私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ

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第46話

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「さすがアスラさんっす。図々しいことを平然と言ってのける度胸と、何故かそれで上手くいってしまう天然の魅力、うらやましいっす。自分がアスラさんみたいなことをメイド長に言ったら、絶対に『反省の気持ちが足りない』って叱られるっす」

「図々しいって言うけど、セレーナの方から手を出してきたのは事実でしょ? ああ、もうっ、今思い出しても、あいつ、頭にくるわ。言うに事欠いて『けがらわしい』って、ほんと、何様のつもりよっ」

 アスラさんはそう言い、ホワイトブレッドをがぶりと貪った。
 セレーナさんに対する怒りは、まだまだ収まっていないらしい。

 そんなアスラさんに、あっという間にパンを平らげてしまったパティがしれっと言う。

「でも、こう言っちゃなんっすけど、アスラさんも相当に、セレーナさんのことを煽ってたっす」

「うっ……」

「だから、さっきの乱闘が始まったのは、100パーセントセレーナさんのせいってわけでもないと思うっす。誰でも、絶対に言われたくないことってあるっす。たぶんアスラさんは、それを言っちゃったんだと思うっす」

「んっ……」

 アスラさんは、パティの言うことに反論しなかった。……きっと、アスラさん自身も、セレーナさんに対して言いすぎたと思っているのだろう。根は優しい人だから。

 しばらくの間、無言で食事をするアスラさん。
 そして、パンがなくなってしまってから、再び口を開く。

「……まっ、そうね。確かに、言いすぎだったかもね。特に、公爵様にお茶を出す役目を、レベッカと交代させられたことを持ち出したのは、ちょっと……いや、かなり陰湿だったわね。反省するわ」

 そこで私は、アスラさんに問いかけた。

「あの、アスラさん。やっぱりセレーナさんは、私がお役目を取ってしまったことを、気にされているでしょうか?」

「んん~……まあねぇ~、そりゃ、これまでずっと、あの子が公爵様の身の回りのお世話を任されてきて、ただの一度もミスをしなかったのに、いきなり新入りと役目をかえられたら、そりゃ、ショックだとは思うわよ。あの子、超ウルトラ完璧主義だから、なおさらね」

「そう……ですか。それは、そうですよね……」
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