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第49話
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私は、私を庇ってくれたルディに素直にお礼を言い、話をまとめる。
「擁護してくれてありがとう、ルディ。でもやっぱり、幼稚な承認欲求は私の『弱さ』なんだと思う。『私が一番凄い』『広瀬さんよりも凄い』『だから皆で私を褒めて』っていう感情が、絶対に演奏に混ざったはず。もっと無心で演奏していたなら、広瀬さんも、あれほど私を嫌ったりはしなかったと思うんだ」
「そういうのは、伝わるものか?」
「広瀬さんくらい本気で音楽をやってる人なら、絶対にわかるよ。私は、暴力的な演奏で広瀬さんを殴りつけておきながら、勝手に自己嫌悪に陥って、その後は広瀬さんを避けた。二重に最低だよ。……でも、もう逃げない。これからは、真正面から音楽と広瀬さんに向き合う。部活も、明日から参加しようと思ってる」
「そうか。それがこれからの、そなたの戦いなのだな。その覚悟と意思、確かに見届けたぞ。余も覚悟を決めて、余にとっての戦い――ガレスとの決闘に臨まねばな」
「ガレスなんかに負けないでよね。私、ああいう荒っぽくて雄々しい人って苦手。ルディみたいに、柔和で優しい人の方が好きだよ」
言ってから、まるで愛の告白をしたみたいで顔が赤くなるが、ルディはどことなく不満げだった。
「その言い方だと、余が雄々しくないと言っているように聞こえるのだが……」
「雄々しくはないでしょ? 顔立ちだって、可愛い系だし」
「えっ」
「前にも言ったじゃない。最初に会ったとき、ルディが男の子か女の子か迷ったって」
「ぐ……。わかった、やっぱりヒゲを生やそう。なるべく猛々しいタイプの……」
「だから、それは駄目だって!」
……こうして、ルディと過ごす最後の時間は終わった。私たちは一度家に戻り、それから、ルディだけが再び中庭の扉から出て行った。もう自分以外誰もいない広い家に、一人取り残される私。たまらない孤独感が空っぽな胸に入り込んでくるが、涙は見せない。
ここで泣かないのは、ただの意地で強がりだが、それは私の中にある確かな『強さ』だ。そう。私の中にあるのは『幼稚な承認欲求』『卑怯さ』『狡猾さ』といった『弱さ』だけじゃない。ただの意地でも、『自分自身の抱える問題と現実に向き合う』と、ルディに宣言したその日に泣かない『強さ』が、間違いなくあるのだ。
ルディがいたのはたった四日のことだった。だけど私は、私に大きな変化をもたらしてくれたこの四日のことを一生忘れないだろう。
そこで、ふと気がついた。ルディがあれだけ『魔界人にとって重要な礼儀』と言っていた『別離の挨拶』を、私にだけしていないことに。確か『これができないものは教養のない無礼者として、人々から後ろ指をさされてしまう』とも言ってたっけ。
私は苦笑して、誰もいないリビングに向かって、ぼそりと言う。
「ルディの無礼者。今度会ったら、後ろ指さしてやるんだから」
我ながら、無理をしておどけているような声だった。
しばらくの間、『別離の挨拶』を忘れていたルディが戻ってこないかと、自分の部屋から夜空を眺めていたが、どんなに夜更かししても、『すまん、そなたにだけ挨拶するのを忘れていた』という懐かしいルディの声が聞こえてくることはなかったので、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
「擁護してくれてありがとう、ルディ。でもやっぱり、幼稚な承認欲求は私の『弱さ』なんだと思う。『私が一番凄い』『広瀬さんよりも凄い』『だから皆で私を褒めて』っていう感情が、絶対に演奏に混ざったはず。もっと無心で演奏していたなら、広瀬さんも、あれほど私を嫌ったりはしなかったと思うんだ」
「そういうのは、伝わるものか?」
「広瀬さんくらい本気で音楽をやってる人なら、絶対にわかるよ。私は、暴力的な演奏で広瀬さんを殴りつけておきながら、勝手に自己嫌悪に陥って、その後は広瀬さんを避けた。二重に最低だよ。……でも、もう逃げない。これからは、真正面から音楽と広瀬さんに向き合う。部活も、明日から参加しようと思ってる」
「そうか。それがこれからの、そなたの戦いなのだな。その覚悟と意思、確かに見届けたぞ。余も覚悟を決めて、余にとっての戦い――ガレスとの決闘に臨まねばな」
「ガレスなんかに負けないでよね。私、ああいう荒っぽくて雄々しい人って苦手。ルディみたいに、柔和で優しい人の方が好きだよ」
言ってから、まるで愛の告白をしたみたいで顔が赤くなるが、ルディはどことなく不満げだった。
「その言い方だと、余が雄々しくないと言っているように聞こえるのだが……」
「雄々しくはないでしょ? 顔立ちだって、可愛い系だし」
「えっ」
「前にも言ったじゃない。最初に会ったとき、ルディが男の子か女の子か迷ったって」
「ぐ……。わかった、やっぱりヒゲを生やそう。なるべく猛々しいタイプの……」
「だから、それは駄目だって!」
……こうして、ルディと過ごす最後の時間は終わった。私たちは一度家に戻り、それから、ルディだけが再び中庭の扉から出て行った。もう自分以外誰もいない広い家に、一人取り残される私。たまらない孤独感が空っぽな胸に入り込んでくるが、涙は見せない。
ここで泣かないのは、ただの意地で強がりだが、それは私の中にある確かな『強さ』だ。そう。私の中にあるのは『幼稚な承認欲求』『卑怯さ』『狡猾さ』といった『弱さ』だけじゃない。ただの意地でも、『自分自身の抱える問題と現実に向き合う』と、ルディに宣言したその日に泣かない『強さ』が、間違いなくあるのだ。
ルディがいたのはたった四日のことだった。だけど私は、私に大きな変化をもたらしてくれたこの四日のことを一生忘れないだろう。
そこで、ふと気がついた。ルディがあれだけ『魔界人にとって重要な礼儀』と言っていた『別離の挨拶』を、私にだけしていないことに。確か『これができないものは教養のない無礼者として、人々から後ろ指をさされてしまう』とも言ってたっけ。
私は苦笑して、誰もいないリビングに向かって、ぼそりと言う。
「ルディの無礼者。今度会ったら、後ろ指さしてやるんだから」
我ながら、無理をしておどけているような声だった。
しばらくの間、『別離の挨拶』を忘れていたルディが戻ってこないかと、自分の部屋から夜空を眺めていたが、どんなに夜更かししても、『すまん、そなたにだけ挨拶するのを忘れていた』という懐かしいルディの声が聞こえてくることはなかったので、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
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◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
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