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第38話
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私はルディが心配になって、その青い瞳をじっと見つめた。……しかし意外にも、ルディは優しげなまなざしで勝木くんを眺めているだけだった。ルディの顔には、怒りも悲しみも寂しさもない。その静かなる表情を軽蔑と解釈したのか、ガレスは勝ち誇ったように言う。
「ルディ・クーランドよ。そう軽蔑してやるな。大した能力のない弱者の思考など、この程度のものだ。もっとも、貴様も弱者だから、同じ弱者に共感でもしているのか?」
ルディは視線をガレスに戻し、心を乱すことなく語り掛ける。
「勝木は弱者などではないよ」
「なに?」
「内心では余に対する憤りや不快感を覚えていながらも、『裏心の術』さえ使われなければ、最後までその気持ちを胸に秘め、表に出すことはなかったのだ。それは勝木の心の『強さ』だと余は思う」
「…………」
「誰しも、自分にとって不快なことが起こったとき、心の中で"言わぬ方が良いこと"を考えてしまうものだ。なのに、その"言わぬ方が良いこと"を喚き散らさず、そっと胸にしまっていた勝木は立派だよ」
ガレスにはルディの言っていることが理解できないのか、「ふん」と大きく鼻で笑い。大げさに肩をすくめた
「やはり弱者の考えはわからんな。俺には到底理解しがたい。……おや? くくく、稲葉加奈よ。今度はそっちの女が、お前に何か言いたいことがあるようだぞ。ほら、後ろだ、後ろ」
「えっ?」
今の今までルディと勝木君の方に集中していたので、私に背後から誰かが近づいてきているなんて、気づきもしなかった。くるりと振り返ると、そこには、いつもの明るい表情からは想像もできないほど憂鬱な顔をした千佳ちゃんがいた。
「千佳ちゃん……」
「その女は、貴様のなんだ?」
「大事な友達だよ」
「ほう、千佳とやら、貴様もそう思っているのか?」
ガレスの問いに、千佳ちゃんはボソリと答える。
「別に……」
別に?
別にって、どういうこと?
あいまいな回答が、逆にガレスの興味を引いたのか、ガレスは千佳ちゃんを指さして、小さな光線を発した。それを見ていたルディが慌てて問う。
「おい! 何をした!?」
「やかましい、喚くな。少しこの女に興味がわいたので、心の声を引き出しやすくしただけだ。……おい、千佳。『別に』とはどういうことだ? この稲葉加奈は、お前にとって友ではないのか?」
私は思わず、ゴクリと唾を飲んだ。ガレスがした質問の答えを聞くのが怖い気がしたが、それでも耳をふさぐことはできなかった。千佳ちゃんは、右に左に視線をさまよわせ、またしてもボソリと言う。
「どうかな……。少なくとも……本当の友達じゃ……ないと思う……」
衝撃的な言葉に、私は両手で千佳ちゃんの肩を掴み、問いかけていた。
「本当の友達じゃないって、どういうこと? ならどうして、いつも私と一緒にいてくれたの? どうして私に笑いかけて、そして、話しかけてくれたの?」
私が肩を掴んだ勢いが少し強かったのか、千佳ちゃんは一度後ろにガクンとのけぞり、また前かがみに戻って、俯きながらボソボソと言葉を紡いでいく。
「それが一番……楽だったから……」
「楽?」
「私……本当は……人とかかわるの……好きじゃない……喋るのも……誰にでも好かれるように振る舞うのも……面倒で……嫌い……自分で自分を馬鹿にして……それで笑いを取るのも……大嫌い……私……いつもいつも……そんなことばっかりやってて……もううんざり……」
ガレスが心底不思議そうな顔をして、割って入って来る。
「おかしな女だ。それほど嫌いなことを、なぜ自分からやる?」
「ルディ・クーランドよ。そう軽蔑してやるな。大した能力のない弱者の思考など、この程度のものだ。もっとも、貴様も弱者だから、同じ弱者に共感でもしているのか?」
ルディは視線をガレスに戻し、心を乱すことなく語り掛ける。
「勝木は弱者などではないよ」
「なに?」
「内心では余に対する憤りや不快感を覚えていながらも、『裏心の術』さえ使われなければ、最後までその気持ちを胸に秘め、表に出すことはなかったのだ。それは勝木の心の『強さ』だと余は思う」
「…………」
「誰しも、自分にとって不快なことが起こったとき、心の中で"言わぬ方が良いこと"を考えてしまうものだ。なのに、その"言わぬ方が良いこと"を喚き散らさず、そっと胸にしまっていた勝木は立派だよ」
ガレスにはルディの言っていることが理解できないのか、「ふん」と大きく鼻で笑い。大げさに肩をすくめた
「やはり弱者の考えはわからんな。俺には到底理解しがたい。……おや? くくく、稲葉加奈よ。今度はそっちの女が、お前に何か言いたいことがあるようだぞ。ほら、後ろだ、後ろ」
「えっ?」
今の今までルディと勝木君の方に集中していたので、私に背後から誰かが近づいてきているなんて、気づきもしなかった。くるりと振り返ると、そこには、いつもの明るい表情からは想像もできないほど憂鬱な顔をした千佳ちゃんがいた。
「千佳ちゃん……」
「その女は、貴様のなんだ?」
「大事な友達だよ」
「ほう、千佳とやら、貴様もそう思っているのか?」
ガレスの問いに、千佳ちゃんはボソリと答える。
「別に……」
別に?
別にって、どういうこと?
あいまいな回答が、逆にガレスの興味を引いたのか、ガレスは千佳ちゃんを指さして、小さな光線を発した。それを見ていたルディが慌てて問う。
「おい! 何をした!?」
「やかましい、喚くな。少しこの女に興味がわいたので、心の声を引き出しやすくしただけだ。……おい、千佳。『別に』とはどういうことだ? この稲葉加奈は、お前にとって友ではないのか?」
私は思わず、ゴクリと唾を飲んだ。ガレスがした質問の答えを聞くのが怖い気がしたが、それでも耳をふさぐことはできなかった。千佳ちゃんは、右に左に視線をさまよわせ、またしてもボソリと言う。
「どうかな……。少なくとも……本当の友達じゃ……ないと思う……」
衝撃的な言葉に、私は両手で千佳ちゃんの肩を掴み、問いかけていた。
「本当の友達じゃないって、どういうこと? ならどうして、いつも私と一緒にいてくれたの? どうして私に笑いかけて、そして、話しかけてくれたの?」
私が肩を掴んだ勢いが少し強かったのか、千佳ちゃんは一度後ろにガクンとのけぞり、また前かがみに戻って、俯きながらボソボソと言葉を紡いでいく。
「それが一番……楽だったから……」
「楽?」
「私……本当は……人とかかわるの……好きじゃない……喋るのも……誰にでも好かれるように振る舞うのも……面倒で……嫌い……自分で自分を馬鹿にして……それで笑いを取るのも……大嫌い……私……いつもいつも……そんなことばっかりやってて……もううんざり……」
ガレスが心底不思議そうな顔をして、割って入って来る。
「おかしな女だ。それほど嫌いなことを、なぜ自分からやる?」
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◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
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