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第35話
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「えっ? それじゃルディくん、マカイに帰っちゃうの? 凄い急じゃん」
学校に到着し、美虎ちゃんと桂ちゃんにルディが魔界に帰ることを話すと、その話し声が聞こえた他の生徒たちも集まって来て、『なんで?』『どうして?』と質問攻めにあってしまった。ルディ本人は、体験入学を終了する手続きのため、職員室に行っている。
あれこれと質問に答えていると、ルディがいなくなるという現実を強く思い知らされ、しみじみと寂しさを感じてしまう。でも、クラスの皆もルディとの別れを惜しんでくれているようで、そこは純粋に嬉しかった。
この前、ルディに桁違いのサッカープレイを見せつけられ、意気消沈していた勝木くんも、「あいつともっとサッカーしたかったのにな」と言ってくれてホッとする。
ふと、教室の隅からこっちを見ている千佳ちゃんの姿に気がつく。千佳ちゃんは私と目が合うと、いつものようにニコッと笑ってくれたが、こちらに来るようなことはなかった。
……なんだか、もう随分と千佳ちゃんと話してない気がする。といっても、せいぜい2日か3日のことだし、今の反応を見るに、別に私に対して怒っているわけでもなさそうだから、心配する必要はないだろう。
そもそも、千佳ちゃんは私以外にも友達がたくさんいるし、千佳ちゃんと話したがっている人はいくらでもいる。それなのに、今まではクラスで孤立している私にわざわざ構ってくれていたのだ。
千佳ちゃんは、私が美虎ちゃんや桂ちゃんと仲良くなったことで、もうあまり私の面倒を見なくていいと判断したのかもしれない。それはそれで、ちょっと寂しいが、千佳ちゃんに余計な迷惑をかけずに済むと思えば、悪いことじゃない……のかな? でもやっぱり、千佳ちゃんの態度が少し気になるので、後で話しかけてみよう。
そして、朝の自由時間が終わり、ホームルームが始まって、担任の佐川先生がルディを伴って教室に入って来る。それから、ルディは皆に正式に別れの挨拶をした。あまり湿っぽくはならず、皆、明るい様子でルディに『向こうでも元気でな』『短い間だけど一緒にいられて良かったよ』と、はなむけの言葉を送っていた。
その時、異様な気配を感じて、皆の視線が教室の窓ガラスに集中する。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
そこには、あのガレスがいたからだ。両腕を胸の前で組み、つまらないものでも見るような目で、教室を見回している。ガレスの年恰好は、私やルディと同じく中学一年生程度なので、私たちのクラスにいてもそれほど異常ではないが、当然制服などは着ていないから、やはり違和感は強い。
普段はマイペースな佐川先生が、部外者の乱入にやや表情を硬くし、問いかける。
「お、おい。お前、どこの生徒だ? 私服で教室に……」
「黙っていろ。俺が喋っていいと許可するまで、誰も口を開くな。勝手に動くことも許さん」
次の瞬間、ガレスの体から紫色の閃光がほとばしる。それで、佐川先生はピシャリと黙ってしまった。いや、黙っただけじゃない。気をつけの姿勢で直立不動。視線すらも動かさず、まるで『勝手に動くことも許さん』と言ったガレスの命令を、忠実に守っているかのようだった。
こんなに奇妙なことが起こっているのに、誰も騒がない。私はぐるりと教室内を見渡し、愕然とした。クラスの皆もいつの間にか佐川先生のように立ち上がり、気をつけの姿勢を取っていたからだ。その唇は固く閉じられ、ピクリとも動かない。
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「えっ? それじゃルディくん、マカイに帰っちゃうの? 凄い急じゃん」
学校に到着し、美虎ちゃんと桂ちゃんにルディが魔界に帰ることを話すと、その話し声が聞こえた他の生徒たちも集まって来て、『なんで?』『どうして?』と質問攻めにあってしまった。ルディ本人は、体験入学を終了する手続きのため、職員室に行っている。
あれこれと質問に答えていると、ルディがいなくなるという現実を強く思い知らされ、しみじみと寂しさを感じてしまう。でも、クラスの皆もルディとの別れを惜しんでくれているようで、そこは純粋に嬉しかった。
この前、ルディに桁違いのサッカープレイを見せつけられ、意気消沈していた勝木くんも、「あいつともっとサッカーしたかったのにな」と言ってくれてホッとする。
ふと、教室の隅からこっちを見ている千佳ちゃんの姿に気がつく。千佳ちゃんは私と目が合うと、いつものようにニコッと笑ってくれたが、こちらに来るようなことはなかった。
……なんだか、もう随分と千佳ちゃんと話してない気がする。といっても、せいぜい2日か3日のことだし、今の反応を見るに、別に私に対して怒っているわけでもなさそうだから、心配する必要はないだろう。
そもそも、千佳ちゃんは私以外にも友達がたくさんいるし、千佳ちゃんと話したがっている人はいくらでもいる。それなのに、今まではクラスで孤立している私にわざわざ構ってくれていたのだ。
千佳ちゃんは、私が美虎ちゃんや桂ちゃんと仲良くなったことで、もうあまり私の面倒を見なくていいと判断したのかもしれない。それはそれで、ちょっと寂しいが、千佳ちゃんに余計な迷惑をかけずに済むと思えば、悪いことじゃない……のかな? でもやっぱり、千佳ちゃんの態度が少し気になるので、後で話しかけてみよう。
そして、朝の自由時間が終わり、ホームルームが始まって、担任の佐川先生がルディを伴って教室に入って来る。それから、ルディは皆に正式に別れの挨拶をした。あまり湿っぽくはならず、皆、明るい様子でルディに『向こうでも元気でな』『短い間だけど一緒にいられて良かったよ』と、はなむけの言葉を送っていた。
その時、異様な気配を感じて、皆の視線が教室の窓ガラスに集中する。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
そこには、あのガレスがいたからだ。両腕を胸の前で組み、つまらないものでも見るような目で、教室を見回している。ガレスの年恰好は、私やルディと同じく中学一年生程度なので、私たちのクラスにいてもそれほど異常ではないが、当然制服などは着ていないから、やはり違和感は強い。
普段はマイペースな佐川先生が、部外者の乱入にやや表情を硬くし、問いかける。
「お、おい。お前、どこの生徒だ? 私服で教室に……」
「黙っていろ。俺が喋っていいと許可するまで、誰も口を開くな。勝手に動くことも許さん」
次の瞬間、ガレスの体から紫色の閃光がほとばしる。それで、佐川先生はピシャリと黙ってしまった。いや、黙っただけじゃない。気をつけの姿勢で直立不動。視線すらも動かさず、まるで『勝手に動くことも許さん』と言ったガレスの命令を、忠実に守っているかのようだった。
こんなに奇妙なことが起こっているのに、誰も騒がない。私はぐるりと教室内を見渡し、愕然とした。クラスの皆もいつの間にか佐川先生のように立ち上がり、気をつけの姿勢を取っていたからだ。その唇は固く閉じられ、ピクリとも動かない。
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