魔界プリンスとココロのヒミツ【完結】

小平ニコ

文字の大きさ
上 下
16 / 63

第16話

しおりを挟む




 そして、午後の授業も終わり、私はルディと一緒に帰り道を歩いている。ルディの行動にハラハラさせられ、疲れる一日だったと感じる一方、不思議といつもより楽しく、あっという間に時間が過ぎたようにも思える。それはきっと、ルディと話している時間が多かったからだ。

 私はいつも、学校では黙っている時間の方が長い。千佳ちゃんだって、私だけにずっと構ってくれているわけではないから、千佳ちゃんが他の子たちと話しているときは、一人で本を読むか、次の授業の予習をしている。

 ……別に、それほど読書が好きなわけでも、予習復習を完璧にして学年一位の成績を狙っているわけでもなく、この二つの行動をしていると、広瀬さんが声をかけてくることがないので、自然とそうなっただけのことだ。

 広瀬さんは、必ずしも私が嫌だと思うことを言うわけではなかったが、私は徹底して彼女とのコミュニケーションを避けていた。何故かというと……

「いやぁ、今日はなかなか面白かった。人間の訓練所は苦しい鍛錬がなくていいな」

 となりを歩くルディが朗らかな声を発したことで、私の思考はストップする。ルディは、本当に楽しそうだった。そこまで喜んでもらえたなら、急いで体験入学を手配したお母さんも、やったかいがあったと思うことだろう。

 笑顔のルディにつられて、私も笑顔で言う。

「最初はどうなることかと思ったけど、途中から普通にクラスに馴染んでたね。私よりよっぽど上手にみんなと話せてたよ」

「そなたも、余と皆の間に入り、普通に話していたではないか」

「うん。ルディと皆の"間に入ってる"ときだけね。いきなりルディに話しかけていいか迷った子が、私を"つなぎ役"みたいにすれば話しかけやすいから、それで、話す機会が増えただけだよ。私、普段はクラスの子とほとんど喋らないから」

「何故だ? 喋るのが嫌いというわけではないだろう? 余とはこれだけ喋るのだからな。それに、会話が苦手というわけでもないはずだ。そなたの話は理路整然としていてわかりやすく、大人に引けを取らない知性を感じるぞ」

「褒めすぎだよ」

「いやいや、少なくとも『ちゅうがくいちねんせい』の13歳の少女としては、充分に誇ってよいことだ。決して馬鹿にするわけではないが、今日話した子供たちは皆、まだまだ幼い話し方の者が多かったからな」

「馬鹿にするわけではないが、か……」

「どうした?」

「ルディは私の話し方を褒めてくれたけど、聞き取りようによっては、私の話し方って、大人ぶってて、理屈っぽくて、相手のことを馬鹿にしてるっていうか、見下してるように感じるってこと、ない?」

「余はまったくそうは思わぬが……いや、まあ、うーん……感じ方は人それぞれだからな、中にはそういうふうに感じる者も、いないとはいえないかもな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クール天狗の溺愛事情

緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は 中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。 一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。 でも、素敵な出会いが待っていた。 黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。 普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。 *・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・* 「可愛いな……」 *滝柳 風雅* 守りの力を持つカラス天狗 。.:*☆*:.。 「お前今から俺の第一嫁候補な」 *日宮 煉* 最強の火鬼 。.:*☆*:.。 「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」 *山里 那岐* 神の使いの白狐 \\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!// 野いちご様 ベリーズカフェ様 魔法のiらんど様 エブリスタ様 にも掲載しています。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

1000本の薔薇と闇の薬屋

八木愛里
児童書・童話
アルファポリス第1回きずな児童書大賞奨励賞を受賞しました! イーリスは父親の寿命が約一週間と言われ、運命を変えるべく、ちまたで噂の「なんでも願いをかなえる薬」が置いてある薬屋に行くことを決意する。 その薬屋には、意地悪な店長と優しい少年がいた。 父親の薬をもらおうとしたイーリスだったが、「なんでも願いをかなえる薬」を使うと、使った本人、つまりイーリスが死んでしまうという訳ありな薬だった。 訳ありな薬しか並んでいない薬屋、通称「闇の薬屋」。 薬の瓶を割ってしまったことで、少年スレーの秘密を知り、イーリスは店番を手伝うことになってしまう。 児童文学風ダークファンタジー 5万文字程度の中編 【登場人物の紹介】 ・イーリス……13才。ドジでいつも行動が裏目に出る。可憐に見えるが心は強い。B型。 ・シヴァン……16才。通称「闇の薬屋」の店長。手段を選ばず強引なところがある。A型。 ・スレー……見た目は12才くらい。薬屋のお手伝いの少年。柔らかい雰囲気で、どこか大人びている。O型。 ・ロマニオ……17才。甘いマスクでマダムに人気。AB型。 ・フクロウのクーちゃん……無表情が普通の看板マスコット。

拳法家 ウーミンリン

モモンとパパン
児童書・童話
この作品はフィクションです。 中国の誰も寄りつかない洞窟に、拳法家 ウーミンリンは一人 必殺拳の 習得にはげんでいました。 ミンリンには、絶対に倒さなければならない相手がいました。 その名は、ベイチェンホという男でした。 はたして、ミンリンはチェンホを倒すことができたのでしょうか?

ぼくの親友

辛已奈美(かのうみなみ)
児童書・童話
夕日がおちて、空がくらくなりはじめるころ、1ぴきの小さなねずみが、しずかに目をさました。かれの名前はリュウタ。リュウタは、町のかたすみにある、古びたそうこにすんでいた。そんなリュウタは、町で1けんの、古いパンやを見つけた。そこで・・・ 小学2年生までの漢字で作っています。

ヒョイラレ

如月芳美
児童書・童話
中学に入って関東デビューを果たした俺は、急いで帰宅しようとして階段で足を滑らせる。 階段から落下した俺が目を覚ますと、しましまのモフモフになっている! しかも生きて歩いてる『俺』を目の当たりにすることに。 その『俺』はとんでもなく困り果てていて……。 どうやら転生した奴が俺の体を使ってる!?

処理中です...