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第46話
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「行きたくても無理だ。『ひこうき』とやらには一度乗って見たかったのだが、以前『くうこう』に行って受付の人間に聞いたところ、『保護者の同意』がどうとか、『ぱすぽーと』がどうとか、やたらと面倒なことをいくつも確認され、挙句の果てには家出少年と勘違いされ、強引に保護されそうになり逃げた。正直つらい思い出だ」
しっちゃかめっちゃかな空港の状況が簡単に想像でき、思わず笑ってしまう。しかし、飛行機でなければ、どうやって遠く離れたイギリスに行くというのか。普通に考えるなら、残された手段は船しかないが、どんな超高速船を使っても、海路では一日でイギリスに到着することは不可能だろう。
そこに突然、軽快なドラムの音が鳴り響く。これはお母さんのスマホの着信音だ。それまでリラックスしていたお母さんだが、急に凛々しい顔でスマホの向こうにいる人と難しい話をし、3分ほどで通話を終えると、『急ぎの仕事が入った』的なことを言い、改めてルディに別れの言葉を伝えてから、大急ぎで家を飛び出していった。
その風のごとき俊敏さに、ルディは感心した様子で言う。
「なんという素早い判断と行動だ。それにしても、人間界で生きる者は、家でくつろいでいても突然『すまほ』で呼び出されるゆえ、気が休まる時がないな」
「人間界で生きる者っていうか、現代人の宿命だね。それよりも、飛行機がダメならどうやってイギリスまで行くの?」
「どうもこうも、普通に飛んでいくだけだ。こうやってな」
事も無げにそう言うと、ルディは自分自身の足元を指さした。私は「あっ」と小さな驚きの声を漏らす。ルディの足が、床から5cmほど浮いていたからだ。
「ルディって、空が飛べるんだ。まあ、よく考えたら、魔法が使えるんだから、空くらい飛べても別に不思議じゃないか。でも、イギリスまで飛んでいくとなったら、相当な長旅だよね。到着まで何時間くらいかかりそう?」
「休憩なしで飛び続ければ、約8時間というところだな」
「すごっ……飛行機より速いんだ。でも、8時間で到着するなら……いや、ごめん、なんでもない」
「なんだ? 言いかけたことを途中でやめるでない。気になる」
「いや、その……」
私が言いかけて飲み込んだのは『8時間で到着するなら、こんなに早く出ていかなくても、明日の朝に出発すればいいんじゃない?』という未練がましい言葉だ。正直な気持ちを言えば、ギリギリまでルディと一緒にいたいけど、ルディの出発の決意を邪魔することは、やっぱりしたくなかった。
しかし、言いよどむ私の姿から、なんとなく私の言おうとしていたことを悟ったのだろう。ルディは困ったような笑みを浮かべ、優しく私に言い聞かせる。
「すまんな、急な出発で。だが、夜のうちに移動すると、目立たなくていいんだ。明るい時間だと、姿を隠しながら飛ぶことになるゆえ、倍は時間がかかる。朝に言っただろう? 『今から出発しても、今日じゅうにイギリスに到着することは難しい』と。あれはそういうことだ。いやぁ、各国の軍隊等に捕捉されると、色々厄介でな」
「うん……。ごめんね、なんか、旅立ちに水を差すようなことを言いかけて」
ルディは首を左右に振る。
「そなたが余との別れを惜しんでくれることは、素直に嬉しい。余も、そなたと別れるのは寂しいよ。……そうだ。明るい時刻に出発を延ばすことはできぬが、まだ多少は時間に余裕がある。せっかくだ、良いものを見せてやろう」
しっちゃかめっちゃかな空港の状況が簡単に想像でき、思わず笑ってしまう。しかし、飛行機でなければ、どうやって遠く離れたイギリスに行くというのか。普通に考えるなら、残された手段は船しかないが、どんな超高速船を使っても、海路では一日でイギリスに到着することは不可能だろう。
そこに突然、軽快なドラムの音が鳴り響く。これはお母さんのスマホの着信音だ。それまでリラックスしていたお母さんだが、急に凛々しい顔でスマホの向こうにいる人と難しい話をし、3分ほどで通話を終えると、『急ぎの仕事が入った』的なことを言い、改めてルディに別れの言葉を伝えてから、大急ぎで家を飛び出していった。
その風のごとき俊敏さに、ルディは感心した様子で言う。
「なんという素早い判断と行動だ。それにしても、人間界で生きる者は、家でくつろいでいても突然『すまほ』で呼び出されるゆえ、気が休まる時がないな」
「人間界で生きる者っていうか、現代人の宿命だね。それよりも、飛行機がダメならどうやってイギリスまで行くの?」
「どうもこうも、普通に飛んでいくだけだ。こうやってな」
事も無げにそう言うと、ルディは自分自身の足元を指さした。私は「あっ」と小さな驚きの声を漏らす。ルディの足が、床から5cmほど浮いていたからだ。
「ルディって、空が飛べるんだ。まあ、よく考えたら、魔法が使えるんだから、空くらい飛べても別に不思議じゃないか。でも、イギリスまで飛んでいくとなったら、相当な長旅だよね。到着まで何時間くらいかかりそう?」
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「すごっ……飛行機より速いんだ。でも、8時間で到着するなら……いや、ごめん、なんでもない」
「なんだ? 言いかけたことを途中でやめるでない。気になる」
「いや、その……」
私が言いかけて飲み込んだのは『8時間で到着するなら、こんなに早く出ていかなくても、明日の朝に出発すればいいんじゃない?』という未練がましい言葉だ。正直な気持ちを言えば、ギリギリまでルディと一緒にいたいけど、ルディの出発の決意を邪魔することは、やっぱりしたくなかった。
しかし、言いよどむ私の姿から、なんとなく私の言おうとしていたことを悟ったのだろう。ルディは困ったような笑みを浮かべ、優しく私に言い聞かせる。
「すまんな、急な出発で。だが、夜のうちに移動すると、目立たなくていいんだ。明るい時間だと、姿を隠しながら飛ぶことになるゆえ、倍は時間がかかる。朝に言っただろう? 『今から出発しても、今日じゅうにイギリスに到着することは難しい』と。あれはそういうことだ。いやぁ、各国の軍隊等に捕捉されると、色々厄介でな」
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ルディは首を左右に振る。
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