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第26話
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「うるさいですって? 何? 今の、あんたが言ったの? 嘘でしょ? いつも言われっぱなしの、ノロマのレベッカが、このあたしに言い返したってわけ? こりゃ驚きだわ。今日は大地震でも起きるんじゃないかしら」
「『このあたし』か……ふふっ」
「な、なによ、なに笑ってるのよ」
「いえ、たかが15歳の、何者でもない小娘が、よくもそんなふうに、自分のことを言えるものねと思って」
「なんですってぇ……」
「もちろん世の中には、15歳でも凄い人はたくさんいるわ。運動能力が高かったり、とても頭が良かったり、凄い人は、若い頃から特別な才能を発揮してる。そういう人たちなら、自分を『この私』って言いたくなるような自負心があるのもわかるわ。でもあなたは、違うでしょ? 足は遅いし、背も低い。頭だって、お世辞にも良いとは言えない」
「な、な、な……」
「勘違いしないでね。私、特別な才能がある人だけが偉いって言ってるわけじゃないのよ。才能なんかなくたって、誠実で、毎日頑張ってる人は、それだけで凄いと思う。でもあなたは違う。なまけ者のあなたにできるのは、他人を見下し、嘲笑うことだけ。恥ずかしくないの? 他人をいくら下に見たって、あなたが上になるわけじゃないのよ?」
自分でも驚くほど、口がよく回った。これはきっと、毎夜、公爵様のお話の相手を務めさせていただいているからだろう。博識で聡明な公爵様のお言葉が、私の中で生きており、それが、力を貸してくれているような気分だった。
「う……ぐ……うぅ……!」
キャリーは、私の言葉に何も言い返せず、怒りで顔を真っ赤にして、唸った。
その顔は、一ヶ月前、私の言葉で激怒したお母様にそっくりだった。
私は、さらにキャリーを攻撃した。
自分の中にある卑屈さを、徹底的に壊してしまおうとするように。
そう。私はキャリーをやり込めることで、私を縛る『家族』という呪いから自由になろうとしていたのだ。
「しかも、赤の他人と直接争うのは怖いから、あなたが虐められるのは、気の弱い姉の私だけ。お母様や他の姉妹には、反抗することすらできない。そして、一方的に攻撃できる相手だったはずの私が、こうやって言い返してきたら、もうだんまり。お互いに言い争う覚悟すらないのなら、これからは壁にでも向かって悪口を吐いていなさい」
「『このあたし』か……ふふっ」
「な、なによ、なに笑ってるのよ」
「いえ、たかが15歳の、何者でもない小娘が、よくもそんなふうに、自分のことを言えるものねと思って」
「なんですってぇ……」
「もちろん世の中には、15歳でも凄い人はたくさんいるわ。運動能力が高かったり、とても頭が良かったり、凄い人は、若い頃から特別な才能を発揮してる。そういう人たちなら、自分を『この私』って言いたくなるような自負心があるのもわかるわ。でもあなたは、違うでしょ? 足は遅いし、背も低い。頭だって、お世辞にも良いとは言えない」
「な、な、な……」
「勘違いしないでね。私、特別な才能がある人だけが偉いって言ってるわけじゃないのよ。才能なんかなくたって、誠実で、毎日頑張ってる人は、それだけで凄いと思う。でもあなたは違う。なまけ者のあなたにできるのは、他人を見下し、嘲笑うことだけ。恥ずかしくないの? 他人をいくら下に見たって、あなたが上になるわけじゃないのよ?」
自分でも驚くほど、口がよく回った。これはきっと、毎夜、公爵様のお話の相手を務めさせていただいているからだろう。博識で聡明な公爵様のお言葉が、私の中で生きており、それが、力を貸してくれているような気分だった。
「う……ぐ……うぅ……!」
キャリーは、私の言葉に何も言い返せず、怒りで顔を真っ赤にして、唸った。
その顔は、一ヶ月前、私の言葉で激怒したお母様にそっくりだった。
私は、さらにキャリーを攻撃した。
自分の中にある卑屈さを、徹底的に壊してしまおうとするように。
そう。私はキャリーをやり込めることで、私を縛る『家族』という呪いから自由になろうとしていたのだ。
「しかも、赤の他人と直接争うのは怖いから、あなたが虐められるのは、気の弱い姉の私だけ。お母様や他の姉妹には、反抗することすらできない。そして、一方的に攻撃できる相手だったはずの私が、こうやって言い返してきたら、もうだんまり。お互いに言い争う覚悟すらないのなら、これからは壁にでも向かって悪口を吐いていなさい」
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