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第14話

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 それは、少しも予想していなかった言葉だった。
 私は首を傾げ、問う。

「えっ? どうしてですか?」

 その問いが、セレーナさんの機嫌をさらに悪くしたらしく、セレーナさんは、整った鼻梁に皺をよせ、言う。

「知らないわよ、そんなの。……公爵様にお茶をお出しするのは、いつも私のお役目なのに。って言うか、公爵様が、誰かを指名して、部屋に来るようにおっしゃったのなんて、初めてだわ。あなた、この前、私が『はやり風邪』で休んでた時、公爵様に何かしたわけ?」

 その剣幕に、私は少々圧倒され、たじろぎながら返事をする。

「い、いえ……普通に、お茶をお出ししただけですけど……」

「本当に? 納得いかないわ。普通にお茶をお出ししただけなのに、どうしてあなたが、わざわざ公爵様に指名されるのよ。私はいつだって、完璧に役目を果たしてきたのに、どうして……。やっぱりあなた、公爵様に、い……」

 そこで、セレーナさんは黙った。自分の眉間を、自分で揉むような仕草をして、厳しい表情を緩めた後、私に向かって小さく頭を下げる。

「ごめんなさい、レベッカ。頭に血が上って、すごく失礼なことを言うところだったわ。許してちょうだい。駄目ね、私。『完璧』が聞いて呆れるわ。……それじゃ、お茶を運ぶお役目、お願いね」

 そしてセレーナさんは、行ってしまった。

 ……セレーナさんは、女性の使用人の中で、メイド長に次ぐナンバー2的な存在であり、少しだけ厳しいところはあるものの、決して理不尽な怒りをぶつけてくるような人ではない。だから、そんなセレーナさんに責められ、ちょっとショックだった。

 しかし、さすがと言うか、セレーナさんは自分で自分の感情を制御し、ギリギリのところで心を静め、私と物理的に距離を置くことで、これ以上の諍いになることを避けた。その行動はまさに、尊敬できる、大人の女性の振る舞いである。

 セレーナさんが不快に思うのも無理はない。

 これまで完璧に、公爵様の身の回りのお世話をする役目を果たしてきたのに、公爵様ご自身の指名で、役割が変えられてしまったら、心中穏やかでいられなくて当然だ。

 しかも、セレーナさんの役目を奪ったのは、奉公に来てから、まだ一ヶ月も経っていない小娘だ。色々と疑問に思い、詮索をしたくなる気持ちもわかる。
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