私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ

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第178話

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「そうですか……」

 何事にも完璧を求め、豪勢な暮らしが生きがいであったラグララ。そんな彼女にとって、贅沢などできるはずもない刑務所で、他の受刑者たちと過酷な共同生活を送るのは、どんな拷問よりも苦しく、厳しく、彼女のプライドを徹底的に破壊するだろう。

 しかし、すべてはラグララ自身の悪辣な行動が招いたこと。刑務所での暮らしを通してそれに気が付き、少しは反省してくれるといいんだけど……

「それに加えて、ラグララの中央裁判所での傍若無人な振る舞いは、傍聴人たちによって、国中の語り草となるだろう。王都の人々は噂好きで、なおかつ、一度広まった噂を、そう簡単には忘れない。いつの日か刑務所を出たところで、もはやラグララは、この国では生きていくことはできんだろうな」

 アルベルト様はそう言ってラグララの話を締めくくると、私に向き直る。
 それから、小さく首を傾げ、問いかけてくる。

「ところで、レベッカ。ラグララが喚いていたが、お前たちのお父上が、元宮廷魔導師のサイラス・スレイン殿というのは、本当の話なのか?」

 私は、黙った。答えたくないわけではなく、もったいをつけているわけでもない。……私には、答えられない質問だから、黙るしかなかったのだ。

 しかし、アルベルト様に問われて、いつまでも口をつぐんでいるわけにもいかない。私は正直に、自分の気持ちを吐露する。

「……お恥ずかしいことですが、私には、わからないんです。私、父のことを、ほとんど知りませんから。父の名前さえも、今日、初めて知りました」

 実の父親の名前を、今日になって初めて知ったという私に、さすがに奇異の視線を向けるアルベルト様。当然だろう。どんなに家族関係が希薄な親子でも、親の名前を知らないなんてことは、普通あり得ない。

 だが、本当のことだ。

 母ヨーレリーは、私にはなるべく、父のことを教えたくないようだった。一度、父の写真を見ていたところをヨーレリーに見つかったときは、もの凄い剣幕で怒鳴られた。『お前があの人の顔を見るな!』って。
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