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第176話
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私は、ラグララを見下ろしながら、言う。
「ラグララ、私、ずっと不思議だった。誰よりも優秀なあなたが、些細なきっかけて激昂し、自分を不快にさせた相手を徹底的に痛めつけるのが。色んな才能に恵まれて、心にも余裕があるはずなのに、どうして、あんな酷いことをするんだろうって、いつも思ってた。でも、今なら何となく、その理由がわかる」
「うぅ……ううぅ……」
「あなたは、自分を完璧だと妄信するあまり、自分のプライドにつけられた、ほんの小さな傷だって許せないのね。だから、自分を傷つけたものを、物理的、社会的に抹消することで、『傷そのもの』をなかったことにしようとする。まるで、自分が完璧でなくなることを恐れているみたいに」
「うー……ううぅー……」
「なんて幼稚な人。完璧な人間なんて、どこにもいないのよ。皆、それを分かってる。分かったうえで、それでも一生懸命生きてる。でもあなたは、『自分が完璧だ』っていう幼稚な妄想から、いつまでたっても抜け出せなかった。あなたみたいな人のせいで、ミアさんも、パティも傷ついた。今度はあなたが傷つき、罪を償う番よ」
「ううぅぅぅぅ……」
ラグララは、再び宮廷魔導師たちに拘束される。
もう二度と凶行に走ることがないように、手も足も、魔法でガッチリと固められてしまった。ラグララはもう、指一本だって、自由に動かすことができない。その姿は、彼女の今後の人生を暗示しているかのようだった。
・
・
・
裁判が終わり、私、アルベルト様、パティは、馬車に揺られ、帰路についている。ラグララの魔法のせいで著しく体力を消耗したパティだが、驚くべきことに、骨は一本も折れていなかった。
私の隣に座るパティが、やや掠れた声で言葉を紡いでいく。
「レベッカが治癒魔法をかけ続けてくれたおかげっす。あれがなかったら、宮廷魔導師の人たちが来てくれるまで、とても持たなかったと思うっす」
まだまだ半人前の治癒魔法だと思うが、それでもパティの助けになったのなら、一生懸命に練習した甲斐があるというものだ。私は、小さく頷きながら言う。
「ほんの少しでもあなたの苦痛を和らげることができたなら、良かったわ」
「ラグララ、私、ずっと不思議だった。誰よりも優秀なあなたが、些細なきっかけて激昂し、自分を不快にさせた相手を徹底的に痛めつけるのが。色んな才能に恵まれて、心にも余裕があるはずなのに、どうして、あんな酷いことをするんだろうって、いつも思ってた。でも、今なら何となく、その理由がわかる」
「うぅ……ううぅ……」
「あなたは、自分を完璧だと妄信するあまり、自分のプライドにつけられた、ほんの小さな傷だって許せないのね。だから、自分を傷つけたものを、物理的、社会的に抹消することで、『傷そのもの』をなかったことにしようとする。まるで、自分が完璧でなくなることを恐れているみたいに」
「うー……ううぅー……」
「なんて幼稚な人。完璧な人間なんて、どこにもいないのよ。皆、それを分かってる。分かったうえで、それでも一生懸命生きてる。でもあなたは、『自分が完璧だ』っていう幼稚な妄想から、いつまでたっても抜け出せなかった。あなたみたいな人のせいで、ミアさんも、パティも傷ついた。今度はあなたが傷つき、罪を償う番よ」
「ううぅぅぅぅ……」
ラグララは、再び宮廷魔導師たちに拘束される。
もう二度と凶行に走ることがないように、手も足も、魔法でガッチリと固められてしまった。ラグララはもう、指一本だって、自由に動かすことができない。その姿は、彼女の今後の人生を暗示しているかのようだった。
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裁判が終わり、私、アルベルト様、パティは、馬車に揺られ、帰路についている。ラグララの魔法のせいで著しく体力を消耗したパティだが、驚くべきことに、骨は一本も折れていなかった。
私の隣に座るパティが、やや掠れた声で言葉を紡いでいく。
「レベッカが治癒魔法をかけ続けてくれたおかげっす。あれがなかったら、宮廷魔導師の人たちが来てくれるまで、とても持たなかったと思うっす」
まだまだ半人前の治癒魔法だと思うが、それでもパティの助けになったのなら、一生懸命に練習した甲斐があるというものだ。私は、小さく頷きながら言う。
「ほんの少しでもあなたの苦痛を和らげることができたなら、良かったわ」
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