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第71話
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しかし、今日がいつもと同じとは限らないので、もしかしたら、家族がそろって家にいることもあり得る。……状況次第では、再びお母様と対面することになるかもしれないと思うと、自然と体が硬くなった。
悔しい。
この前、ミッチェルさんに、『あの人たちとの縁切りは、自分の力でやらなければならないと思っています』だなんて偉そうなことをほざいたくせに、私の心と体に刷り込まれたトラウマが、いまだにあの人たちへの恐怖を呼び起こそうとしている。
私はその恐怖を体の外へ追いやってしまうように、大きく息を吐き出した。
吸っては吐く。
吸っては吐く。
それを三回繰り返したころ。
馬が歩みを止めた。
ついに、実家に到着したのである。
大通りから少し離れたところにある、閑静な高級住宅街。
その中でも、他の家から距離を置いた角地に、私の実家は堂々とたっていた。
馬上から家を眺めたアスラさんが、少々目を丸くして、言う。
「へぇ。意外……って言うのも失礼だけど、凄く立派なおうちじゃない。普通、16歳の子供を奉公に出すような家は、貧しい生活をしていることが多いから、まさか、あなたの実家が、こんな豪邸だとは思わなかったわ」
そしてアスラさんは軽やかに馬から降り、私が降りるのを手助けしてくれた。
アスラさんに腰を抱えられながら、私は言葉を返していく。
「この家は、今は亡き父が建てたものだそうです。詳しくは知りませんが、父は、国の要職についていたそうなので、一般の家庭に比べて、かなり所得が多かったらしいです」
さっきから『そうです』『らしいです』と、自分の父親に関することを推定でしか語れないのは実に恥ずかしいが、お母様が、私に対してお父様のことを話して聞かせてくれることなどなかったので、お母様と他の姉妹たちの会話から得られた情報を述べることしか、私にはできなかった。
「そうなんだ。じゃあ、あなた、実はお嬢様だったのね」
「お嬢様だなんて、そんな……」
あるいは他の姉妹たちなら、『お嬢様』と呼んでも差し支えないだろう。
立派な家の中で、子供の頃から、何不自由ない生活をしているのだから。
悔しい。
この前、ミッチェルさんに、『あの人たちとの縁切りは、自分の力でやらなければならないと思っています』だなんて偉そうなことをほざいたくせに、私の心と体に刷り込まれたトラウマが、いまだにあの人たちへの恐怖を呼び起こそうとしている。
私はその恐怖を体の外へ追いやってしまうように、大きく息を吐き出した。
吸っては吐く。
吸っては吐く。
それを三回繰り返したころ。
馬が歩みを止めた。
ついに、実家に到着したのである。
大通りから少し離れたところにある、閑静な高級住宅街。
その中でも、他の家から距離を置いた角地に、私の実家は堂々とたっていた。
馬上から家を眺めたアスラさんが、少々目を丸くして、言う。
「へぇ。意外……って言うのも失礼だけど、凄く立派なおうちじゃない。普通、16歳の子供を奉公に出すような家は、貧しい生活をしていることが多いから、まさか、あなたの実家が、こんな豪邸だとは思わなかったわ」
そしてアスラさんは軽やかに馬から降り、私が降りるのを手助けしてくれた。
アスラさんに腰を抱えられながら、私は言葉を返していく。
「この家は、今は亡き父が建てたものだそうです。詳しくは知りませんが、父は、国の要職についていたそうなので、一般の家庭に比べて、かなり所得が多かったらしいです」
さっきから『そうです』『らしいです』と、自分の父親に関することを推定でしか語れないのは実に恥ずかしいが、お母様が、私に対してお父様のことを話して聞かせてくれることなどなかったので、お母様と他の姉妹たちの会話から得られた情報を述べることしか、私にはできなかった。
「そうなんだ。じゃあ、あなた、実はお嬢様だったのね」
「お嬢様だなんて、そんな……」
あるいは他の姉妹たちなら、『お嬢様』と呼んでも差し支えないだろう。
立派な家の中で、子供の頃から、何不自由ない生活をしているのだから。
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