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第113話

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「改めて口にするのは恥ずかしいし、情けないけど、結局はね、私の心にあった、あなたに対する嫉妬心が、すべての元凶なのよ。……いえ、公爵様に仕える一使用人でありながら、主に対し、分をわきまえない思慕の情を抱いたこと、それが、そもそもの罪だったのかもしれない」

「セレーナさん……」

「そして、私の罪はもう一つ。これも、とても大きな罪よ。私はあろうことか、公爵様のお部屋に刃物を持ち込み、場合によっては、公爵様をも傷つけていたかもしれない。あなたや公爵様が私を許してくれても、私は、自分で自分のしたことが許せない。すべてを忘れて、のうのうと上級メイドの仕事を続けていくことなんてできないわ」

「それって、どういう意味ですか……?」

「レベッカ、私ね、今日は復職するために顔を見せたわけじゃないの。他の使用人たちに私が任されていた役目の引き継ぎをして、公爵様にお暇乞いをするために来たのよ」

 お暇乞い――
 それはつまり、このお屋敷での仕事を辞めるということだ。

 私は、ほとんど叫びに近い声を上げた。

「どうして!?」

 私とは正反対に、セレーナさんはとても落ち着いていた。

「理由は、今言った通りよ。私は、自分で自分のしたことが許せない。だから、自分の手で、けじめをつけるの。夕方までにはすべての引き継ぎを終わらせて、このお屋敷を去るわ」

 そんな馬鹿な。
 どうしても、納得がいかない。
 気がつけば私は、セレーナさんに縋り付いていた。

「そんなの、おかしいです! 悪いのは、セレーナさんの傷ついた心に付け込んだアデットであり、アデットに報復を依頼するほどキャリーを怒らせた私なのに! セレーナさんは悪くない! セレーナさんがこのお屋敷を去るなんて、絶対におかしいですよ!」

「落ち着いて、レベッカ。そんなに怒鳴ったら、他の使用人が、何事かと心配して駆けつけてくるわ」

「あっ、す、すいません……」

 シュンとなった私の肩を、セレーナさんはそっと抱き寄せた。
 思わず泣きたくなるほど、優しい動作だった。

「レベッカ、あなたには、このお屋敷での振る舞い方や、仕事の手順を色々教えたわね。でも、まだ教えていないことがあったわ。一番、大切なこと。それは、自分の任された立場に対する、責任よ」

「責任……」
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