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第47話
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「良いもの?」
「余の手を握ってくれ」
「こう?」
ルディの手を取った瞬間、不思議な力が私の体を包み込み、ルディと同じように、私の体が床から浮かび上がった。驚く間もなく、ルディに手を引かれ、私たちは開いていた中庭の扉から外に出て、天高く舞い上がっていく。
どんどん高度が上がっていくのに、不思議と恐怖心はない。それはきっと、ルディのことを心から信用しているから。そんな私を見て、ルディは微笑んだ。
「やはり、そなたは気が強いな。少しでも怖がるそぶりを見せたらやめるつもりだったが。初めての『浮遊魔法』で、この高さまで上がって平然としているとは、大した度胸だ」
「度胸っていうか、高すぎて、現実感がなくて、怖いかどうかが分からなくなってるだけかも。でも、本当に高いね……。街の明かりがあんなに小さくなって、いっぱいで、地面にちりばめられた宝石みたい……」
この光景が、ルディの見せたかった『良いもの』なのだろう。本当に素晴らしくて、私はうっとりとしてしまう。そんな私の顔を見て、ルディは意外そうに言う。
「ロマンチストな少女のようなことを言うのだな」
心底意外だと言いたげなその言葉に、私はちょっとだけムッとする。
「私がロマンチストな少女だったらおかしい? いつもはぐちぐちと理屈っぽいから、こんなことを言うなんて思わなかった?」
「すまん、失言だったな。怒らないでくれ、これで最後だというのに、いがみ合って別れたくない」
「ふふっ、怒ってなんかいないよ。ちょっとからかっただけ」
「この高さで人をからかう余裕があるとは。やはりそなたは強いよ」
それから私たちは、しばらく無言で、地上の星空のような街の明かりを眺めていた。……十分ほどそうしていただろうか、あるいは、まだただの一分も経っていないだろうか、周囲に時の流れを感じさせる人や物がないので、時間の感覚が曖昧になり、無限にも等しい時を私とルディだけで共有している気持ちにすらなる。
その『無限にも等しい時』を打ち破るように、私は尋ねた。
「ねえ」
「うん?」
「魔界に戻ったら、もう会えないかな」
「……どうかな。前にも言ったが、魔界と人間界は時間の感覚が違う。それゆえ、魔界に行き、ガレスとの決闘を終えた余が、急いでそなたに会いに人間界に戻ったとしても、時間感覚のズレで、次に会うのは数十年後ということもある。場合によっては、時間そのものが行き違い、二度と会えぬこともあり得るだろう」
「そっか……」
絶望的な話だったが、私は意外にも落ち着いていた。心のどこかで、それを覚悟していたからだろう。だから、みっともなく泣きわめいたりはしなった。さっきのルディの言葉ではないが、これで最後だというのに、泣き顔で別れたくなかったから。
「加奈よ。短い間だったか、そなたからは多くのことを学んだ。弱く、情けない余の中にも、確かな『強さ』があるのを知ることができたのはそなたのおかげだ。余に悩みを打ち明けてくれたそなたの正直さと強さが、余を変えてくれたのだ。心より感謝する」
ほんの少しの偽りもないルディの言葉を受け、『本当の私』について告白するのは今しかないと決断し、私は静かに、淡々と言葉を紡いでいく。
「私、ルディが思ってるほど正直でも強くもないし、いい子でもないよ。……だって私、ルディには悩みの『都合のいい部分だけ』を打ち明けて、広瀬さんを悪者にして、自分の嫌な部分については話さなかったんだから」
「余の手を握ってくれ」
「こう?」
ルディの手を取った瞬間、不思議な力が私の体を包み込み、ルディと同じように、私の体が床から浮かび上がった。驚く間もなく、ルディに手を引かれ、私たちは開いていた中庭の扉から外に出て、天高く舞い上がっていく。
どんどん高度が上がっていくのに、不思議と恐怖心はない。それはきっと、ルディのことを心から信用しているから。そんな私を見て、ルディは微笑んだ。
「やはり、そなたは気が強いな。少しでも怖がるそぶりを見せたらやめるつもりだったが。初めての『浮遊魔法』で、この高さまで上がって平然としているとは、大した度胸だ」
「度胸っていうか、高すぎて、現実感がなくて、怖いかどうかが分からなくなってるだけかも。でも、本当に高いね……。街の明かりがあんなに小さくなって、いっぱいで、地面にちりばめられた宝石みたい……」
この光景が、ルディの見せたかった『良いもの』なのだろう。本当に素晴らしくて、私はうっとりとしてしまう。そんな私の顔を見て、ルディは意外そうに言う。
「ロマンチストな少女のようなことを言うのだな」
心底意外だと言いたげなその言葉に、私はちょっとだけムッとする。
「私がロマンチストな少女だったらおかしい? いつもはぐちぐちと理屈っぽいから、こんなことを言うなんて思わなかった?」
「すまん、失言だったな。怒らないでくれ、これで最後だというのに、いがみ合って別れたくない」
「ふふっ、怒ってなんかいないよ。ちょっとからかっただけ」
「この高さで人をからかう余裕があるとは。やはりそなたは強いよ」
それから私たちは、しばらく無言で、地上の星空のような街の明かりを眺めていた。……十分ほどそうしていただろうか、あるいは、まだただの一分も経っていないだろうか、周囲に時の流れを感じさせる人や物がないので、時間の感覚が曖昧になり、無限にも等しい時を私とルディだけで共有している気持ちにすらなる。
その『無限にも等しい時』を打ち破るように、私は尋ねた。
「ねえ」
「うん?」
「魔界に戻ったら、もう会えないかな」
「……どうかな。前にも言ったが、魔界と人間界は時間の感覚が違う。それゆえ、魔界に行き、ガレスとの決闘を終えた余が、急いでそなたに会いに人間界に戻ったとしても、時間感覚のズレで、次に会うのは数十年後ということもある。場合によっては、時間そのものが行き違い、二度と会えぬこともあり得るだろう」
「そっか……」
絶望的な話だったが、私は意外にも落ち着いていた。心のどこかで、それを覚悟していたからだろう。だから、みっともなく泣きわめいたりはしなった。さっきのルディの言葉ではないが、これで最後だというのに、泣き顔で別れたくなかったから。
「加奈よ。短い間だったか、そなたからは多くのことを学んだ。弱く、情けない余の中にも、確かな『強さ』があるのを知ることができたのはそなたのおかげだ。余に悩みを打ち明けてくれたそなたの正直さと強さが、余を変えてくれたのだ。心より感謝する」
ほんの少しの偽りもないルディの言葉を受け、『本当の私』について告白するのは今しかないと決断し、私は静かに、淡々と言葉を紡いでいく。
「私、ルディが思ってるほど正直でも強くもないし、いい子でもないよ。……だって私、ルディには悩みの『都合のいい部分だけ』を打ち明けて、広瀬さんを悪者にして、自分の嫌な部分については話さなかったんだから」
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