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第26話
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「えっ? あー、うん……。練習自体は家でやるよ。少しだけブランクがあるから、みんなの演奏と合わせるには、もうちょっとだけ練習しないと」
我ながら、上手な言いわけだった。実際は、私に"皆と音楽をやる資格"があるのかどうか、まだ悩んでいるのだが、それを打ち明けると、私という人間の本質をルディに話さなければならない。……それは、嫌だった。
私のもっともらしい説明を受け、ルディは納得したように頷く。
「そなたの技量なら心配無用だと思うがな。まあ、余は所詮素人だからな。そなたがそう言うならそうなのだろう。それにしても今朝、広瀬に毅然と意見を述べたそなたの姿は、なかなかに勇壮だったぞ」
「勇壮って、そんな……。普通に言うべきことを、普通に言えただけだよ」
「その普通を押し通すことが案外難しいのだ。言うべきことを普通に言えるのは強さの証。美虎と桂が、これまで一度も話したことのないそなたに好意を抱いたのも不思議ではない。人は皆、強い者に惹かれるからな」
「私、強くなんかないよ。ルディと出会わなかったら、今もきっと、まともに広瀬さんの目も見れないままだっただろうし」
「いや、余はただのきっかけにすぎん。桂も言っていたが、そなたは思いもよらぬことでショックを受け、しばらくの間気落ちしていただけで、もともとは気が強いのだろう」
……そうかもしれない。でも、その『気の強さ』は、考えようによっては『我の強さ』と言い換えることもできる。『我が強い』って、いいことなんだろうか? 私には、必ずしもそうとは思えなかった。
そんなことを思う私の内心をよそに、ルディは語り続ける。
「うらやましいぞ。余はこう見えて、あまり気の強い方ではないからな。……と言うより、恥を忍んでハッキリ述べるなら、魔界の王族とは思えぬほどの小心者だからな」
それは、意外な言葉だった。最初は冗談を言っているのかと思ったが、ルディの表情は真面目で、本当に自分を恥じているようだった。私はさっきのルディを真似るように、小さく首をかしげて言う。
「ルディが小心者って、そんなわけないよ。初対面の相手にも堂々としてるし、昨日のサッカーのときとかも、気が小さかったらあんなに派手なプレイはできないと思うけどな」
「余の態度が堂々として見えるのは、幼い頃より王族としての所作を徹底的に教育されておるゆえ、それ以外のふるまいができぬだけだ。内心は、相手からどう思われているのか不安でたまらぬ。そなたに対して偉そうなことをいくつか言ったが、それらは結局、訓練所で教わった受け売りにすぎん」
予想もしていなかったルディの内心の告白に、私はなんて答えていいか分からず、きゅっと口を結んだ。帰り道をゆっくりと歩きながら、ルディは言葉を続ける。
「サッカーで派手なプレイをしたのは、それで不快な思いをする者がいるということを、考えもしなかったからだ。……にぶい余でも、今日はハッキリわかったぞ。何人かの生徒が、目立ちすぎる余に対し、面白くないと思っていることが。だから、今日の『やきゅう』では、かなり力を抑えることにしたのだ。気づいていたか?」
「……うん。途中から、明らかにボールのスピードが落ちてたから」
我ながら、上手な言いわけだった。実際は、私に"皆と音楽をやる資格"があるのかどうか、まだ悩んでいるのだが、それを打ち明けると、私という人間の本質をルディに話さなければならない。……それは、嫌だった。
私のもっともらしい説明を受け、ルディは納得したように頷く。
「そなたの技量なら心配無用だと思うがな。まあ、余は所詮素人だからな。そなたがそう言うならそうなのだろう。それにしても今朝、広瀬に毅然と意見を述べたそなたの姿は、なかなかに勇壮だったぞ」
「勇壮って、そんな……。普通に言うべきことを、普通に言えただけだよ」
「その普通を押し通すことが案外難しいのだ。言うべきことを普通に言えるのは強さの証。美虎と桂が、これまで一度も話したことのないそなたに好意を抱いたのも不思議ではない。人は皆、強い者に惹かれるからな」
「私、強くなんかないよ。ルディと出会わなかったら、今もきっと、まともに広瀬さんの目も見れないままだっただろうし」
「いや、余はただのきっかけにすぎん。桂も言っていたが、そなたは思いもよらぬことでショックを受け、しばらくの間気落ちしていただけで、もともとは気が強いのだろう」
……そうかもしれない。でも、その『気の強さ』は、考えようによっては『我の強さ』と言い換えることもできる。『我が強い』って、いいことなんだろうか? 私には、必ずしもそうとは思えなかった。
そんなことを思う私の内心をよそに、ルディは語り続ける。
「うらやましいぞ。余はこう見えて、あまり気の強い方ではないからな。……と言うより、恥を忍んでハッキリ述べるなら、魔界の王族とは思えぬほどの小心者だからな」
それは、意外な言葉だった。最初は冗談を言っているのかと思ったが、ルディの表情は真面目で、本当に自分を恥じているようだった。私はさっきのルディを真似るように、小さく首をかしげて言う。
「ルディが小心者って、そんなわけないよ。初対面の相手にも堂々としてるし、昨日のサッカーのときとかも、気が小さかったらあんなに派手なプレイはできないと思うけどな」
「余の態度が堂々として見えるのは、幼い頃より王族としての所作を徹底的に教育されておるゆえ、それ以外のふるまいができぬだけだ。内心は、相手からどう思われているのか不安でたまらぬ。そなたに対して偉そうなことをいくつか言ったが、それらは結局、訓練所で教わった受け売りにすぎん」
予想もしていなかったルディの内心の告白に、私はなんて答えていいか分からず、きゅっと口を結んだ。帰り道をゆっくりと歩きながら、ルディは言葉を続ける。
「サッカーで派手なプレイをしたのは、それで不快な思いをする者がいるということを、考えもしなかったからだ。……にぶい余でも、今日はハッキリわかったぞ。何人かの生徒が、目立ちすぎる余に対し、面白くないと思っていることが。だから、今日の『やきゅう』では、かなり力を抑えることにしたのだ。気づいていたか?」
「……うん。途中から、明らかにボールのスピードが落ちてたから」
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◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
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