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第12話

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 随分と義理堅い人らしい。これから門の中に入ってしまったら、門の外にいるフレッドと話す機会がもう一度あるかどうかはわからないが、彼の気持ち自体は嬉しかったので、私はぺこりと頭を下げた。

 フレッドは頷き、それからジェームスに向かって「三人とも問題なし」と告げる。それ以外の結果など最初から考えていなかったかのように、ジェームスは特に何も言わず、フレッドともう目を合わせることもなく、私、ローラ、アマンダに向かって言った。

「さあ、三人とも。急いで馬車に戻ってください。今日のうちに覚えておかなければならないことは山ほどあります。いつまでもこんなところに留まっているわけにはいきません」

 そして私たちは馬車に戻ると、大公家の広大な敷地内に入り、下働きの者たちが使う建物に連れていかれた。それから速やかにメイドの制服を支給され、休む間もなく仕事の基本を叩き込まれた。

 ……少し、いや、かなり意外だった。大公様の意向で招集されたのだから、夜伽を命じられるかどうかは別として、すぐに大公様の元へ呼ばれて、顔くらいは見せなければならないのだろうと思っていたのに、その日は本当に、徹底的にメイドとしての訓練を受けさせられただけだったのである。

 まあ、ジェームスも馬車の中で『普段はメイドとしての仕事をこなし、大公様からお呼びがかかったときは寝室に参上しなさい』と言っていたので、普段は本当に、大公家のいちメイドとして真剣に働けということなのだろう。

 それから数日間。初日と大した違いもなく、私たち三人はひたすら優れたメイドになるための訓練に励む毎日だった。

 先輩メイドたちの指導は厳しかったが、礼法や調理など、かなり高等な内容を習うことができるので、実りは多かった。案外、のんびりと学校に通っているより充実しているかもしれない。願わくば、この"普段"がずっと続いてほしいものである。





 大公家に連れてこられてから五日後。アマンダが『いつまでメイドの真似事なんてさせられるのよ。大公様って、もしかして私たちを集めてきたことを忘れてるんじゃないの?』と文句を言い始めた頃、初めて寝室に参上するよう命じられた。

 といっても、来るように言われたのはただ一人。寝室に呼ばれるのを待ち焦がれていたアマンダでも、このままメイドとしての日常が続けばいいと思っていた私でもない。あの大人しいローラだった。

 初対面の時から気の弱いローラを見下しているアマンダは、自分より先にローラが呼ばれた事実に怒り心頭で、思いっきり食って掛かった。

「ふざけんじゃないわよ。なんでグズのあんたが一番に呼ばれるのよ。とろくさくて、メイドの仕事も時間をかけなきゃまともにこなせないくせに」
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