私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ

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第37話(キャリー視点)

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 魔術具に囲まれ、呪いの本を読む、長い黒髪の女――
 不気味で、おどろおどろしいその様子は、魔女の老婆を思わせる。

 まだギリギリ十代なのに、この風貌。
 同じ女として、こうはなりたくないわね……

 おっと。
 ここに来た目的を忘れていたわ。

 あたしはアデットお姉様に近寄り、今日あったことを、滔々と語り始めた。お姉様は、あたしの話を聞いているのかいないのか、ゆっくりと本のページをめくりながら、時折『怨』だの『殺』だの、気味の悪い言葉を吐き出している。

 そして、あたしの話があらかた終わると、アデットお姉様は、突然首を120度回転させて、こっちをギョロリと見た。

 び、びっくりした……
 人間の首って、こんなに回るものなのね。

 冷や汗を垂らすあたしをじっとりねっとりと見て、アデットお姉様は奇声を上げる。

「きひゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 うう……
 これよ……これこれ。

 突然叫び出すから、あんまり近寄りたくないのよ、この人に。しかし、アデットお姉様はちゃんとあたしの話を聞いてくれていたらしく、何度か頷きながら、こう言った。

「なるほど、なるほどぉ。つまりぃ、レベッカに仕返しがしたいわけだねぇ」

「そ、そう! そうなのよ! でも、あたしだけじゃなんにもできないから、アデットお姉様に力を貸し……」

「きぃやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 だ、だからなんで叫ぶのよ……
 アデットお姉様といると、精神がすり減るわ。

 早いところ、話をまとめてここから出たい。

 そう思ったあたしは、いまだに叫び続けているお姉様の肩を揺すり、話の続きを促した。するとお姉様は正気に戻り、意外にも流暢に言葉を紡いでいく。

「オッケーだよぉ。私ぃ、別にぃ、レベッカのことも、あんたのことも、好きじゃないけどぉ、最近超ヒマだしぃ、ちょうど、試してみたい呪術があるんだよねぇ。ちょうどいいから、実験がてら、レベッカを不幸にしてやるよぉ」

 一応はあたしのことを可愛がってくれてると思っていたので、『あんたのこと好きじゃない』と言われ、地味にショックである。

 しかし、これで話はついた。

 ふふ。
 ふふふ。

 今に見てなさい、レベッカ。魔女……じゃなくて、アデットお姉様に目をつけられたんだから、あんたはもうおしまいよ。
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