私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

第２５話

　特にお金を使うことはないし、今の生活で、充分幸せだから？

　それもある。

　トラブルが起こって、今の生活が壊れるのが嫌だから？

　それもある。

　……しかし、今になって、やっと気づいた。
　本当の理由は、もっと別のところにあったのだ。

　私はきっと、いまだに、家族からの愛情を求めていたに違いない。
　どんなに求めても得られなかったものを、どうしても、諦めきれなかったのだ。

　一ヶ月前、もうお母様から愛を乞うのはやめようと決心したのに、それでも、心の奥底では、皆に、私を家族として認めてほしいという気持ちが残っていたのだと思う。

　だから、働いて得たお金を渡せば、もしかしたら皆が、『よく頑張ったね』と褒めてくれるかもしれないと、期待していたのね……

　なんて。

　なんて。

　なんて卑屈な。

　私は、自分で、自分のやっていることに腹が立った。
　無意識のうちに家族に媚を売り、完全なる心の自立を諦めていたなんて。

　これではまるで、ご主人様のご機嫌を伺う、本物の奴隷ではないか。

　そして、思わず足が震えるほどに、恐怖した。奴隷のように扱われ続けた長い年月が、それほどまでに私の心を委縮させていたことに。

　……ふざけないで。

　私はあなたたちの奴隷じゃない。

　奴隷じゃない。

　奴隷じゃない。

　奴隷じゃない！

　そんな私の内心には、まったく気づかず、キャリーは相変わらず汚い言葉を吐き出し続ける。

「あんたは昔からそう。命令すれば言うことは素直に聞くけど、グズでノロマだから、結局役に立たない。そのくせに、目がパッチリしてて、顔だけは綺麗だからムカつくのよね。あはっ、どうせ家の中で奴隷みたいに働いてるだけだから、素敵な男の子と出会うことなんてないし、顔が綺麗でも、何の意味もないけどね。だいたいあんたは……」

　私は奴隷じゃない――

　それを、今から自分自身と、目の前のおぞましい妹に証明する。

　私は、大きくはないが、毅然とした声でキャリーの言葉を遮った。

「うるさい」

　まさか私が言い返してくるとは思ってなかったのか、キャリーは一瞬、驚いたような顔になる。しかし、またすぐ嫌な顔に戻って、顔と同じく、陰湿な言葉を次々と噴出させていく。