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第33話
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そんな私を見て、公爵様も、嬉しそうに微笑む。
「やっと笑ってくれたな。お前はこの部屋に来るといつも緊張して、唇を真一文字に結んでいるが、その方が可愛いぞ」
「可愛いだなんて、そんな、からかわないでください……」
「別にからかってはいない。私は、思ったことを正直に言っただけだ。そもそも私は、人をからかったり、嘘をついたりするようなことは嫌いだからな」
公爵様は美しい瞳で私を見据え、こともなげに言った。それで私は、凄く恥ずかしくなり、顔も熱くなって、その熱をどこかに逃がそうとするように、慌てて言葉を発していく。
「あ、あの、公爵様。以前から、お聞きしたいことがあったのですが……」
「なんだ?」
「夜、公爵様にお茶をお出しするのは、上級メイドのセレーナさんのお役目だったはずです。……セレーナさんの仕事は、完璧です。どう考えても、セレーナさんの方が、私より優れています。公爵様が飲みたいとおっしゃる濃いお茶も、セレーナさんに頼めば、きっと、私より上手に淹れることができると思います」
「ふむ……」
「それなのに、どうして私を指名して、お部屋に呼んでくださるのですか?」
公爵様は、手に持っていたティーカップをテーブルに置き、私に向き直ると、やや真剣な顔で言う。
「こうして、毎晩呼ばれるのは嫌だったか?」
私は、自分の頭がはずれて飛んで行ってしまうのではないかと思うほど激しく首を左右に振り、否定した。
「そんなことありません! 私、こうやって毎晩、公爵様のお話し相手になれること、とても嬉しくて、光栄に思っています。でも、どうしても不思議で、仕方ないんです。私よりセレーナさんの方が優秀で、美人で、完璧なのに……」
「『セレーナは完璧』か……そうだな、確かに、うちにいる全使用人の中で、あれほど見事なメイドは他にいないだろう。家柄も良く、古今東西の礼法に通じ、あらゆることを完璧にこなす。メイド長もそろそろ定年が近いし、この屋敷のメイドを統括しているのは、実質セレーナであると言っても過言ではあるまい」
「はい。セレーナさんは、まだ二十歳過ぎなのに、堂々としていて、身分の高いお客様をもてなすときの所作も、まさに完璧です。私、セレーナさんに憧れているんです」
「やっと笑ってくれたな。お前はこの部屋に来るといつも緊張して、唇を真一文字に結んでいるが、その方が可愛いぞ」
「可愛いだなんて、そんな、からかわないでください……」
「別にからかってはいない。私は、思ったことを正直に言っただけだ。そもそも私は、人をからかったり、嘘をついたりするようなことは嫌いだからな」
公爵様は美しい瞳で私を見据え、こともなげに言った。それで私は、凄く恥ずかしくなり、顔も熱くなって、その熱をどこかに逃がそうとするように、慌てて言葉を発していく。
「あ、あの、公爵様。以前から、お聞きしたいことがあったのですが……」
「なんだ?」
「夜、公爵様にお茶をお出しするのは、上級メイドのセレーナさんのお役目だったはずです。……セレーナさんの仕事は、完璧です。どう考えても、セレーナさんの方が、私より優れています。公爵様が飲みたいとおっしゃる濃いお茶も、セレーナさんに頼めば、きっと、私より上手に淹れることができると思います」
「ふむ……」
「それなのに、どうして私を指名して、お部屋に呼んでくださるのですか?」
公爵様は、手に持っていたティーカップをテーブルに置き、私に向き直ると、やや真剣な顔で言う。
「こうして、毎晩呼ばれるのは嫌だったか?」
私は、自分の頭がはずれて飛んで行ってしまうのではないかと思うほど激しく首を左右に振り、否定した。
「そんなことありません! 私、こうやって毎晩、公爵様のお話し相手になれること、とても嬉しくて、光栄に思っています。でも、どうしても不思議で、仕方ないんです。私よりセレーナさんの方が優秀で、美人で、完璧なのに……」
「『セレーナは完璧』か……そうだな、確かに、うちにいる全使用人の中で、あれほど見事なメイドは他にいないだろう。家柄も良く、古今東西の礼法に通じ、あらゆることを完璧にこなす。メイド長もそろそろ定年が近いし、この屋敷のメイドを統括しているのは、実質セレーナであると言っても過言ではあるまい」
「はい。セレーナさんは、まだ二十歳過ぎなのに、堂々としていて、身分の高いお客様をもてなすときの所作も、まさに完璧です。私、セレーナさんに憧れているんです」
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