見ながら言う。

「……あるいは、俺の身に何かあることを父上は望んでいるのかもな。どうしようもない馬鹿息子でも、領民のために魔物退治に出て、そこで死ねば美談になる。それで、失われし大公家の名誉もいくらか回復するだろう。なかなかドラマチックな筋書きだよな」

「そんな……。いくらなんでも、実の父親がそんなことを思うなんて……」

 あるはずがないと言ってあげたかったが、実の父親に見捨てられたも同然の私には、本心から『そんなことあり得ない』と言うことはできなかった。黙ってしまった私を見て、フレッド様は余計なことを言ってしまったという感じで、努めて明るく振る舞う。

「おっと、悪い悪い。愚痴っぽくなってしまった。言うほど今の状況を悲観しちゃいないんだ。部下たちはみんな、こんな俺にも良くしてくれるしな。彼らからは誠意と責任感、そして男としての生き方を学んだよ。さあ、そろそろ休憩時間も終わりだ。ブレアナ、お前も屋敷に戻った方がいい。エリナに叱られるぞ」
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