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第45話
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それにしても、ルディと出会ってから、これまで少しも動かなかった私の運命の車輪が、ジェットエンジンでもつけられたかのように猛然と回転していくのを感じる。でも、ものごとが大きく変わる時って、案外こういうものなのかもしれない。
ならば運命の変化に合わせて、私自身も成長したい。状況が目まぐるしく動くときは、自分自身を変えるために動きだすチャンスでもあるんだと、なんとなく思う。
そう思えば思うほど、私自身の最奥にある『弱さ』から、これ以上逃げるわけにはいかないとも思う。明日でルディとはお別れで、次に運命の車輪が動くのは、いつになるかわかったものじゃないから。何より、昨日までより少しでも強い自分で、ルディときちんとしたお別れがしたいから……。
・
・
・
そして、ルディにとっての最後の学校が終わり、私たちは帰宅する。家につくと、ルディは少ない荷物をまとめ、お父さんのいるイギリスへ向かう準備を始めた。もう説明は不要かもしれないが、お父さんに直接会って、ルディたち魔界人にとって重要な『別離の挨拶』をするためである。
イギリスは遠い。行ったことがないので詳しいことは分からないが、飛行機で片道14時間以上かかると聞いたことがある。
えっと、空港に移動する時間も計算に入れて、イギリスに到着してからお父さんのいるところに向かう時間も考えると、今日中に出発したほうがいいかもしれない(魔界に戻るための時間も考慮しなきゃだし……)。あっ、でも、よく考えたら、イギリス行きの飛行機って、こんな夕方から飛ぶのかな?
今日は仕事が早く終わり、早く家に帰って来ていたお母さんに対し、丁寧に『別離の挨拶』をしているルディを見ながら、一人でああでもないこうでもないと考えを巡らせる私。そうだ、お金。イギリスに行くとなれば、かなりの飛行機料金が必要なんじゃないだろうか?
いや、でもまあ、そこは魔界の王子様なわけだし、お金のことは心配しなく……
「加奈。何かを真剣に考えているところ悪いが、聞いてくれ」
「わぁっ!?」
いつの間にかこっちに来ていたルディに突然声をかけられ、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。そんな私の反応に、ルディもビックリして「んぉっ!?」と変な声を出したが、すぐに咳払いして、真剣な顔で言う。
「えーっと、ゴホン。加奈よ。今日は美咲が早く帰って来てくれたので、余の想定より遥かに早く『別離の挨拶』を終わらせることができた。それゆえ、あわただしくてすまぬが、今から出発することにする」
今から出発――
本当に、あわただしくて、急な話だった。
ついさっき、自分で『今日中に出発したほうがいいかもしれない』とは考えたが、それでもやっぱり、心の底ではルディとのお別れは明日だと思っていたので、急なことに心がざわめく。だけど、ルディが決めたことを邪魔するつもりはなかった。私は頷き、なるべく寂しさは見せず、いつも通りの笑顔で言う。
「うん。それじゃ、まずは空港に行かなきゃね。どうする? お母さんに車出してもらう?」
「くうこう?」
「そう、空港。飛行機の」
「『ひこうき』の『くうこう』……ああ、『えあぽーと』のことか。この国では『くうこう』というのだったな。そなたがいきなり予想外のことを言い出したから、理解が遅れてしまった」
「予想外って、私、そんなに意外なこと言ったかな。だってルディ、イギリスには飛行機で行くんでしょ?」
ごく当たり前な私の問いに、ルディは首を左右に振った。
ならば運命の変化に合わせて、私自身も成長したい。状況が目まぐるしく動くときは、自分自身を変えるために動きだすチャンスでもあるんだと、なんとなく思う。
そう思えば思うほど、私自身の最奥にある『弱さ』から、これ以上逃げるわけにはいかないとも思う。明日でルディとはお別れで、次に運命の車輪が動くのは、いつになるかわかったものじゃないから。何より、昨日までより少しでも強い自分で、ルディときちんとしたお別れがしたいから……。
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そして、ルディにとっての最後の学校が終わり、私たちは帰宅する。家につくと、ルディは少ない荷物をまとめ、お父さんのいるイギリスへ向かう準備を始めた。もう説明は不要かもしれないが、お父さんに直接会って、ルディたち魔界人にとって重要な『別離の挨拶』をするためである。
イギリスは遠い。行ったことがないので詳しいことは分からないが、飛行機で片道14時間以上かかると聞いたことがある。
えっと、空港に移動する時間も計算に入れて、イギリスに到着してからお父さんのいるところに向かう時間も考えると、今日中に出発したほうがいいかもしれない(魔界に戻るための時間も考慮しなきゃだし……)。あっ、でも、よく考えたら、イギリス行きの飛行機って、こんな夕方から飛ぶのかな?
今日は仕事が早く終わり、早く家に帰って来ていたお母さんに対し、丁寧に『別離の挨拶』をしているルディを見ながら、一人でああでもないこうでもないと考えを巡らせる私。そうだ、お金。イギリスに行くとなれば、かなりの飛行機料金が必要なんじゃないだろうか?
いや、でもまあ、そこは魔界の王子様なわけだし、お金のことは心配しなく……
「加奈。何かを真剣に考えているところ悪いが、聞いてくれ」
「わぁっ!?」
いつの間にかこっちに来ていたルディに突然声をかけられ、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。そんな私の反応に、ルディもビックリして「んぉっ!?」と変な声を出したが、すぐに咳払いして、真剣な顔で言う。
「えーっと、ゴホン。加奈よ。今日は美咲が早く帰って来てくれたので、余の想定より遥かに早く『別離の挨拶』を終わらせることができた。それゆえ、あわただしくてすまぬが、今から出発することにする」
今から出発――
本当に、あわただしくて、急な話だった。
ついさっき、自分で『今日中に出発したほうがいいかもしれない』とは考えたが、それでもやっぱり、心の底ではルディとのお別れは明日だと思っていたので、急なことに心がざわめく。だけど、ルディが決めたことを邪魔するつもりはなかった。私は頷き、なるべく寂しさは見せず、いつも通りの笑顔で言う。
「うん。それじゃ、まずは空港に行かなきゃね。どうする? お母さんに車出してもらう?」
「くうこう?」
「そう、空港。飛行機の」
「『ひこうき』の『くうこう』……ああ、『えあぽーと』のことか。この国では『くうこう』というのだったな。そなたがいきなり予想外のことを言い出したから、理解が遅れてしまった」
「予想外って、私、そんなに意外なこと言ったかな。だってルディ、イギリスには飛行機で行くんでしょ?」
ごく当たり前な私の問いに、ルディは首を左右に振った。
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